前へ目次 次へ 29/35 10-1 人とか ロエは異物だった。この世にあらざる奇跡の子。天意を得し、神の申し子。褒め称える言葉を当然のように受け取ってきた。そういう風に扱われ、ロエ自身疑うことなく、他人と自分の違いを受け入れてきた。 特別強いと武勇を期待される。 特別美しいと寵愛を求められる。 特別輝かしいと存在を崇められる。 すべて当然で、すべて享受した。 それでも、ロエは人間だった。怪我もすれば病にもなる。腹もすけば、腹も壊す。毒を飲めば死にもする。 人間──であるはずだった。