04 『異種世界間戦争』
色々と忙しく、当初の予定より大幅に更新が遅れてしまいました。
今回のこの部分は、大幅に加筆修正するかもしれないです。
それでは、どうぞ。
「先ずは、『異種世界間戦争』について確認しようかの」
「……ちょっと待ってそんな話知らない」
脳の情報整理って言っても、最近ファンタジーもののなんて見てないぞ!?
「少し聞いていてはくれんかの、儂等の会話を。さすれば多少は理解できるじゃろうて。細かい話は大筋を理解してからにすればよい」
「……脳ってどっから情報仕入れてるんだよ……。まぁ分かった、聞いてるよ。最初にとことん聞くって言ったしな」
「はっは、物分りが良いじゃあねぇか使徒殿! どうだ、後からそっちの世界の話でもしながら飲むってのは!」
「いや、ヨークシャ爺さんに鉱山族とは飲むなって言われたばっかだし、辞めとくよ」
絶対呑まれるし未成年だし、なにより話が終われば目覚めるだろうし。
「そう言うなって、鉱山族の酒は美味いぞぉ? ほれ、味見だけでもどうだい、え?」
懲りずに手に持った瓶の中身を勧めてくるドワーフのガラック。
「ガラック……自重して……」
そんな酒好きのドワーフを見かねたのか、シャーラさんがフォローしてくれた。
シャーラさんはあんまり喋りたくないタイプみたいだけど、こういう場面では助けてくれるんだな、優しい。
「あなたのその、鼻の曲がるような、臭い……だいっきらい、なの……」
……前言撤回この人ガラックの事嫌いなだけだこれ。
ガラックもシャーラさんの事が気に食わないのか、両者が険悪な目つきで睨み合い始める。
そういえばドワーフとエルフが仲悪いのもお決まりだったっけか……。
「話が進まない。やるなら部屋から出てやれ」
「話が進まないどころか、まだ始まって数十秒よ……」
ロンドは二人を咎め、リーゼは呆れて思わず愚痴が口を突いたようだ。
「わぁーったわぁーった、俺が悪かったよ、空気読めなくて悪かったな。話を続けてくれや」
「……個人的な悪口を言って、すまなかった……。次は客観的に……批判するように……する……」
いやシャーラさん、謝ってるのかそれで……。ガラック結構怒ってるよ?
「良いかの? ……うむ、では再開じゃ。『異種世界間戦争』……つまりは儂等の世界と、使徒様が来た世界との間の戦争じゃ。お主等の世界の神と儂等の世界の神、両者はすこぶる仲が悪くてのぉ、事あるごとに対立しておったそうじゃ。片や物質世界、片や精神世界と言える世界じゃからの、対立もするじゃろうて。
さて、そんな神達はいよいよ決着を着けることで合意したそうじゃ。がしかし、神と神がぶつかっては両方の世界が荒れ狂い、崩壊してしまう」
いよいよやばい、厨二病全開過ぎる。俺の頭は一体どうなってんだ!?
とりあえずは顔に出さないように、真面目を気取って頷いておく。ヨークシャ爺さんは頷き返して続けた。
「――そこでじゃ。神達は代理戦争を行う事にした。世界が無くなれば結局神は消えてしまうのが道理じゃからの、当然の結果じゃ。
ところでその代理戦争じゃが、少数でやるにはあまりに儂等の世界が有利で、総力戦となればあまりにそちらの世界が有利になってしまう。こちらは魔法という優位性、そちらは数という優位性。主にこれのせいじゃて」
「……それって、解決できる問題なのか?」
純粋な疑問だった。
「できたんじゃよ。だから使徒様はここに居るんじゃからの」
簡潔で、そして理に適った答えだった。
「リーゼ、ニミュ、頼むぞ」
「うん、分かった」
「りょーかーい!」
ヨークシャ爺さんの言葉を合図に、リーゼとニミュがソファー近くまでやってきた。ニミュに裾を離すようにヨークシャ爺さんが指示する。
「よーく見ててね」
そう言うと、リーゼが両手を合わせて水をすくうような形を作った。
「火球よ」
ぼうっ、と彼女の手の中に火球が生まれた。鮮やかなオレンジ色と、生き生きとした黄色の炎が程良く混ざっていて、そのグラデーションに心を奪われる。
明るいとは言えないランタンの灯った部屋をより照らす火球は、ソファーや俺達の影を壁に作り、丁度キャンプファイヤーを見ているような感覚を感じさせた。
「おお、綺麗だな……。でもこれ、魔法だろ? これがどうかしたのか? さっきの話だと、これが解決策になるとは到底思えないんだけど」
「違うわ、神の使徒さん。本命はこれよ」
言ってリーゼはかがんで、ニミュの手が届く辺りに自分の手を持ってきた。
「ニミュ、お願い」
「おっけー、いっくよー!」
高らかな宣言と共に、叩く様にリーゼの手に触れる。
――その途端、火球が掻き消えた。
「……え?」
火球の光量に慣れた目が、突然光を失った事で機能を停止する。
「これが神達の考えた解決策。――加護の力じゃよ」
ヨークシャ爺さんの声が、視界に広がる広い影の中に光るいくつかの眼光のように、はっきりと耳に届いた――