高城くんからみた佐伯さんという女の人。
「佐伯さんからみた高城君という男の子」を読んだ後のほうがお勧めです。
あらすじは変更予定ありませんが、その内文章に肉付けしていくかもしれません。
構わなければ、読んでやって下さい。
佐伯麻子さん
同じ会社の先輩。32歳。左手と、隣の席の山田さんとの会話から推測するに、独身。
入社当時は気付かなかったものの、実は彼女とは面識があった。
きっかけは、先輩の田原さんの一言だった。
「そーいえば、高城って宮芸出身だよな」
「はい、そーです。3年の初めに中退しましたけど」
「あ、そーなん?ほら、入稿の佐伯さんも同じ宮芸のデザイン科だよ」
「そうなんですか」
それまで佐伯さんは仕事で少し会話する程度で、落ち着いた女の人だな、という印象しかなかった。
「うん。前は大手でデザインやってたらしいよ。まぁ本人はもうデザインしないって言ってるけど」
「へー」
田原さんの話を聞きつつ、その時はそうなんだ、その程度の感想だった。
「今回のゼゼの特集、田原さんやったんですか?」
聞こえてきたのは、佐伯さんと田原さんの会話だった。
「そうそう、いいっしょ、今回の」
「ですね。バキッっときてます」
はは、と田原さんが笑う。
そこで、突然の既視感。
『なーんかバキッっとこないんだよねー。』
父のゼミの生徒だった女の子がマックに向かってしかめっ面している様子が目に浮かぶ。
「ぅえ?」
思わず、声にだして慌てて口を閉じた。
まさか、まさか、と頭の中にある推測が駆け巡る。
推測が正しければ、俺は彼女に出会ったことがある。
両親は小学生のときに離婚し、それから俺は母と暮らしてきた。
それでも父との仲も良好で、父の家にも自由に入り浸っていた。
父は芸大で教授をしており、毎年ゼミ生がよく遊びに来ていた。
だからたまに、そのゼミ生たちと会う機会があった。
挨拶をするだけのこともあれば、一緒に鍋を囲んだ記憶もある。
その中で一人記憶に残っている人がいた。
(といっても、今の今まで忘れていたが)
一目惚れ。
なのか分からないが、なんか、笑った感じとか、話すテンポとかが妙にツボだった。
『圭くんは好きな子とかいないのー?』
ゼミ生たちと父がお酒のせいもありだいぶ砕けた雰囲気になったとき、ゼミ生の一人がそう尋ねてきた。
『・・・います』
『えー!どんな子ぉ!?』
そう聞かれ、おれはその人を指差したんだ。
そこからはもう周りが盛り上がり、なんでそうなったか、その人が言った。
『分かった。じゃぁ、もし、10年たっても私を好きだったら、その時は結婚してあげるよ』
だいぶ、酔っていたんだと思う。
彼女も周りも。
終いには、彼女は結婚宣言を友人により額に落書きされていた。
そんな悪ノリに近い状況だったので、結婚宣言もすぐに別の話題に流れて言った。
次の日父は、昨日は騒がしくて楽しかったな、と笑っていた。
それから彼女を見かけたのは、父への届け物で大学の研究室に行った時だった。
父へ届け物を渡すと、研究室の中に、学生の作品らしいものが積みあがっていた。
「今採点中なんだよ」
そう父が言った。
汚さないよう注意すれば見ていいと言われ、それらを目にする。
「・・これ、いいね」
カレンダーの課題のようだった。
素人目で、あ、なんかいいなというものを見つけ、父に見せる。
すると、父はふと笑った。
「圭と結婚してくれるって約束してくれた子の作品だよ」
そう言われ、妙に恥ずかしくなって、そう、としか答えなかった。
それから、帰ろうと研究室を出ると、向かいのゼミ室に人がいる事に気付いた。
長方形の窓を覗くと、数人の学生の中に彼女がいた。
真剣な顔でマックに向かっている。
一言二言ほかの学生と言葉を交わし、それから彼女はうーん、と背伸びをした。
『なーんかバキッっとこないんだよねー。』
そういって、マックを睨む。
『なにバキッって』
隣からの突っ込みが入り、彼女は笑う。
『レイアウトしてていい感じに嵌る瞬間あるじゃん、バキッとくる瞬間』
『なにそれー』
そういって友達同士笑い合う。
それから携帯が鳴ってハッとし、大学を後にした。
彼女を見たのはそれが最後だ。
何度か父の研究室を訪ねたけれど、彼女に会う機会はなかった。
父に聞けば名前も分かっただろうし、粘ればもう一度会うことは可能だっただろう。
ただ、その時は、そういうことが無性に恥ずかしく、何も行動しないまま彼女の記憶は自然と薄れていった。
けれど、マックに向かう真剣な姿は妙に心に残っていた。
そこになにがあるのだろう、と思ったのだ。
彼女のように何かを生み出すことに真剣になってみたいという漠然とした気持ちが生まれ、結果同じ道を選んだ。
結局デザインに夢中になるうちに、そのきっかけも忘れてのだが。
しかし、思い出してみると彼女が気になって仕方ない。
佐伯さんは彼女なのだろうか?
