幸せな生き方
「普通にでるだけじゃ面白くないからね。」
次の日、ララが死んだことが広まり
辺りは騒がしかった。
リリーがやったとバレるのも時間の問題だと思う。
「ほんとにいいの?
ここはリリーの故郷で妹さんと過ごした場所だよ?」
私たちは池にいた。
私たちが初めて出会った池に。
「もうあいつはここにはいないしね。
それにあいつならわかってくれるよ。」
「…そっか…リリーほんとによく笑うようになったね。」
「あー…こっこの能天気がうつっちまったかな。」
「おいおい、そんな褒めんなよ。」
私は照れたような仕草をする。
「…よし、はじめるわ。」
「おいおいおいおい!」
「あんたに付き合うと最後まで締まらねぇんだって…」
「だめなの?
最後まで笑いながら終わるとか最高じゃん。」
「あー…まぁ、こっこらしくていいかもな。
笑って終われる結末になればいいけど…」
「私はありきたりなハッピーエンドが好きだよ。」
「…いや、好きか嫌いかじゃなくて…」
「私はそれ以外望んでないから。
私の終わり方はリリーと一緒にいることだよ。」
どんな終わり方になってもリリーといることが私の幸せな終わり方。
「……悪いな…」
「ううん、私がこうしたいんだ。」
リリーの妹は病気で死んだ。
何もしていなくても魔力が枯渇していく病気で。
魔女には年齢的な寿命はない。
魔力がなくなったら魔女は死んでしまう。ってリリーが言ってた。
逆に言えば魔力に気をつけていれば魔女に寿命はないということらしい。
でもリリーの妹は誰かから魔力を分けてもらわないと生きていけない。
それは誰でもできる程簡単なものではなかったみたい。
まだ魔女としては幼かったリリーにはできるものではなかった。
だからリリーは他の魔女に頼るしかなかった。
大嫌いでも気に食わない奴らでも下手にお願いするしかなかった。
でも誰も聞いてなんてくれなかった。
リリーたちは魔女の中でも異端でみんな良く思ってなかった。
あまりにも魔力が大きすぎるため、結界を壊せてしまう魔女だから。
本人たちにその意思がなくても存在そのものが煙たがれた。
リリーは殺してしまおうと何度も思った。
でもリリーの妹はそれを止めた。
「あいつは優しすぎるんだ。
私は…なにもできなかったよ。」
そのまま何もできずにリリーの妹は死んでしまった。
リリーは私に全部話してくれた。
話した上で私と一緒に外の世界にでることを決意してくれた。
結界を壊して。魔女たちに復讐して。
こんなのリリーの気がすまないがためのエゴだし、妹さんはそんなこと望んでない、って言うのが最もらしく聖者じみた正論かもしれない。
でも私はそうは思わない。
私はリリーを止めるなんてできない。
だから一緒にいてあげたい。
私にできる唯一つのことをしてあげたい。
「リリーがどんなやつだってずっと一緒だよ。」
私は笑顔で正直な気持ちを言葉にした。
「……こっこ……」
リリーが泣きそうな笑みを私に向けてきた。
「ごめんね…」
「え……」
リリーに額を指の先でつつかれたかと思うと身体の自由が聞かなくなった。
「え……リリー……どういうこと?」
「結界壊したら私たちだって、この世界だってどうなるかわからないんだ。
そんなことにこっこを巻き込めないよ…」
相変わらずの表情を私に向けてくる。
「それでも一緒にいるって言ったじゃん!
どんな形になってもずっとリリーの隣にいるって言ったじゃん!」
「こっこは私の大切な…大切な友達だよ。
あんたには幸せに生きて欲しい…」
「私の幸せを勝手に決めるな!
リリーが…あんたがいなきゃ私…」
「…いつになるかわからないけど、絶対こっこに会いにいくから…
それまで許してくれないかな?」
いたずらっぽくリリーは笑う。
「許さない!
そんなの…勝手すぎるよ…」
涙が止まらない。
「見張りの奴らはもういないからこっこは目をつぶってるだけでいいよ。私が外まで連れてくから。」
リリーは箒を取り出しながら言う。
「もう…ここのやつらなんていいじゃん…リリーも一緒にいこうよ…」
「こっこ…」
私を箒に乗せ魔法を使う。
「いやだ…いやだよ…」
「幸せな生き方を教えてくれてありがと。
またね。」
「リリぃーーー!!」
あっという間にリリーが遠くなっていくのを見ながら私はリリーとのこれまでを思い出していた。
リリーに会ったこと。
リリーに初めて箒に乗せてもらったこと。
リリーに料理を教えてもらったこと。
リリーに泳ぎを教えたこと。
しょうもないことをリリーの部屋の真ん中で延々と話したこと。
リリーと笑いあったこと。
リリーが私を助けてくれたこと。
リリーにキスをされたこと。
一ヶ月の出来事なのに思い返せばきりがないほど頭に浮かんできた。
気がつけば私は見覚えのある一本道にいた。
「リリー……」
この一本道が二手に分かれていたのであれば迷わず私はリリーに会いにいったのに…何回見てもそこは私が以前何回も登下校に使用していた一本道だった。
「う…」
夕日が目に染みたのか涙がまたこぼれ始めた。
「うわぁぁぁあぁああぁん」
そのまま日が落ちるまで大声で、大口を開けて大泣きした。
人の目も気にせずずっと。
私はありきたりなハッピーエンドをむかえることさえできなった。




