俺がいなくても世界は回る
何も考えずにただ、だらだらと
「こんな世界観いいな」「こういうのもアリだな」
と、書き留めたアイデアの5割を使って産まれた
進展と連載に不安がある連続小説の一話をどうぞご覧ください
「こんな俺がいるから世界はこんなにも腐って廃れている」
そう思い込んでいるだけだった時間、
思い込んでたのはあの人。
あの人が生きていた時間の話。
私はその話をこの後に伝える語り部。
私はこんな格好だけど出来れば聞いてね。
あの人の名前はバルノレ。
黒いスーツを着て無精髭を生やした20歳ぐらいの男の人。
バルノレはいつもの様に灰色のコンクリートのビル群に囲まれた、
タバコと酒の臭いが蔓延した大きな交差点を渡っていた。
何十人もの人に押されてぶつかりながら渡っていた。
昨日見た人を横目に陰気な会社に行くはずだった・・・。
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いつもの様に、会社に遅れない様に30分早く着くようマンションの一室を6時半に出る。
革靴の重い足音がそこら中から延々と聞こえてくる。
男にぶつかってしまい舌打ちをされた、どこか少し遠くでシャッターを切る音が聞こえる。
あぁ、こんな俺がいなければ世の中はきっと良くなるのに。
・・・いつもならこの交差点の中央あたりで「死にたい」と思うはずだ、でも何かが違う。
いつも見るスーツの男や厚化粧をした女じゃない。
「子供?」
ふと呟いてしまった。
数メートル先に佇む少女は敵意と憎悪に満ちた視線を向けてきた。
左目は充血を通り越して白目の部分は血の色で、その中に黄色い瞳孔がある。
まじまじと見てると少女はゆっくりと背を向け、
こっちに来いと言わんばかりに手を仰ぐ仕草をする。
俺は「たまには寄り道もいいだろう」等と考えてしまった。
しかし、少女は細身だが俺は既に成人した男だ、
この人混みを抜けるのはとても難しく、少女を何度も見失いかけた。
別に行く必要は無いのになぜか着いていってしまう。
何故なんだろうか。
寄り道をしてしまう自分を憎みながら人混みを抜ける・・・。