結果、俺は即父の家に行き、当時のアルバムを探った。
父は学生との思い出の写真を年代別にアルバムに閉じているので、すぐにその写真は見つかった。
あ、佐伯さんだ。
おぼろげだった記憶の輪郭がハッキリとする。
そこには22歳の佐伯さんがいた。
写真を見てみると、当時の記憶が鮮明に蘇って、今の彼女に重なる。
さすがに10年も時間が経つと、そのまま、ではない。
加えて会社での、一歩距離を置いたような今の彼女しかしらない。
額に落書きされた姿なんて、今の彼女からは想像もできない。
口元が緩んだ。
父には悪いが、写真は拝借した。
一度気になりだすと猛烈な速さで彼女のことが気になって仕方なくなった。
なんでデザインやめたのか?
今付き合っている人はいるのか?
どんな恋愛をしてきたのか?
空白の10年間が気になって仕方なかった。
だから、普段自分ほど残業しない佐伯さんが珍しく終電がなくなるまで残業し、なおかつオフィスに2人だけなんてゆうのは、願ってもないチャンスだった。
それに、彼女の隣を歩いてみれば、あ、やっぱこの人のこと好きだ、と思った。
どこが。とも言えないが、強いて言うなら、空気だろうか?
まぁ、案の定。彼女は自分を全く覚えていなかった。
正直、それはどうでも良かった。
俺自身忘れていたことでもあったし、ただ、利用しない手はない。
そして、勢いのままやってしまった。
「最低」
そう言われたが、まぁ、中だしまでしてしまっては、そう言われても仕方ない。
でも、簡単に男の家に上がる佐伯さんも佐伯さんだし、無理強いはしなかった。
戸惑っていたところは、強引に押してしまったが。
本気で拒否する相手を無理やりするほど鬼畜ではない。
彼女に男の影が無いことは確認できたし、体を受け入れたということは、生理的に無理な相手でもないという訳だから、得たものは大きい。
「高城くん。わたし、子供できたみたい。わたし生むから」
あの日から1ヶ月ほど経った日、麻子ちゃんが言った。
ちなみに、麻子ちゃん、とは大学のときそう呼ばれていたな、と思い出してそう呼ぶことにした。
「じゃぁ、急いで結婚しよーよ」
まさか、あの1回でできるとは予想していなかったが、事実はすんなり受け止めた。
あの時、その可能性を考えなかったわけではない。
さすがに避妊具はつけていなかったにしろ、最低限の避妊をすべきと思いつつ、
でもこのまま彼女と結婚して子供ができるのもいいな、と思ったのだ。
彼女は32歳。
子供は早いほうがいい。
うん。
それでそのまま欲望に従ったのだ。
麻子ちゃんは年齢的にも、俺と結婚するしない関係なく生むと決めていた。
一応父親になるから報告したのだそうだ。
24で結婚するのなんて早すぎるわけではない。
子供がいる友達だっている。
俺の気持ちが信じられないのか、年齢差か、彼女が悩むファクターは様々だろう。
「麻子ちゃん、10年待ったんだから、結婚してよ」
ね、と笑えば、彼女は頷いてくれた。
ちなみに、空白の10年間一途に彼女を想った男のふりをしていたが、
嘘であることは薄々彼女は気付いてるみたいだった。
まぁ、いきなり童貞の男が年上の女を押したおすなんて、確かに非現実的だ。
それなりに恋愛はしてきた。
その上で、やっぱり、彼女だ。と感じるのだから、むしろ運命的だと自分的には想っている。
まさか、ほんとうにすんなり結婚できるとは思わなかったが。
彼女の膨らんだおなかに手をあてて、キスをする。
幸せだ、といえば、彼女も幸せだといってくれる。
佐伯麻子さん
僕の最愛の人。
勢いで書いたので、小説というにはあまりに稚拙なってしまいました。
10年も年下男性から思われる寂れた女、の設定を書いてみたく、でも実は男の子は純粋に思い続けてたわけでなく、うまくその約束をだしにしてたらいいな、など妄想をとりあえず形にしてしました。
佐伯さんサイドからみる高城くんと、高城君サイドから見る佐伯さんがギャップがあればいいなと思います。
また、なんかよく分からないがいつのまにか好き、という恋愛って多いんじゃないかな、と思いまして、簡単に両想いです。
読んでくださり、ありがとうございました。