幼馴染
「ねえ、ようくん。ここの山もっと大きくしようよ」
大きな瞳で僕を見て、二カッと笑いかけて真剣な表情でざくざく砂の山を作っていく。
僕はなっちゃんの言うがままに砂を積み上げていた。
なっちゃんは家の近所に住む友達だ。目がクリッとしていつも元気な女の子、幼稚園でも人気ものだ。
そこに1人の小学生の男の子がやって来た。
「おい、おまえ高谷誠の妹だろ。あいつ嫌いなんだよ!ムカつくんだよな。」
ワケの分からない言いがかりだ。
僕たちは無視してそのままあそんでいた。
なっちゃんがスコップを振り上げたとき、近くにいたそいつに少し砂がかかってしまった。相手は四つ年上で体も大きい。
「砂が掛かったじゃないか、どうしてくれるんだよっ」
そう言ってなっちゃんに砂を投げてきた。
なっちゃんはそいつを睨みつけ無言で砂をかけかえした。そいつはまた砂を掛けてきた。
そういった抗争がしばらく続いたあと、大量の砂をなっちゃんの頭の上に容赦なく掛けて気が済んだのか、そのまま去っていった。
そしてなっちゃんは何事もなかったようにその後も砂場で遊んだ。
夕方になり公園内で遊んでいた子供たちは家に帰り始めた。
僕もそろそろ家に帰らないとお母さんに怒られるかも。
そこになっちゃんのお父さんが通りかかった。仕事の帰りだろう。
「夏実~、帰るぞ。」
なっちゃんはお父さんの方を向き返事をした。
「は~い。じゃあようくん。また明日遊ぼうね。ばいばい。」
そう言ってお父さんの方に掛けていった。
「うわっ、おまえどんな遊び方したんだ!砂だらけじゃないか。お母さんに怒られるぞ。」
お父さんに怒られる声が聞こえてきた。そっちを見ると容赦なく頭に拳骨が頭に落ちた。
なっちゃんは何も言い訳しなかった。
「家に帰ったら、すぐ風呂はいれ!」
お父さんの説教はまだまだ続いていた。
僕も家に帰ったら、お母さんはご飯の仕度をしていた。
夕飯を食べてお風呂に入り、パジャマに着替えながら、今日の出来事を思い返していた。
僕は弱虫だ。
なっちゃんが戦っているとき、何もできなかった。大きい相手が怖かった。
なっちゃんは頼もしく勇敢だ。
でも、いつか、強くなろう。
大好きな女の子を守れるようになろう。
そう思いなから、眠りについた。