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人工知能による「なろう小説」タイトル自動生成及び回帰分析によるアクセス推移予測

 目が覚めると、PCの画面が目の前にあった。どうも昨日は作業途中に寝落ちしてしまったらしい。横をみると、ニーナは既に起きていて、なにやらPCで作業をしていた。

「おはよう」

 僕が声をかけると、ニーナは少しだけPCの角度を僕に画面が見えづらい方向に変えた。


 少し気になったが、良好な関係を維持するために僕は敢えてニーナが何をしているかには触れないことにした。


「これからどうするの?」

 ニーナは心配そうに呟いた。


 そう、僕らは「小説家になろう」に投稿していないので、最低限の配給しかない。毎回同じような非常食的食料にいい加減うんざりしているし、配給の回数には限りがある。このまま、配給の回数が0になったらどうなるか…想像したくもない。


「大丈夫、もう手はうった」

 僕はにやりと笑い、PCの画面をニーナに見せた。


 「小説家になろう」の作者用の管理ページだ。そこには fig. 13のような画面が表示されていた。


挿絵(By みてみん)

fig.13 アクセス解析画面


「これが、僕が投稿した小説のアクセス数さ」

「えっ!」

 ニーナは驚いた。

「いつの間に?小説書けないんじゃ無かったの?」

「うん。僕は小説は書いたことない。だけど、文章が書けないわけじゃない。なんとなく思い出してきたんだけど、僕は前の世界では、エンジニアをやっていて、技術的な文章を書いたことはあるみたいなんだ」

 僕はメガネを外して、シャツで拭きながら話を続けた

「だから、発想を変えた。『小説家になろう』をスクレイピングしたり、分析しただろ?その内容を投稿してみることにしたんだ」

「そんなの読む人いるの?」

「今は、人工知能ブームだからね。人工知能ってタイトルをつければ多少は読む人がいると思ったんだ。」

「あとは、色々調べてみて知ったんだけど『小説家になろう』は、異世界系が絶大的な人気を持っているらしいんだ」

「異世界系?」

「読んだことないから、あんまりわからないのだけど。何らかの理由では違う世界、つまり異世界に行って、冒険したり、生活したりするストーリらしい。だから、自分の小説も異世界系にすることにした」

「異世界系に?」

「うん、異世界にいって『小説家になろう』を投稿せざるを得ない状況になったから、試行錯誤するって話にしたんだ。まさに僕らが置かれているシチュエーションそのままだね」

「なんか…ややこしい話ね」

 ニーナが少し考え込んでいるようだった。なんというか、ニーナはあんまり僕の話をちゃんと理解している気がしない。というか、考えていないような気がする

「でも凄い!これでポイント手に入れられたね」

 ニーナが嬉しそうな顔をした。頑張ったの僕なんだけど…まあ可愛いからいっか


「うん、その通り」

 そういうと、僕はハウスに備え付けられているタブレットを指差した。そこには、僕らの取得したポイントとして1350という数字が表示されていた。この世界では1ポイントが元の世界の約100円の価値を持つので13万5千円。一気に小金持ちだ。

「どうも、この世界ではアクセス数がそのままポイントになるみたいだね、ちなみに、ポイントのグラフの推移はこんな感じだね」

 そういうと、僕はPCの画面(fig.14)をニーナに示した。


挿絵(By みてみん)

 fig.14 ポイント数推移


「横軸の数字が投稿してからの日数で、縦軸がポイント。つまりアクセス数だね」

「へー、これだけの人が小説読んでるってことなんだ。あれ?3日目から急にポイントが増えてるね」

「ふふふ、良いところに気づいたね、実はここはちょっと工夫をしたんだ」

 僕はメガネをいつもの癖で、クイっと上に上げた


「昨日、データ分析をしたのは覚えているよね?」

「あー、あの変な…」

「へ、変なとは失敬だな!まあいいや、あのあと『小説家になろう』サイトの、人気作品のタイトルだけに着目して分析をし直して見たんだ」

「へー」

「その結果がこれさ」

 そういい僕は、fig.15を示した


挿絵(By みてみん)

 fig.15 人気小説のWordCloud


「それに加えてさらに、マルコフ連鎖を使ってタイトルを自動生成するんだ」

「マルコ?ちびまる子?」

「えっと、マルコフ連鎖に関してはまた今度詳しく説明するね。今日のところは、とある文章をもとに、それと似た文章を自動的に生成する技術くらいに思っておけばいいよ」

 僕は話を続けた

「そして、集めた人気作品のタイトルを元に、マルコフ連鎖で文章を大量に生成するんだ。これが自動生成された文章さ」


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 これらの自動生成されたタイトル案と、さっきWordCloudで可視化した単語で、影響力が大きくて、僕らのシチュエーションに合う単語を組み合わせる。そうだね、「異世界」とか「美少女」とか「スローライフ」が良いかな。


