序章 白少女と変な少年
皆様こんにちは!初投稿の茶トラ猫です!
投稿頻度激遅&ちょっと意味分かんない所がある。等初心者丸出しの文章ですが、アドバイスとか、「あっ!この文章!ゼミで見た事ある奴だ~!」とかありましたら、是非コメントにて言っていただけると嬉しいです!
────遠い昔。
かつて、世界に七匹の龍が存在した。
七匹の龍は、それぞれ七つの大陸を治め、互いに不干渉とし、その地に平穏と安寧を与えてきた。
人間を含めた全種族は、この七匹の龍を崇め、感謝し、慕った。
この穏やかな日々が、永遠に続きますようにと、誰もが思っていた。
しかし、長い間続いた平和は、突然にして終わりを告げる。
大陸内で、領地を広く持っていなかった国が、不満を訴え、領土拡大の為に、隣国を滅ぼした。
一夜明けると、一つ国が滅びた。
二日後には、二つ滅びた。
三日後には、四つ滅びた。
五日後には、八つ滅び、十日後には、国境線が意味を失くした。
国を、失くしたもの達は、戦争を起こした国よりも、この地を治める龍に怒りを表した。
生き延びた者達は、己の命を代償として、刃の欠けた剣に、呪いを掛ける。
何万人の命を賭した呪いを繰り返し、何度も何度も、掛け続ける。
やがて剣は、姿を変え、切り傷を加えた者に、死を与える魔剣となった。
曰く、その剣は人間には、使えない。
曰く、その剣は使用した者の精神を苛む。
曰く、その剣は、力を貸す代償として、使用者の魂を欲する。
犠牲の上に平然と成り立つその剣を、神は忌み嫌った。
───その日、その地を治める龍は、剣をこの地から消し去る為に、大陸ごと全てを滅ぼした。
そして、二度と同じ過ちを犯さないために、争いを起こした国の者達を、地の底に封じ込め、残りの者達を天界に封じた。
━━━━━王国都市ディルーナ━━━━
━昼過ぎ━
「ふわぁ...」
──ここは、六つの大陸の内の一つ、ケルト大陸の北西に位置する王国都市ディルーナ。ディルーナは、かつて、ケルト大陸の中でも最も権力を持っていたファルク家が、自分達の考えを示し、民を導いていきたいとの事で建国した国で、かなり長く古い歴史がある。
そんなディルーナの端っこに、かなり大きな広場があり、そこは、広さはもちろんの事、その発展した都市の中に唯一残る様々な植物や、木々が、美しい情景を生み出す、国の宝と言っても過言じゃない場所だ。家族連れで、この広場を訪れている者もいれば、芝に転がり昼寝をする者もいるこの光景の中に一人、広場の脇に生える木にもたれかかりながら、 何処にでも転がってそうな創作小説を読み、少年は木漏れ日を浴びながら本に没頭する。やがて全てに目を通し退屈を露わにすると、
「どうして人間は、どの物語でも愚かで汚く書かれてんだよ。オークの方がよっぽど汚ぇじゃねぇか。」
作家達に対する偏見混じりの不満を口にする。
本をゴミ箱に捨てて、芝生に仰向けに寝転がる。
紙面ばかりに目を向けて、あまり周りを見ないせいか日の光が、やたらと目を刺激する。じわりとした痛みを感じ、手で日を遮る。どうやら、いつの間にか太陽が昇りきってもう、お昼時になるようだった。
ぽかぽかとした陽気に、不思議と懐かしさを感じる。 天気は、快晴。人通りも今日はそんなに多くない。 絶好の散歩日和のようだ。
「さて、こんな気持ちはさっさと忘れてっと。」おもむろに立ち上がりぐっと、背筋を伸ばす。窮屈感から解放された体が心地良い。
「街の中でも見て回るかな。」
眠気を覚ます為に、水道で顔を洗う。ジャブジャブと容赦なく顔に水を叩きつけキュッと、水道の蛇口を締めた。
そして珍しく人通りの少ない大通りの方に体を向けて、歩き始める。
小腹も空いたし、サンドイッチでも、購入して、ぶらぶら通りを散策しようか。頭の中で、今日の計画を練りながら、いややっぱり、コロッケとかの方がいいかなぁ?と、迷ったりもした。それにしても、通りの入り口を、遠くから見ただけで、色々な種類の店が見えてくる。
クレープの様なスイーツを売っているお店や、声高々と、自慢のケバブを紹介しているお店、そこに一人の通行人が通ると、「コーヒーを飲みながら、この通りを行く人を、のんびり眺めてみてはどうですか!一杯どうぞ!」とか、「この通りに来たら一度は食べてってほしいこのオムライス!ふわっととろっと病みつきになるよ!ささ、中に!」といった宣伝の声がよく響く。さすが客取り戦争と言われるだけの事はある。遠くから見ても迫力満点だ。更に今日は、人が少ない事もあり皆から必死さが伝わって来る。俺は、なんのお店に入ろうかな?と考えていたら、いつの間にかもう入り口はすぐそこになっていた。
