マルコフ連鎖を活用した「なろう小説」の文章生成
頭が痛い。どうも僕は自分が思っていた以上にお酒に弱かったようだ。ニーナは、あれだけお酒を飲んだのに、全然平気なようだ。
「おはよう」
僕が声をかけると、ニーナはニコッと笑い挨拶を返してくれた。ニーナは、薄手のシャツから、ピンク色のシャツとスカートに着替えていた。昨日寝る前に服もおねだりされて購入したものだ。個人的には薄手のシャツは捨てがたかったのだが、やむを得ない。ちなみに僕もパンツ一丁から、ようやく簡単なシャツとジーンズを着ることができた。
そして、ポイント入手の効果だろうか、全然態度が違う気がする。やはりどんな世界でも、サバイバル能力というのは重要なんだなと僕は実感した。
ニーナはいつものように、朝はPCのキーを叩いていた。僕は、洗面所に行くときに、こっそり画面を横目で見て見た。
画面は、文字列ばかりだったが、大きめのフォントの部分(タイトルだろうか?)に、3桁の数字と「レポート」という文字が見えた。小説を書いているわけではないのだろうか?詳しく聞いて見たい気もしたが、せっかく築いた良好な関係を崩すのも得策でないと考え、今は黙っておくことにした。
「ねえ、とりあえずポイントは稼げたけど今後はどうするの?」
ニーナの目は期待に満ち溢れていた
「うん。次はいよいよ人工知能で文章を作る」
「人工知能で?」
「うん、今回はマルコフ連鎖を使う」
「ちびまる子。前に少し話してたやつ?」
「そう、順を追って説明した方がよいかな。今回の文章生成には2つのステップがあるんだ。1つ目が、形態素解析。2つ目がマルコフ連鎖さ」
「けいたいそかいせき?」
ニーナはオウムのように言葉を繰り返した
「形態素っていうのね、文章が意味を持つ最小単位のことさ、例えばね…」
僕は、PCのキーを叩き、ターミナルの黒いウィンドウを立ち上げて、『mecab』とタイプしたあと、続けて『今日は晴れだ』をタイプした。
すると、以下のような文字列がずらりと表示された。
今日名詞,副詞可能,*,*,*,*,今日,キョウ,キョー
は助詞,係助詞,*,*,*,*,は,ハ,ワ
晴れ名詞,一般,*,*,*,*,晴れ,ハレ,ハレ
だ助動詞,*,*,*,特殊・ダ,基本形,だ,ダ,ダ
EOS
「これは、『mecab』と言ってね。形態素解析をしてくれるソフトなんだ。『今日は晴れだ』という文章は、『今日』という名詞、『は』という助詞、『晴れ』という名詞、『だ』という助動詞の4つに分割できる。これが形態素だ。「EOS』は、End Of String、おしまいって意味だね」
「おしまい」
「後は、形態素した文章のパターンを考えるんだ。例えば、『今日』の後には『は』が来たり、『は』の後には『晴れ』が来ている。こういう風に、文字同士の繋を確率で考えるんだ」
「確率?」
さっきからニーナは僕の単語を繰り返してばかりだった
「うん。例えばラーメンが好きな人の文章なら、『ラーメン』の後は『美味しい』って文章が来る確率が高そうだろう?」
「ラーメン大好き小池さん!」
僕はニーナの言葉を無視して続けた
「そんな感じで、まずは適当な言葉を選んで、その次に来そうな言葉をどんどん繋げていくんだ。そうすれば、それらしい文章のできあがりって算段さ!」
「そんな仕組みで本当にうまくいくの?」
「論より証拠さ、もうちょっと待ってて」
そういうと、僕はPCのキーを猛然と叩き出した。
30分ほどしてから、僕はニーナに声をかけた。
「できたよ」
ニーナは寝ていたようだった、目をこすりながら僕の隣まで来て座った。僕は少し緊張した。
「学習データとして、この前スクレイピングした1億文字の『小説家になろう』の小説のテキストを使うんだ。あらかじめ、mecabを使って形態素解析はしておいた。そしてマルコフ連鎖を使って…こうだ!」
僕はEnter keyを叩いて数分待つと、以下のような文章が自動生成された。
-----------------------------------------------------------------------------
「……」ケビンに尋ねる。そんな敵の数メートルに耐えるだけで勝手によろしく。どうにも、獣人たちは、雪の日に渡る襲撃の一人が同時に吼えてくれたおかげです。「よくやるためにステップで回避して、魔石が発動して摂氏200年前の男達や彼等に、リリィに向かった。気にせんな。「兵糧玉の魂は魔力量と質を考えることが出来たのは仕方ないだろうか?」少しばかり手間取ったが、まぁ、それが、とても静かで穏やかな表情で見送った若葉ちゃんにおすすめの宿よりは遥か昔、山猿とか言わない事で、いつだって、下手にギルドから出なおしておく。蔵人が何やらおかしな事で、いなくなりそうです」
-----------------------------------------------------------------------------
「どうだ、それっぽいだろ」
ニーナは戸惑ったような表情で答えた
「えっと、なんかそれっぽいのだけど。よく意味が分からない。面白いの?これ?」
「う、じゃあこれはどうだ」
僕はもう一度キーを叩いた。数分後、また新しい文章が自動的にPCの画面に映し出された
-----------------------------------------------------------------------------
確かにその姿が、年甲斐もなく、獣人族はビヘイリル王国は危機感なくべったりして今日顔を上げていった。放物線では、痛みや、相棒の言葉に堪能したのだが、蓮弥はそのエルザの『コーヒー』と聞いてみたくなります」一分も用意させるわけにも気付かないまま、低い声で制しながら一人、アースが頭を下げていた私のケーキを食べてユージたち一行は、改めてこうして目を閉じ力ある言葉が少なくなっていないというのだ。妄想なんてしても大丈夫なのは、普通の魔力容量が増えたことによって起こる暴発みたいなのー」各所に家紋入りの魔素暴走』は今は直前の出来事はレイを襲う。『閃光白矢』をして置いてある石柱に貫かれても、勿論そう言われれば、金に余裕があるからやめちゃった?」などと呼ぶに相応しい容姿を磨くのも有りだが、事例が少な過ぎた脂ぎった大臣が決まった。「いや、このヒカルって呼ぶの。「彼らのように、フレデリカと、忌々しいっ!」彼女は部屋を出ました。最後の思考は突然、可愛い。
-----------------------------------------------------------------------------
「えっと、突然とか閃光白矢って言われても、ちょっと…。コーヒーとかケーキも唐突に出て来るし、どういう世界観なの?」
「…わからない、それっぽい文章を繋げているだけだから」
「これで、面白いと思う人いるのかな…」
「うーん、でもそれっぽい文章はできているし、たくさん投稿すればちょっとはポイント入るのじゃないかな?これなら、いくらでも文章作れるからコストはかからないし」
「それって…どうなの?」
僕はしばらく考え込んだ
「とりあえず、こんな感じで文章を生成したってことを小説にして投稿してみようか…」
「なんかややこしいね…この次はどうするの?」
「もうちょっと文章を改良できないか工夫してみるよ、時間かかりそうだけど」
「そう」
ニーナはそう言いながら、僕の画面を見つめていたが、見慣れない英数字が並ぶ黒い画面に飽きたのか、僕の肩に頭を乗せたまま夢の世界に落ちていった。
僕は、そのまま少しも動くことが出来なかった。
Editor ID 269