共犯
フランが語る、秘密とお願い
長に続けて狩りを取り仕切るノバク兄さんにも参加の意志を伝えた。驚いた様子だったけど、フランのためにやらなきゃいけないし、やりたいと思うんだ、と言うとノバク兄さんは声をあげて笑った。
「そうか、そうか。プラムも一丁前に女の為に働きたいと思うようになったか」
「フランのために、だ」
と訂正すると、更に笑われた。
「ははは。悪い、悪い。お前の弓には期待しているぞ。明日は荒れるだろうから、次の狩りは恐らく明後日だ。しっかり準備しておけよ」
大きな手で背中を叩かれその場を後にする。
フランのところに戻ると、双子とノンノ姉さんも交えて何やら器用なことをやっていた。ノームの両手に掛かった紐が何かを形作っている。
「ちょうちょー?」
「ちょうちょー?」
「そう、蝶々。上手、上手」
言われるともうそれは本当に蝶々にしか見えなかった。覗き込む僕に気付いてフランが立ち上がる。ノームは指に掛けた紐を解いてノールに渡して交代だった。
「お帰りー」
「ただいま。何してたの?」
「んー?綾取りだよ」
要は紐遊びらしかった。双子に遊ぼうと強請られて思い付いたのが、自分も子供の頃にやったその遊び。紐をくれたノンノ姉さんも、他の子供にも教えてあげられたらと思って一緒に見ていたそうだ。ノールが必死に指を通しているけど、どうやってもこんがらがってしまっていた。
「昔はもっと色々出来たのになー」
随分と長いことやってないから、忘れちゃった。自分でやればもっと思い出せるかも知れないのに、と、とても悔しそうだった。人に教えるのも思ったよりも難しかったらしい。
紐と格闘する双子を残し、三人でノンノ姉さんのテントに入る。
「プラム君に、言っておかなきゃいけないことがあります」
フランが決まり悪そうに話しだした。
「フランが言いたくないことだったら、聞かない」
「私は、これは言わなきゃいけないことだと思うし、ちゃんと言うから。だから、キミもちゃんと聴いて。ね?」
フランを思い遣ったつもりだったけど、そう言われると、聴くしかない。
「この怪我なんだけど、本当に大したことないから。多分、3日もあれば治っちゃう」
「え?」
そうなバカな。あれだけ血を流して、今だって添え木で固定して…
「うん、まだ骨は砕けているし、腱も切れてる」
それが大したことないって。3日もあれば治っちゃうって。そんなわけないだろう?
「でも、表面上の傷はとっくに塞がってるの」
「私が診た時にはもう、傷痕はほとんどなかったわ。あれだけの出血だったら絶対に縫合が必要だと思ったのに」
びっくりしたわ、とノンノ姉さんが口を添える。
「だから。キミにはこの怪我のことであまり気に病んでほしくないんだ。長の前で啖呵切って庇ってくれたのは嬉しかったけど」
なんだか見透かされているようでバツが悪い。
「うん、本当にどうってことないんだ。さっきも言ったけど元々の治りが早いんだから。で!」
腰を折ってずぃっと顔を寄せるフラン。片眼を瞑って人指し指を立てる。
「そこで一つ相談って言うか、お願いがあるんだけど?」
「何?」
聞かれるまでもなく。そのお願いが何であれ、僕は叶えてあげるつもりだった。聞くまでもなく。
「怪我が治った後も暫く居させて欲しいんだ。英気を養いたいっていうか?他の皆はそんなに早くに怪我が治るなんて思ってないだろうし、そこにつけこむのも狡いかなー?とは思うんだけど……ダメかな?」
「ダメなもんか。そんなお願いなら、喜んで聞くよ」
実は3日で治る、と言われた時には、それじゃぁ僕が恩返しする機会が全然ないじゃないか、と、心の中で慌てふためいていた。だからむしろ、こちらからお願いしたいくらいだった。
「キミならそう言ってくれるって、信じてたよ!じゃぁ、これで、ノンノさんもいいよね?」
口元を弛めてフランがノンノ姉さんに確認を取る。どうやら僕の同意を得ることが、ノンノ姉さんの出した条件だったみたいだ。その理由も理屈も分からないけど。
「プラムのお客さんなんだから、プラムがいいって言うなら、私がとやかく言うことではないでしょう?私としては、フランちゃんは死んでもおかしくない経験をしてるんだから、心がちゃんと落ち着くまでは安定した暮らしをするべきだとも思うわ。ただ……ただ、私は兎も角、長や他の皆はそんなズルを容認しないだろうし、このことは3人だけの秘密にしておくべきでしょうね」
僕もフランも揃って頷く。
「でもそれだったら僕にも内緒にしておけば良かったんじゃないの?」
「それは、無理。むしろキミには私が邪魔だったらちゃんとそう言って欲しいんだ。そのためにもキミにはちゃんと知っててもらわなきゃいけない。余計な負い目なんか感じて欲しくない。だから全部話したんだ」
あっ、全部ではないか、と訂正する。
「僕はあの時フランに命を救われた。命の恩人だ。だからフランに恩返しがしたいって思ってる。フランの為に何か出来るなら、それはとても嬉しい」
「あれはお互い様でしょ?私こそ、キミがいなかったら、今、生きていないんだよ?」
「でも…」
「う~…キミには滞在延長の口裏合わせに協力してもらうんだし、それ以外でも色々と私の為に骨を折ってくれるんだろうから、私の方がお礼しなきゃいけない立場のはずなんだけどなぁ~……何か妙な、恩の買い合いみたいになっちゃってるなぁ~…」
そう言ってフランは眉をひそめた。
そんな一向に着地点の見えない対話は、来客によって一旦打ち切りになった。
《Agenda》
たまたまの方もまたまたの方もご覧頂き有難うございます。パメラです。今晩は。
話が進んでいるようで実は全然進んでいないですね。でもちゃっかり文字数は食ってます←
あ、5日目にして一万文字、取敢えずは1割踏破ですね!いえい!頑張った!もっと早く挫折すると思ったのにww←
勿論、ちゃんと10万文字書ききるつもりで頑張ります。あくまで、つもりで。
1割終わったところでバトル要素はvsシロクマのみ。恐らく1000文字足らず。異世界要素に至ってはさらりと読む限りはほぼ皆無。自分達の生活とは無縁という意味で辛うじて現実味が薄い程度であって、現実的でないわけではないし、ファンタジーと呼ぶのも烏滸がましいでしょう。
今のところは、まだ。
多分10話過ぎた辺りから物語は大きく動き始める予感。まだプロット書き出してないからスケジュールは分からないけど←
ちょっと内容的に10万文字に届くのか?ってところもあったのですが、やっぱりgdgdシーンでは無駄に紙面を食うし、双子の活躍もあってその点の心配は薄れたかな?
追伸。閲覧、登録、評価、毎度有難うございます。