次回への幕間――そして……。
「……?」
その男は静かに目を開ける。その目に太陽の光が直接あたって眩しい。
その男――、ガーヴィンは、首をへし折られて瀕死であったが、それでも何とか【魔種因子】保有者としての生命力で生きていた。
そして、かのシルヴィン――そして【月星教会聖騎士団】に確保されて、その魔法によって意識を停止させられて、情報収集のために王都へと輸送されていたはずだった。
しかし――、
(……なんだ? ここは?)
「気が付きましたかな? ガーヴィン殿?」
それはとても丁寧で優しげな声。
(?)
その口調から一瞬レイレノールかと思ったが、自分に対してはこのような口調はしないと思い出した。
(……だれ、だ?)
「おぉめでとうぅ!! 貴方は見事に……」
(?)
そのモノは楽しげに、手を叩いて喝采を挙げる。
「……やらかしてくださいました!!」
(!)
朗らかな笑い声と、手を叩く音が響く。
「……ははははははははははは! まあ、私が言うのも、おかしな話ではあるのですが!! まあ気にしないでくださいませ!!」
(??)
その声に聞き覚えを感じて弱々しく眉を寄せる。
(……おま、えは……)
「まあ……、ある意味扱いやすい貴方なので、手札として残していましたが!! ……まあ……そういう事です!!」
その言葉に、やっとその正体を理解して、――だからこそ疑問を得た。
(……いや、おかしい? おま……)
「かの聖騎士団は……、実際、そこそこ強いのですよ? そもそもが正式な【魔種】を滅ぼす戦闘組織ですので!! ……かの上位種である【玄鱗龍姫】の系譜――、リリィであればまだしも、ただ暴力一辺倒な貴方では……かの聖騎士団の砦に行くのは無謀でした!! ええ……そういう事です!!」
(き、さま……)
朗らかな声は嘲笑を含みながら話を続ける。
「……当然、貴方をこうして、輸送隊から奪って……確保するのも骨が折れましたとも!! あの聖騎士最強がいたらやばかったですねぇ!! ……はははははははははは!!」
(く、そ……)
何かの……おそらく顔――が、ガーヴィンの顔直近まで迫る。
「……でもまあ……、仕方がないですか?! 貴方は……、かつてもそこから先でも……、小虫虐めしかしてませんし!! まあ、期待もしてませんでしたが!! はははははははは!!」
(う、ぐ……)
余りにうるさい笑いがガーヴィンの頭に響く。
「と、まあ……、ガーヴィン殿!! これまでのお役目ご苦労様でした!! 仕事上がりでよろしいですとも!!」
――と、次の瞬間……。
グチャ……。
(あ、え?)
その肉体から【魔種因子】が強引に抜き取られる。
そのまま悪辣なその男は――、その生を終えた。
「……おぉめでとうぅ!! 魔種人生というゲームを……、貴方は無事クリアーしましたとも!! いやあ良かった!! ブラボー!! はははははははははは!!」
そしてそのまま元の人間の身体に戻ったガーヴィンの――その死体を残してソレは去ってゆく。
「では……、皆様……、ごっきげんよおおおおおおおおおおう!! はははははははははは!!」
そうして――、ソレは軽いステップを踏みながら、何処かへと去っていった。
――こうして【魔種因子】保有者の一人がこの国から消えた。
◆◇◆
●レイレノール:
過去に複雑な事情を抱えていそうな【魔種因子】保有者の一人。
彼はリリィの事を、かつての身内の一人と重ねているらしく。かつても何かと世話を焼いていた。……が
一見、話がわかりそうな礼儀正しい紳士に見えて、自身の考えを正しいと思い込む性格であり、かつてもその独善でリリィから避けられていた。
ようは、彼が良かれと思うこと……、を他人が嫌がっても押し付けるような性格なのである。
それでも、悪辣な人間性の多い【魔種因子】保有者の中で、唯一対話が成立する相手ではある。
その能力は【第三の目】による各種【魔法視覚】を操ることで、その蠢く杖はその魔眼の効果で生み出された一種の魔法生命である。
魔眼を操る魔術師――と考えてくれてよい。
●ガーヴィン:
暴力しか思考にない悪辣な【魔種因子】保有者の一人。
その過去は本編の通りで、まさに外道としか思えない人物。そして、おそらく正式な【魔種】にすら希少な邪悪さを持つ男。
【魔種】もそう人間と変わらない性格のものが多いので、この男を【魔種】の代表扱いするのはあまりにも酷い話になる。
暴力で良いように生きてきた人物で、それゆえに唯一叶わなかった例のライバルを異常なほど憎んでいた。
要は思い通りにならないことを暴力で解決しようとする余りに足りない性格であり、そんな彼の悪辣さが群を脱いている為に、最悪の事態を世に広めて来た。
まあ、暴力装置としては扱いやすかったのか、今まで生かされてきたが、何ものかに【魔種因子】を引き抜かれて、その邪悪に満ちた生涯を閉じた。
彼は、弱いものをいじめ殺すことを何より優先し、ある程度の危険を感じると直ぐさま逃げるたちなので、そもそもしばらくグラーベン王国を離れていたこともあり、聖騎士団の戦闘能力を正しく理解できていなかったようである。




