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非情なる者⑤

 歌舞伎町に戻った。

『おじちゃん、ついてきて。』

俺は、歌舞伎町の繁華街を歩いた。男は真っ青な顔をしている。歌舞伎町まで、空を飛んできたのだ。恐怖と寒さ、そして酔ってしまったようだ。ふらふらの状態だ。

『おじちゃん、着いたよ。このビルの二階に行くよ。』

男の顔がさらに歪んでいく。俺は佐々木組の事務所に男を連れてきたのだ。事務所の扉を開けた。

『こんばんは。ちひろだよ。』

『おお、ちひろ様。しかし、こんな遅い時間に出歩いたら危ないですよ。といっても、無敵なちひろ様には関係ないかな。ガハハ。』

『井上のおじちゃん。竜平君いる?』

『ああ、隣の部屋にいるはずだ。おい、竜平!こっち来い!』

『へい、井上の兄貴。何ですか?おっとっとっと、ちひろ様ではないですか。今日も何かご用ですか?』

『お礼を言いに来たのよ。この前のSNSの投稿が大成功だったの。』

『そうですか。それは良かった。上手くいったのですね。』

『そうなの。私の殺人予告をした犯人の一人を捕まえたのよ。この人が犯人。私を殺しに来たの。だから、たっぷりお仕置きしたよ。それで、私の子分にしたの。でも、私は忙しいから、ここで教育して欲しいと思って連れて来ちゃった。一応ね、この子は拳銃を使うのは上手よ。きっと役立つわ。』

『ちょっと待って下さい。それは、俺の一存では答えられないので、どうしますか、井上の兄貴。』

『どうって、答えは決まってるだろう。ちひろ様の願いだ。断るわけにはいかないだろう。親分には俺から言うから、引き受けよう。ちひろ様、うちで修行させましょう。任せて下さい。』

男は気を失いそうになっている。

『この子、ちょっと、というより大分、疲れてると思うので、休ませてあげて。体力的にも、精神的にも限界を超えてるわ。じゃあね、バイバイ。』

俺は大宮の自宅に瞬間移動した。


 帰宅して、すぐにパソコンを開いた。この前と同じように、ちひろについての投稿を、片っ端から見て行く。品川、大森での「ちひろ」の投稿は無かった。まずは良し。あとは、「ちひろ」の殺害完了に関する内容を探す。なかなか、見つからない。集中してキーボードを操作する。しかし、画面の明かりを見続けていたら、うとうとしてきた。俺は、そのまま、眠りについた。

 画面には赤い文字が表示されている。


『ちひろは死んだ。

 邪魔者は排除されたのだ。

 もう、我らの行動を阻止できるものはいない。

 我らの勝利は近い。

 次なる行動に移れ。

 我は全能の神なり。』


 気がつくと、ベッドの上であった。服もパジャマに交換されている。多分、かすみがやってくれたのだろう。優しい。本当に優しい女性なのだ。

『おはよう、ちひろちゃん。かなり疲れてたみたいね。椅子に座って寝てたわよ。もう、ダメな子ね。』

『ママ、ありがとう。疲れは、すっかりとれました。』

かすみと話をしていると、レイちゃんが近づいてきた。

『ちひろちゃん、ルールは守らないとダメよ。』

『レイ姉ちゃん、ごめんなさい。気がつかないで、眠っちゃったの。』

『彩姉ちゃんがいないと、怒る人がいないから、甘えてるのね。代わりに、悪い子はお姉ちゃんのレイが躾けます。』

『躾けるって?』

『ルールを破ったら、お仕置きするってことよ。さあ、お尻だして。』

『いや、恥ずかしいよ。』

逃げようと思ったが、なぜか、レイちゃんにはすぐに捕まってしまう。俺は、スカートをめくられ、パンツを膝まで下ろされてしまった。

パシン、パシン、、、。

10発ほど、お尻を平手打ちされた。

『寝るときは、赤ちゃんになるの。オムツして、ミルク飲んで、、、そういう決まりでしょ。そうでないと、つまらないから。』

お尻がひりひりする。

『それって、いつまで続くの?』

『そうねえ、おねしょをしなくなるまでかな。』

『今日は、してないけど。』

『赤ちゃんになってないから、除外に決まってるでしょ。』

レイちゃんは、俺をお世話するのが好きでたまらないようだ。仕方ない。俺は、ベビーの姿に変身した。

レイちゃんが笑顔になった。

『やっぱり、赤ちゃんのちひろちゃんは、可愛い。ちょっと待ってて。お利口にしててね。お姉ちゃんがミルク作ってくるから。』

かすみが笑っている。

『ちひろちゃん、こっちおいで、ママが抱っこしてあげる。』

俺は、迷わず、かすみの腕の中に飛び込んだ。やっぱり、ここは天国だ。ベビーの姿だと、遠慮することなく、かすみに甘えられる。心が癒される。そして、甘えれば、甘えるほどに、エネルギーが湧いてくる。俺の力の原点は、この甘えかもしれない。かすみに甘え、レイちゃんに甘え、彩先生に甘え、情けない男に見えるかもしれないが、甘えることによって、俺は彼女らに勇気と力を与えられていると思っている。

 レイちゃんが哺乳瓶を持って戻ってきた。哺乳瓶の乳首を口に入れられると、俺は条件反射のように吸い始めた。お腹が満ちると、再び睡魔が襲ってくる。この体だと、睡魔には全く勝てない。目覚めたばかりなのに、あっという間に眠ってしまった。

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