第十五話「戦争を――終わらせようか」
体育倉庫で神兵共を蹴散らした俺達は、再び校舎へ向かうため、体育館を出た。
ちなみに、どうして逃げ込んだ先が体育倉庫だったのかと言うと――鬼頭内の宣戦布告を嬉しそうに受けて立った神坂木は、まず、教室内の生徒――つまり、俺のクラスメイト達を洗脳した。姿が見えなかったのは、鬼頭内いわく、神坂木が幻想世界を使っていたからだそうだ。洗脳された生徒達は神坂木の幻想世界によって武装した兵士に変えられ、俺と鬼頭内を廊下へと追いやった。そして廊下を逃げている途中で予め洗脳されていたらしい他の生徒達に遭遇し、挟み撃ちに遭い、俺と鬼頭内は幻想世界で自分の身を守りながら窓から飛び降り、体育館の屋根に落下――というか、自分の身が硬く、重くなりすぎていたらしく、屋根を突き破って落ちてしまった。で、体育館で朝練をしていた生徒達(勿論、洗脳済み)が襲いかかってきたので、一先ず、体育倉庫に駆け込んだ――というのが、先ほど行われた一連の流れである。
さて。
体育館を出た俺達ではあったが、グラウンドにも、やはり、朝練を行っていた生徒――神兵が居た。
数はさっきと同じ十人。
神坂木は、まるでこうなる事がわかっていたみたいに、敵は全て配置済みのようである。
「どうする? 目の前の敵を叩くか、本陣に乗り込むか――日々丸、お前が決めろ」
そう言う鬼頭内は、楽しんでいるように見えた。俺も人の事は言えないが、まあ、楽しくないと言えば嘘になるな。
神坂木も、鬼頭内も、そして俺も――いったい何がしたいんだろう。
学校を舞台に戦争で遊ぶなんて真似、それこそ幻想世界みたいな真似。
楽しいから楽しい事をするのは、別にいいのかもしれない。みんなそうしている。
でも、楽しくない事から逃げるというのは、どうなんだろうか。
人による――と言われればそれまでだが、つまり、嫌な事から逃げる人が全てではない、嫌の事にも向き合って、立ち向かう、そういう人だって居るんだ。
神坂木や鬼頭内は、どっちなんだろう。
俺は――どっちを選ぶんだろうか。
それとも、もう答えは出ているのかもしれない。
「――もう、いいや。この戦争を、終わらせよう」
「わかった」
俺はもう、充分に楽しんだ。
遊びはもう、終わりにしよう。
終了の時間だ。