出発④
白雪姫のカメラテストは、滞りなく終了した。竹田が近づいてきた。
『白雪姫さん、どうかなあ。この後、食事にでも行きませんか。』
白雪姫は、困惑している。
『白雪姫さん、行ってらっしゃい。大丈夫よ。竹田さんなら紳士的に振舞っていただけるから、心配しなくて平気よ。ね、竹田君。』
俺は、竹田の自尊心をくすぐるように話した。
『もちろんですよ。ちひろ様、安心して頂いて下さい。』
『白雪姫さん、はい、これ、お守りよ。』
俺は、白雪姫の手のひらに小さな袋を渡した。白雪姫は、袋の中を確認した。そこには、小さな分身仏が入っている。白雪姫は、小さく頷いた。
『ちひろ様、私は守られてるのね。』
『そうよ。そのお守りは最強だから、決して悪いことは起きませんよ。はい、行ってらっしゃい。』
竹田と白雪姫は、車て四谷の夜の中に消えて行った。俺も、亜美に挨拶をして、四谷を後にした。
俺はMr.Tに電話をかけた。
『Tおじちゃん、教えて欲しいんだけど。』
『こんばんは、ちひろ様。桃太郎の件ですか。』
『そう。ネットやメールを通して、信者たちに命令を出しているんだけど、Tおじちゃんのほうで監視出来ない?』
『もちろん、出来ますよ。ただし、桃太郎のパソコンにウイルスを仕込む必要があります。最も簡単なのは、メールにウイルスを添付して、それを開けさせること。ただし、怪しいメールだと勘付かれ、削除されてしまう可能性もあります。最も確実な方法は、ウイルスを入れたUSBメモリーをパソコンに繋いで、直接インストールしてしまうことです。私なら、3分あれば出来る作業ですが、ちひろ様では無理かと思いますね。パソコンを開く際のパスワードを探すことが困難だと思うからです。私なら出来ますけどね。』
『なるほど。ということは、パスワードさえ分かれば、作業は簡単ということね。そしたら、私はパスワードを手に入れるから、Tおじちゃんは、ウイルスを作って、USBメモリーに入れておいて下さいね。また、連絡するわ。バイバイ!』
俺は山梨に瞬間移動した。桃太郎の本名、柿沢二郎の自宅は、Mr.Tの情報通りで、すぐに見つけることが出来た。住所は「町」と書かれていたが、奴の自宅は畑に囲まれた戸建であった。本業は、農家を営んでいるようだ。辺りを見回ったが、怪しい気配は全くなかった。俺は、分身仏を一体だした。桃太郎を見張り、パソコンのパスワードを手に入れるよう命令した。
『白雪姫様、本当に美しいですね。』
『竹田さん、優しいのね。私なんか、全然ダメ。心が美しくないから。早く、ちひろ様のような、本当の美人になりたいわ。』
『あのお方は特別。私は、あのお方によって、救われました。これまで自分が行なっていた悪行を一瞬のうちに見破られ、窘められ、説教されて、改心することが出来ました。若い女性なのに、芯がしっかりしていて、神のような存在です。』
『私も、竹田さんと同じだわ。ちひろ様は、人の心が分かるみたい。私の心も見抜かれて、色々とアドバイスしてくれたわ。』
『白雪姫様のバックアップは、ちひろ様のご命令だと思っています。ちひろ様の目を見て、そう思いました。』
『あのー、失礼ですが、竹田さんって、ちひろ様の奴隷みたい。』
『ちひろ様は、そんなことを望んでません。私が勝手に思い込んでいるだけです。ちひろ様を守りたい。ちひろ様の役に立ちたいと。』
『うふ。あなた、完全なMね。私と相性がいいかも。』
『はい。私はMです。それは当たってると思います。否定はしません。』
『竹田さん。いえ、竹田。ちひろ様だけでなく、私も守って、私の役にもたって。私の命令にも従って!』
『はい、白雪姫様。あなた様のご命令に服従致します。』
白雪姫のSの心に火が点いてしまったようだ。
『竹田、証拠を見せて。』
白雪姫は、竹田の前に足を出した。竹田は躊躇することなく、白雪姫のヒールにキスをした。
『竹田。今から、あなたは私の奴隷よ。私の物よ。いいわね。』
『はい、白雪姫様。』
竹田は、もう一度、ヒールにキスをした。ここは、新宿三丁目のイタリアンレストラン。他の客は、二人の行動を見て、完全に引いている。しかし、そんな事は御構い無し。すでに2人は、2人だけの世界に浸っていた。
『主様、竹田は、白雪姫さんの手に落ちました。もはや、竹田の目には白雪姫さんしか映ってません。これでいいのですか。』
『分身仏よ。それでいい。2人はお似合いだ。幸せになれる。引き続き、白雪姫を見守るように頼む。』
白雪姫は、悪魔の呪縛から解放され、白馬の王子をゲットしたようだ。今度、りんごでもプレゼントしよう。もちろん、毒は無しで。