少年の足取りが、興奮から軽くなり、もう大通りの中に入る為の距離が、ほんのわずか数歩になったところで、
「あれ?」
衝撃。突然ふわりと体が宙を舞う。唐突な浮遊感に思考が全く追い付かない。続いて激痛が少年を襲う。そこからの叩きつけられる痛みに、体が勢いを殺す為地面を転がる。硬い石畳は、体に多くの擦り傷を作り、そこにあった小さな石でさえ勢いが加わると容赦なく身を切る刃となる。服が破れ皮膚が剥げ、肉から血が噴き出す。それを見た人達からどよめきが起こる。そしてようやく自分が今どういう状況にあるのかを大体理解した頃には、少年の意識はとっくに失われていた。
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「いってぇ...」
何があったんだよ。思い出せ俺。
全身を酷く打ち付けられた様な痛みを感じる。俺は、別に、本読んで、顔洗って、遠くに見えた大通りが気になって、それから散策しようとしたら、身体は宙を舞っていた。
なにそれ意味わかんない。別に空を飛べないこともないけど、そしたら、アイツの手助けが要るもんな。
一人その時の事を整理しながら、可能性のある物を次々まとめていく、あーでもないこうでもないと、可能性を否定してようやく一段落ついた所で、そこが病室のベッドだと気付いた。
かなり、気付くのが遅いが、もしも追い剥ぎだったら、病院には送らないだろうし、きっと事故かなにかだろう。そう信じたい。
半ば強引に、結論を出し、この家の主か、関係者が、タイミングよく来てくれたらな~。と都合の良いことを考えていると、扉をコンコンッとノックする音が。続いてガラガラと、扉が勢いよく開いた。
「良かった〜。目を覚ましてくれて。」
扉を勢いよく開いたのは、雪のように白く美しい髪がたなびき、それを引き締めるように紅い瞳は、まるで人々が暖をとるため焚いた焚き火の様に温かな雰囲気を放つ、一人の少女だった。
「えっと…君は誰?それと、どうして俺はここに運ばれてるの?そもそも、ここってどこなの?」
動揺がバレないように、口早に質問を発してしまう自分に、心の中で、落ち着けと感情を抑制するよう伝える。だが、この少女の方もなにやら焦っているようだ。
「ああそうだった!まだあなたがどうなったか教えてなかった!」
少女は、ハッとなって、近くにあった椅子に座り、事の顛末を語り出す。
「あのね。あなたは、私が引いていた荷台の前にふらっと現れて、私の荷台に轢かれたの。かなりスピード出してたから、急に止まれなかったのよ。」
「ふーん。君の荷台に轢かれたと...。へ?じゃあ俺は君に危うく挽き肉にされる所だったの?」
さりげなく教えられた死の危険に身構えしてしまう。
「なってないんだからいいじゃないの。可能性の話をしていても仕方が無いわ。」
「君が言えるセリフじゃ無いよね!?」
前言撤回。誰だ、雪のように美しいとかほざいてた馬鹿は、人轢いた奴が言えるセリフじゃないだろう。
「それと、ここは一体どこ?王都の病院とかなにか?」
「ああ、ここか。ここね、私の家。」
ここ全部?そうここ全部。本当に?ホントのホント疑うの?いや別に驚いただけ。そんな会話をした。
「もしかしてだけどさ。君ってかなりのお嬢様だったりする?」
少女は、大胆不敵な笑みを浮かべ、「そうね。まぁ、ちょっと特殊な家系だから。」とか言ってみる。
─面倒な事に巻き込まれちゃったなぁ。この怪我じゃすぐには動けそうにないし、なにせ俺には、時間がない。参ったな…。
思わぬ所で、計画が狂ってしまった事に、自分の運の無さを恨みつつ、少年は少女に続きを催促する。
「そして...、私の名前はミリーネ・フォル・センセシア。長い名前なんて、互いに打ち解ける時間を長くするだけだし、ミリーネって呼んでちょうだい。」
「それもそうだな。じゃあ俺も。ルマロ・メイレード。君にさっき轢き殺されそうになった至って普通のどこにでもいる”人間〟だ。」
「ねぇ、その紹介。悪意しかないよね?」
そう言われるのも仕方ない、だって悪意込めてるからね、と言うのはやめておいて。
「ルマロはさぁ、一体どこから来たの?」
「ん?どうして、俺がここの人間じゃないって分かったの?」
「長い間、ここに住んでるし、王都はもう調べ尽くしたからね。それに、そんなに珍しい格好の人は、一人も見たことありませーん。」
「どおりで皆が、俺をじろじろ見てくるなと思ったんだ…そんなに珍しい?」
「広場に居たら、何かの出し物か、間違えるくらい変。」
「そんなにかよ…。」
