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Re:The End《レジェンド》  作者: フィルゼ
第一章
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プロローグ



 神というものを真剣に考えたことがあるだろうか。

 

 神。

 

 それは人間が創り出した虚像であり、分かりやすく崇拝する為に虚像であるという前提そのものを崩された、人間のエゴによって矛盾を孕まされたものである。

 神の概念を崩さぬようにと、偶像崇拝を禁止していた宗教も多々ある。しかしその殆どが結局のところ何らかの形で物質世界に具現化されているのだ。

 ここで、不確かとなりつつある神を再定義してみよう。 

 人間が神を崇拝する理由は、隣人愛であったり弱者への同情、万人への愛。牛への変身であったり空の飛翔、自然現象を引き起こす武具の作成。

 つまり、神とは人間ができない事を成し得る存在である、と。則ち神とは、人間と相反する概念である、と。

 この定義に基づくのであれば、魔法で事を解決する異世界なんてのがもしあればそれは、この物理法則に支配された世界にとって異世界の住民全てが神であると言うことだ。

 逆もまた然り。

つまりは異世界へ赴く事ができれば自分は神にも等しい、いや、神そのもn




「おーい、聞こえるか、この阿呆」


「んだよ今いいとこだったのに」


 思考を遮られた事に腹をたて、伏せていた顔を上げる。

 顔があった。


「授業中に寝て、起こされたらいいとこだっただぁ? 授業も丁度肝心要のいいとこだ、しっかり聴け甲斐駒」


 顔の持ち主に間近で怒鳴られた。教室からはクスクスとあちこちから笑い声が聞こえてくる。

 どうやら思考の波に揺られている間に、生徒が何をしていようがお構いなしに授業を進める、生徒に大人気のタシマンこと田島先生の地理の授業。自習時間及び休憩時間のその授業は、容赦の無い鐘の音によって終了してしまっていたらしい。

 いつの間にか奥田先生の数学の授業に移行していた。読み方はオクダではなくオクタ、である。別に関係ないのだが。

 とにかく、その珍しい読み方の数学教師に説教をされた。

 センター試験問題に出るのは数ⅠA数ⅡBが殆どであるが、ニ次試験で数Ⅲは必要なのだから今のうち授業で真顔目に取り組んでおくのが賢い生徒のやり方だとか、そんなんじゃ何処の大学にも行けないぞだとか。そんな典型的な教師の叱り方で説教をされた。

 はい、だのそうですね、だの心にも無いような返事をしてやり過ごすのは日常茶飯事となりつつある。

 周りから遠ざかっていくのを確認した後、窓際の席の特権『外の様子を見て暇つぶし』を行使する。

 

 今日は雨模様だった。

 

 さっきの説教で将来への一抹の不安を覚えつつ、どこか楽観視している自分の心境。それとそっくりに、小雨に、薄い雲の後ろに隠れる太陽の光がきらきらと反射している。そんな、雨だ。

 転機というものは時折唐突に訪れる。偶然訪ね来る転機に運命が変えられる事もあるだろう。そんな時が来るまで、もう少しこのままでも良いのではないか。

 そんな考えを持ちながら空を見る。 

 予報では雨は降らないって言ってたのにな。

 およそ未来とは関係の無いことを考えながら、空を見ている。




――天気が、変わった。転機が、唐突に訪れた。


 空が一瞬で、それこそ「あ」と言う間も無く黒く変貌した。

 同時に、暗くなった空に無数の光点が発生する。

 その光景を、黙って見つめていた。

 辺りに明りの無い所で観る、満天の星空に流れる無数の流星。

 この、胸が一杯になるような感覚と、目が離せなくなるほどの美しさを、星すらまともに観たことのない都会暮らしの俺にはそう表現するのが精一杯で。

 形容する言葉を探している間に、降り注いだ星の一つによって、俺は意識を失った。




――この日を境にして、この、全てを物理法則に委ねていた世界は崩壊した。




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