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伝えられないこと。伝わるもの。

自分のことをあまり明かそうとしないフランに長は…

「では、その件はお互い様として」


長がその話はここまでと、まとめて打ち切る。


「お主、どちらから参られた?遠くの地には様の違う人が住まうと話には聞くが、お目にかかるのはこれほど生きてきて初めてじゃ」


「ええっと…遠く北の方から、海を渡って来ました。ヒノクニと言って…ご存知でしょうか?」


長が首を傾げる。僕らが知らないことを何でも知っている長が知らないと首を傾げる。フランに続いて今日二つ目の生れて初めて見るものだった。

長も知らない、遠い世界。その言葉の響きだけで十分心が躍った。想像もつかないとはまさにこのことで、僕にはフランと同じ髪と瞳の人々がもっといる、という想像が精一杯だった。


「そんな遠くから、何のために?」


「それも…できれば、訊かないでほしいです」


話せばご迷惑をおかけしますから、と。

長が大きなため息を吐く。


「我々と関わるつもりがないのなら、早々に立ち去られるが好いじゃろう。じゃが、お主のために骨を折ったノンノにも何も思うところはないのかの?」


「それは……」


言葉を詰まらせるフランを見ていられなくて、思わず声を上げる。


「長!そんな言い方は、ない!」


「プラム!お主は黙っておれ!」


一喝されるが、黙ってはいられなかった。


「あんな怪我をしていて何もできるわけがないじゃないか!どこにも行けるわけがないじゃないか!それなのに出て行けだなんて、ひどすぎる!」


「たわけ!そんなことは分かっておるわ!じゃがな、自分のこともろくに説明できんような輩をおいそれと迎え入れることはできんとゆうとるのじゃ!」


「迷惑をかけるから話したくないって言ってるだけじゃないか!僕らのことを思って言えないんじゃないか!だったら、こっちもそれを汲んであげなきゃいけないんじゃないのか?それが思い遣りって、長が教えてくれたんじゃないか!」


「迷惑ならとっくにかかっておろうが!」


「フランを…!」


反射的に長に飛び掛かっていた。


「フランを、迷惑だっていうのか!?」


組みかかる僕を、ノンノ姉さんとフランが二人がかりで両脇から押さえに入る。


「止めて!少し落ち着いて!」


片腕で僕の腕に必死にしがみ付くフランを払いのけることも出来ず、手を放す。

それぞれに席に戻ったところで、ノンノ姉さんが口を開いた。


「長。実は彼女の治療についてなんですが……私は彼女の治療をしていないんです」


その言葉に僕も長も耳を疑う。でもそう言えば、僕がどのくらい長と話していたかはっきりとは分からないけど、あれだけの怪我の治療をしていたにしては、二人がこのテントに現れるのは確かに早すぎた。


「薬は何も使っていません。傷口を洗い流して、包帯を巻いて、着替えの手伝いをしただけです」


「その!薬は自分のがありましたから!」


「服は…私の、穴が開いていて……仕立て直そうと思っていたものですけれど、彼女に差し上げます。構いません。だから、彼女は、私たちに迷惑なんてかけていません」


最後は、ノンノ姉さんにしては珍しくきっぱりとした口調だった。


「この厳しい自然の中、限られた資源(リソース)で生きる大変さは分かります。そこにご厄介になることがどれほど図々しい事かも承知しているつもりです」


フランが長を真っ直ぐ見つめたまま、また、手を地に着ける。


「怪我は言うほど大したものではありません。それに私、人一倍治りが早いですからすぐに良くなると思います。そうしたらすぐに出て行きますので、ご迷惑でしょうがほんのしばらくだけ、ここで休ませて下さい」


お願いします、と、額まで地に着けてそのまま固まったフランに、長は深いため息を浴びせる。


「お主が、今一つ我々に歩み寄ってくれたのなら。身内として、一族の新たな一員として迎え入れたのじゃが…」


フランがゆっくりと顔を上げる。


「それは……それはとても嬉しいお言葉ですが、そこまでご厚意に与るわけにはいきません。私も、いつまでもここに留まるわけにはいきませんから…」


「ならば致し方あるまい」


呟くように言って長がこちらに目を向ける。


「プラム、お主が連れて来たからにはお主が責任をとるのじゃ」


「えっ?」


それは、連れて来た僕が責任を持って彼女を追い出せ。

ということではなかった。


「フランを客人として迎える。プラム、お主の客じゃ」


滞在の許可をもらえたフランがほっとした顔で僕に微笑みかけた。


「よろしくね」


そう言ってフランが差し出した手は、とてもとても暖かかった。

この時僕を包んだ暖かい気持ちを、僕は一生忘れないだろう。

《Tundra》


たまたまご覧頂いた方も、またまたご覧頂いた方もありがとうございます。パメラです。こんばんは。


ここらで簡単に舞台背景を。

現在の舞台であるプラム達の部落があるのは極寒に閉ざされた土地。外部の人間からしたら「え?こんなとこに人がいるの?」ってなくらいの認識になります。

デザインとしては、基本はイヌイットのイメージですが、集落で暮らしている様はアイヌっぽい感じで脳内再生されています。民族衣装万歳!←

追々出てきますが、主要キャラの年齢。

プラム、12歳。

フラン、19歳。

ノンノ姉さん、22歳。

結構、年離れてますね。今回は真面目なお話ということで、ボケ、ワルノリ、掛け合い漫才はもちろん、性的描写も一切なしという縛りで書こうと決めてかかったので、その意思を固めるべく、青少年保護条例でガードできる年齢設定という説。れっつコンプライアンス!←

もちろん、彼の成長を描くとなれば、我が確立されつつもあり、でも未だ未完成という微妙なお年頃である必要があったとも言えます。


はい、結構いい加減で、適当です。


そんな拙い文にお付き合い頂いた全ての方に感謝を。

そして明日にはもっと多くの方にご覧頂ければ嬉しいな、と呟きながら。

そろそろまた筆を執ります。


追伸。閲覧、登録、評価毎度ありがとうございます。引っかかるところなんかありましたら是非コメントに寄せてください。

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