0夜目―1
カチャーンっ!
ヨーロッパ風の細かい細工が施された重厚なテーブルとチェアーが対になったダイニング。そこにワイングラスがぶつかり合う甲高い音が響いた。
直後、祝いの言葉が掛けられる。
「おめでとう、ユーリ」
「18歳という一年が、あなたにとって幸せなものでありますように」
赤い色のワインが蝋燭に照らされ、キラキラと光っている。
白い口髭を生やしたマシューが「ますます綺麗になったな」と、毎年変わらない言葉を真剣に私に送る。
それを聞いたジャクリーンが、隣に座って同じようにワインを傾けながら「あら、ユーリは毎日綺麗よ」と、目元の皺を深く刻みながら言った。
私はその様子が楽しくて、クスクス笑う。
「ありがとう、お義父さん、お義母さん。私がこうして無事に誕生日を迎えられているのは、二人のおかげよ」
今日ばかりは二人を父・母と呼ぶと決めていた。
まだお酒が飲めない私は、ブドウのジュースが入ったグラスを掲げて感謝の言葉を伝える。
「そんな、大げさだよ」
「私たちはあなたを本当の娘と思っているのよ?そんな悲しいこと、言わないでちょうだい」
「だって本当の事だもの。二人が居なかったら私、野たれ死んでいたと思うわ」
私の発言に二人は目を丸くし、「それは無いよ」と笑った。
食事の後、就寝の挨拶を済ませると寝室の灯りを消し、窓を開けて夜空に瞬く無数の星と、青く輝く月を見上げた。
今日は満月だ。
あの日と同じ……。
私、日野有理はこの世界で18歳になった。