私にできること
それから私たちはリリーの家に戻った。
私は道中も家に帰ってからも涙が止まらなかった。
リリーが助けてくれたのは本当に嬉しい。
でもリリーに迷惑をかけてしまった。
私はそれがたまらなく悔しくて悲しかった。
長と言っていたララを殺したんだ。
リリーがただですむはずがないと思う。
奇天烈な魔法をつかう奴らだ。
リリーがやったなんてすぐばれてしまうと思う。
それを考えると私は泣くのをやめれなかった。
「えぐっ…ごめん…ごめんね…」
私がこんなところに迷い込んだばかりに…
私と知り合ったばかりに…
私なんかを助けたばっかりに…
リリーは私が泣き止むまでなにも言わずにそばにいて手を握っていてくれていた。
「おちついた?」
私は軽く頷いた。
「……リリーが辛いはずなのに……なんで優しくしてくれるの…?」
「こっこは弱虫だし、私が守ってやらなきゃ一瞬だからな。」
「えへへ…なにそれ…惚れちゃいそうだよ。」
私は作り笑いをしてみせた、けどあまりうまくいかなかったと思う。
「あとさ…」
リリーは照れ臭そうに言う。
「私、こっこが大切なんだ…」
照れ臭そうに、真剣に。
「なんで…私なんか…」
「一ヶ月だけど…こっこと過ごした一ヶ月は楽しかった。生きてるって実感できたんだよ。」
「でもそれだけだよ…?
それだけで自分の命をかけないでよ!」
私もリリーといた一ヶ月は楽しかった。
幸せだった。
リリーに対する気持ちが恋だというなら私はそれさえも受け入れるくらいリリーが好きだった。
私だってリリーのためになにかできるのであれば命だってかけれる。
そう思ってしまってからは何も言えなくなった。
「ほら、やっぱり…こっこも私のために命かけれるって思ったろ?」
珍しく私は真っ赤になりながら頷いた。
頷いて握っている手をもっと強く握った。
「ありがとう、こっこ。」
今までで一番優しい笑顔を私に向けた。
「ずるいよ…私だって、私だってできるならリリーになにかしてあげたいのに……もらってばっかだよ…」
隣に座るリリーの肩に顔をあて、涙で湿らせた。
なんで私はこんなにも無力なの…
なんで私には何にもできないの…
「…私さ、50年位前まで妹と一緒に住んでたんだよ。」
「……リリーっていくつなの?」
私のそんな疑問を無視して話を続ける。
「でもね…死んじゃったよ。
体が弱くてさ、最期はご飯も食べれなくなって…」
「リリー……」
「それからの50年は地獄だったよ…
生きてる気がしなくてさ。
友達って呼べるやつもいなくて、柄じゃないけど1人って結構つらいんだな。」
リリーは軽く笑って見せた。
私は大切な人を失ったことがない。
ないからこんなときどんな言葉をかけれるのか私にはわからない。
「もう死んでもいいかな、なんて思ってたらさこっこに会ったんだわ。
文字通り暗い水の底から救い出してくれたよ。」
「……あれ、死ぬ気だったの?」
「半分本気、半分冗談。わかる?」
「……ごめん、わかんないや。」
私は恵まれすぎていたためか死ぬなんて考えたことなかったからわからなかった。
「あやまるなよ。こんな気持ちこっこにはなってほしくないから知らないままでいてくれ。」
「……なんでネコちゃんなの?」
「……溺死ってひどい顔になるらしいからちょっとでもかわいく死のうかと…」
「あはは、リリーも乙女なんだね。」
あ、やばい…殴られる。
そう思って目をつぶっていたら唇にキスをされた。
「えっ…え……えー!?」
「こっこが私を助けてくれたんだよ。」
「私のファーストキスが…」
「おい!きけよ!」
「…まぁリリーならいっか、えへへ…」
「わ、私だって初めてだ!」
「うーん…男子受けは悪いけど女子受けはいいのかな…女の子同士もいいかも…」
さっきまで泣いてた私だけど今は浮かれちゃっている。
「おい…今のやっぱりなしな!
なんかうぜぇから。」
「あはは、顔りんごみたい。」
今度はアイアンクローされた。
バラエティに富んだ暴力をお持ちだぜ、リリーさん。
「リリー…」
「ん?」
「私、リリーと一緒にいたい。
何があってもリリーといる。」
だってそれが唯一私がリリーにできることだから。
「今後、私と一緒にいると危ないからだめだ。
ここまでやっちまったんだ。
見張りくらい私が殺してやるからその間に外の世界に戻れよ。」
「ならリリーも一緒に行こうよ。」
「……魔女が外の世界に行ったなんて聞いたことないからどうなるかわからないんだ。死ぬかもしれないしいきなり老いるかもしれないし。
それに私は外で生きていける知識とかもないしさ。」
「そん時はさ、私が一緒に死んであげる。だから一緒にいこ?
ずっとリリーの側にいるって決めたから私。
リリーを1人にしないって決めたから。」
「………あんた相変わらず気持ち悪いやつだな…」
「よく言われる。」
「……ありがとう。」
「ん、こちらこそ。」
私たちは手を握り合いながら話し続けた。
ずっとこの時間が続けばいいのに