「美少女?スローライフ?えっひょっとして私のこと??スローライフってこの生活が?」

「ま、まあ嘘ではないだろ…人気ありそうなタイトルにあやかるのは大切さ」

 僕は、軽く咳払いをして話続けた

「だから、実は3日目にタイトルをこんな感じに変えたんだ」


変更前:『僕は異世界で人工知能を使って「なろう小説」作家になる』


変更後:『異世界転生したら美少女と人工知能で「なろう小説」作家目指すスローライフ』


「なんかグッとキャッチーだろ、きっとこのタイトル変更が功を奏したのさ」

「へー、分析なんて全然役にたたないと思ってたけど、凄いじゃん!」

「そ…そんなこと思ってたの」

 僕はちょっと落ち込んだが、気を取り直して話を続けた


「ともかく、さっきのポイント推移のグラフからすると、10日後には3000ポイントは超えそうかな?」

「えっ?なんでそんなことが分かるの?」

 ニーナが目を丸くした

「え?ああ、回帰を使ったんだ」

「回帰?」


「回帰っていうのは、そうだな。うーんと、グラフに対してこんな線を引いてやることさ」


 そういい、僕はfig.16をニーナに見せた

挿絵(By みてみん)

 fig.16 ポイント数推移 1


「この直線を伸ばしていくと…」

 僕はさらにfig.17を見せる


挿絵(By みてみん)

 fig.17 ポイント数推移 2


「ほら、10日後には3000超えそうだろう?」

「あ、これって見たことある。昔使った表計算ソフトでこんな機能使ったことあるかも」

「これが、回帰だね。回帰って、データをもとに予測するから、教師ありの学習といってね、立派な機械学習の分野の手法の1つなんだ。前に説明したとおり、機械学習は人工知能の分野で使われる代表的な技術の一つ。つまり、これも人工知能の一種っといってもいいわけさ」

「えっ?じゃあ私って実は気付かずに人工知能使っていたってこと」

「まぁ、そういっても嘘ではないね。人工知能って特にはっきりした定義は無いわけだし。実際、テレビとかで高らかに宣伝している人工知能って、実際は回帰の延長戦上のことがあったりすることだってある」

 僕は話し続けた

「もちろん、複雑なケースだとこんなに簡単には行かないし、回帰はシンプルだけに奥深い点やシンプルがゆえのメリットも沢山あるんだ。実際の問題を解決するのに、何でも最新技術を使えば良いってもんじゃないさ。今回だってそうだろう」

「そうなんだ、人工知能って最先端の技術なのかとばかり思ってた」

「人工知能って定義が曖昧な上に、話題性あって予算もとれるからね。ビジネス的には美味しいキーワードなのさ。バズワードって言ってね、そういう言葉は昔からたくさんある。『ユビキタス』、『ビッグデータ』最近だと『IoT』とかね」

「うーん、でもそしたら、なんでみんなそんな曖昧なものを有り難がったり、恐れたりするんだろね」

「多分」

 僕は、白い天井を見上げて呟いた

「何かにすがりたいのさ」

「すがりたい?」

「神様みたいなものだよ。実際のところ中身は何も分かってないのに、その言葉を神託として崇め奉る。きっと、楽なんだよ。そうやって、何も考えずに生きる方が」

 僕はそのとき、鈍い頭痛を感じた。変な姿勢で寝たせいかもしれない。気分を変えたくなってニーナに提案した。


「ポイントも入ったわけだし、今日はささやかなパーティをしない?パーっと、このポイントで好きなもの食べよう!」

「本当に?それ最高かも!」

 ニーナの目が輝いた

 

 その夜は、初めてポイントを使って配給される食事以外の豪勢な料理でパーティをした。ニーナは料理が得意らしく、簡単な料理をいくつか作ってくれた。食器類はポイント購入だが、ハウス内に簡単な料理器具は備え付けてありガスコンロもある。シャワーのある異世界もあるくらいなので、なんら不思議なことはない。


 意外だったのは、彼女は大酒呑みなことだ。ワインをボトルで数本分一気に開けてしまった。僕はあまりお酒は強く無いので、缶ビールを2本だけ飲んだ。


 パーティが終わると、ニーナが僕に近づいてきた。

「つむぐ、ありがとう。ほんと嬉しかったよ」

「気にすることはないよ」

 僕は、そういいながらニーナの薄着のシャツから見えそうな胸に目が釘付けだった

「これからもよろしくね」

 ニーナはそういうと、僕の手を握った。少し冷たいけど、柔らかい手だ。少し自分の心拍数が上がったのがわかる。心臓の鼓動が、手を通してニーナに気づかれないか心配なくらいだ。

「う、うん」

 僕はそう返すのが精一杯だった。僕は、結構単純な人間なのかもしれない。


 今なら、ベッドに誘ったら拒否されないのじゃないかという考えがよぎったが、ポイントでつるみたいな気がして嫌だったので、ニーナには疲れを理由にして、早めに寝ることにした。


Editor ID: 269

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