思いもしない角度からの攻撃に、心を抉られる。
「それで?どこから来たの?」
「王都キリマからだけど…。別にキリマじゃ珍しくないんだよ、この服装。」俺のセンスが無いとか、そんなんじゃないんだけど…。と小言をこぼす。
「そんなに遠くから来たんだ。どおりで見ない顔だなぁって思った訳だ。」
それを、華麗にスルーするミリーネに、ルマロのメンタルは、もうボロボロだ。傍らで一人、うんうん、とミリーネは、頷く。
王都キリマは、この世界に存在する六大陸の内の一つ、ケルトの真反対に位置するキセリアという大陸の都市だ。
「で?一体どんな用事があれば、遥々遠いキセリアから、このケルトまで海を渡ってまで来るの?」
ミリーネの視線が鋭くなる。優しげな少女ではあるのに、その目を見ると、まるで印象ががらりと変わる。勿論想定していた流れだ。突然知り合って、相手の素性や目的がよく分からない人の事を、最初から信じきれる人間はきっと居ない。
どうやらわざわざ遠い所から来た真意が知りたいようだ。
「これと言って理由はないさ。強いて言うなら、自分の生きる意味を見つける為、とでも言っておこう。」
それを、はぐらかすようなキザっぽい適当な形で受け流す。あまり追求はされないよう、次の質問をすぐさま、ミリーネにぶつける。
「じゃあ、俺からの質問。どうしてミリーネは、急いで、荷台を引いていたの?運動の為とかじゃないよね?」(あってたまるか。)
自分の質問に、きちんと応えなかったルマロに、やや不満を持った態度だったミリーネだが、それをなんとか抑え込み、質問に応じた。
「それは、私が営業する予定のお店の宣伝をする為ね。」
「店?」
気になる単語が出て来て、それを追求する。
「そう、お店。」
ミリーネが、胸を張る。
「私、明日から自分の店を持つの。その為の宣伝をしてたんだけど...」
ジト目で、見つめられる。
「そこに、俺が来て宣伝が出来なくなったと。」
「そゆこと。私にも悪かった所はあったと思うし、深くあなたを責めるつもりは、ないけれど。それでも、一言なにか、謝罪の言葉が聞きたいわ。」
はぁ。と溜息をついたミリーネの表情は、若干苛立ちを放っていた。
「そこは悪かった。けど、どのみち確認したとしても、あの速さの荷台は早々避けられないっての。」
「そんな事ないわよ、気合いよ気合い。」
無茶を言う人だ、あれを止められるのは、なんか凄い流派の師範代位だ。
「さてと…。それじゃあ、今日は簡単な検査だけしておくわ。あなたの身柄は、この家で預かる形でいいわね。」
ミリーネが、座っていた椅子から腰を上げて、検査の準備の為に、部屋から立ち去ろうとする。
「こんなに大怪我をしているのに簡単な検査だけとは、お嬢様は、中々に冷たいお人でいらっしゃいますね。」
ミリーネを、からかう様に言ってみるが、
「...?怪我なんかしてないじゃない。」
は?
「いやいや、体中君から轢かれたせいで擦ったり切ったりで大変なんだけど?」
「そんな風には見えなかったけど?」
いや、そんなはずはないと、上半身の服を脱ぐ。
「ッ!」
体を見ると、沢山の傷跡が至る所に刻まれていた。
「戦場にでも行ってたのかっていう程に傷の数が多かったけど、あなたって兵職かなにかだったの?」
顔にじっとりと汗が滲む。驚いた顔から、自分の顔が苦痛に満ちていくのが分かる。そういえば、もう痛みは感じなくなっている。
「どうしたの?具合でも悪いの?」
心配してミリーネが声を掛ける。しかしミリーネの声は、もうルマロには、届いていなかった。
かつて、自分の無力を嘆き、どんな敵にも対抗出来る力を持とうと決心させられた相手でもあり、俺の家族を目の前で殺した相手でもあるあいつが俺に掛けた術。その傷跡は自分にとって、あの日を絶対に忘れないという決意でもあり、力及ばず敗北した奴を、いつか必ずこの手で殺してやるという誓いでもあるのだ。
奥歯を噛み締めて、あの日の恐怖を誤魔化す。母や父は、あの日の業火に巻かれ灰となったが、俺は違う。きっと、皆の仇を取ってみせる。
「とりあえず今日は、もう寝た方が良さそうね…。聞きたいことは山ほどあるけど、今じゃまともに答えられそうも無いみたいだし。」
腰に手を当て、ミリーネは、「よしっ!」と気合いを入れ直し、
「聞きたいことは、また明日!今日はしっかり休むこと!良いわね?それじゃあ、お休みなさい!」と早口に言い残し、部屋を出ていった。
部屋を用意してくれた上に、気遣いまでしてもらうとは…自分が情けなく感じる。
ルマロは、自分に対する自責と、少女に対する感謝をごちゃ混ぜにした感情を抱えたまま、ゆっくりとまぶたを閉じた。