普通のください、佐藤くん!
伊勢海老事件から数日たった。
佐藤くんはあれからもお弁当を作ってくれている。
流石に、伊勢海老なんかは入れてこないがレベルが高い。
「おはようございます!今日は少し時間が足りなくて、目標に届きませんでした。すみません」
いつもの如く、お弁当を持ってきてくれた彼は来て一言目にまず謝った。
「いえいえ、私の方こそすみません。いつも作って貰っちゃって・・・。」
お弁当に目標ってなに?と思いながらもそう答えると趣味ですから!という声が返ってくる。
伊勢海老事件以来、どんなに忙しくても朝にきちんと中身を確認するようにしている私は今日もきちんと蓋を開けた。
「・・・これで、目標達成出来てないんですか?」
「はい。勿論です!本当はもっと美しく、色鮮やかにしたかったんですけど・・・。」
果たしてお弁当に、美しさというのは必要だっただろうか?
お弁当を開いて目に入ってくるのは何処だろうか?滝があり、森があり・・・の風景である。
お弁当で風景を再現ってどうなのだろうか?しかも、彼はこれでも満足出来ていないらしい。
本当はここに鹿を入れたかったんです!!などと喋っている彼に、一つだけ言いたい。
ーー私は確か伊勢海老事件以来、普通のお弁当を頼んでいた筈なのだが・・・と。
明日は普通のをお願いします、佐藤くん。