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第八話「驚愕の――最期」

「こんな所で何突っ立ってんだ、お前」

 神坂木の言葉の意味を考えていたら、後ろから声をかけられた。

 振り返る必要もはない。

 この声は、いつも聞いている。

「……いや、ちょっと、な……」

「ふぅん?」

 我が悪友にして腐れ縁――鬼頭内金具きとううちこんぐ

 同じ通学路を通るからか、よく登校中にも会ったりする。

 しっかし、変わり映えのない――いや、いきなり変わり映えする方がおかしいのだが――なんっつーか、今日も冴えない顔してやがるぜ。

 ブサメンここに極まれり、ってか。

「……不当な説明をされた気がするが、まあいい。お前なんぞにどんな悪口を言われようが、何一つ耳の奥には届かない」

 昨日アレだけフルボッコにしておいて何を言う。まあ、俺も悪いんだが。

 というか、何でコイツは、俺の考えてる事がわかるんだ……。

「顔に出てんだよ、馬鹿」

「やめろ。俺を馬鹿呼ばわりしていいのは、神坂木だけだ」

「…………」

「そこで黙るな! お前は冗談も通じねえのかよ!」

 何度も言うようで悪いが、俺はMではない。Sでもないとは言い切れないが、割と正常だ。

「……まあ、なんだ……さっき、神坂木とラブコメった」

「……なんだ、その、ラブコメったって」

「わっかんねーかなぁ? ここが『曲がり角』何だから、ちょっと考えればわかりそうなもんだけど」

「お前がより馬鹿になった事ならよくわかった」

 口の減らない野郎だな。

 まあ――でも、やはり神坂木の『異変』というか『変貌』というか、昨日とは明らかに別人過ぎるあの態度――いったい彼女の身に何があったのだろう――と、普通に心配な俺としては、他に話せるような相手も居ない事が手伝い、ついつい、鬼頭内の馬鹿に先ほどの話をしてしまった。

 ああ、勿論、学校には行かなきゃならんので、歩きながら、である。

「……『根暗』から『ツンデレ』、か」

「……おい、それじゃあまるで、俺が昨日の神坂木を『根暗な女子』って説明しちゃったみたいじゃねえか……『照れ屋』でいいだろ、普通に」

「馬鹿かお前? そんな事は重要じゃないだろ。問題は、たった一日の間に彼女の身に何が起きたか――って事だ」

「……そうだけどよ」

 何か納得がいかん。言い方がムカつくんだよなぁコイツ。

 もしかして俺の事、嫌いなのかもしんねえ……別に傷つかないけど。

「というかそもそも、お前のような奴を初対面で気に入る女がこの世に居た事がまず信じられないんだが」

「うっせ」

 俺だって信じらんねえよ――とはさすがに言いたくない。

「……もしかしてお前、そいつとどっかで会ってるんじゃないか?」

「どうかな――少なくとも、会った事があるなんて記憶、俺にはねえな」

「お前は馬鹿だからな。物忘れも激しいんだ」

「馬鹿馬鹿言うな馬鹿野郎! お前いったい何様なんだよ!」

「少なくとも、お前よりは馬鹿じゃないという記憶が、俺にはあるな」

 天才だ、とか言わない辺りが、俺とは違う――なんっつーか、優等生っぽくて偽善者みたいだから俺はコイツが嫌いだ。

 神坂木があんな事になっていさえなければ、こんな馬鹿に相談する事もなかった。

「……で、その――俺より馬鹿じゃない鬼頭内さんは、神坂木の件についてどう考えてらっしゃるのでせう? 答えてみやがれ」

「何でお前はいつもそう態度デカイんだよ。逆だろ、普通」

 お前には決して屈したくねえんだよ。

 金持ちで。

 優等生で。

 人気者で。

 ……つーか、他にも上げたらキリがないってのも、ムカつく要素の一つ何だよな……。

 何でか、こう――自分でもよくわからないぐらいムカムカしている。

 ――ザワザワ? いや、ソワソワ?

 どう表現すればいいのかわからない。

 でも、あれ……『おかしい』な……何で俺、鬼頭内をこんなに『嫌い』過ぎてんだ……?

 いくら何でも、これじゃあ俺が酷すぎる奴じゃないか。

 鬼頭内の口の悪さも大概だが、俺のそれは、ええと――

「――ッ!?」

 どん、と。

 俺は胸を強く押され――吹っ飛んだ。

 二、三メートル――ひょっとしたら、いや、錯覚かもしれないが、五メートルぐらいは、飛ばされた。

 そんな事をした鬼頭内の力にも驚かされたが、その時に見えたそいつの顔は、純粋に、一言で表すなら――そう、『驚愕』だった。

 どうしてそんな顔をする――。

 どうしてそんな事をする――。

 どうして、そんな――

「ひびま――」

 たぶん、鬼頭内は、俺の名を呼ぼうとしたんだろうが、それは叶わなかった。

 俺が飛ばされて、背中を地面に打ちつける事になる――まさに、その瞬間。


 鬼頭内金具は――『爆発』した。


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