非情なる者⑨
浦島は大森の自宅に戻った。サンライズ竜宮。何度見ても、笑ってしまう名前のマンションだ。白雪姫から渡されたメモを取り出して、何かを確認をしている。分身仏は、メモの内容を確認した。
大沢レイ。4歳。女児。
書かれていたのは、これだけだ。手がかりになるような情報は全く書かれていない。果たして、浦島はどうやってレイちゃんの居場所を突き止めるのか。
やはり、敵の最終目的はレイちゃんだ。近い将来、救世主の母になる女性だ。それを阻止するには、救世主が生まれる前に対処するのがベスト。誰でも思いつくことだ。ちひろという、最強の防衛手段を排除したと思い込んでいる訳だから、あとは最終目的を果たすだけと考えているようだ。
しかし、今回の相手は、慎重に動いている。この状況になっても、姿を現さず、下っ端を使い様子を見ているようだ。現状は、俺とそいつの化かし合いになっているかもしれない。
浦島は、パソコンを開いた。受信したメールを見つめている。送信者は白雪姫だが、よく見ると転送されているようだ。元の送り主は、「赤ずきん」と書かれている。白雪姫から、赤ずきんに繋がった。メール内容を確認している途中で、そのメールは削除されてしまった。証拠は残さないようにしているようだ。分身仏は、白雪姫を見張っているもう一方の分身仏に、白雪姫のパソコンまたは、スマホで、メールを送信していたかを確認させた。間違いなく、白雪姫が送信したようだ。送信履歴から、メール内容を確認すること。それと「赤ずきん」に関する情報を得るよう伝えた。
白雪姫は、職場を離れ、どこかに向かって歩き始めていた。六本木の繁華街から少し離れたパーキングに車を停めていたようだ。車に乗り込み、ナビをセットした。目的地は新宿歌舞伎町。ちひろの隠れ家として使用した事務所を捜索するつもりなのか。あるいは、別の目的があるのか。分身仏からの連絡を受け、俺は歌舞伎町で待ち伏せすることにした。