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Ringwanderung  作者: 風早 遥
2/5

不良と大魔法使い

 ロワイエ・デュヴァルは黒いローブの裾を靡かせながら、大学の廊下を颯爽と歩いていた。


多忙のため、母校に立ち寄ることはほとんどないが、今日は特別な用があってここに来ている。


普段から近寄りがたい雰囲気を振りまいているデュヴァルだが、あまりの暑さに、目つきの鋭さが増していた。


少年時代に不良をやっていたせいか、なにもしなくても凄みがある。


夏だというのに全身黒づくめというのも、いっそう禍々しく見えた。


 骨のある生徒はいないかと観察していたが、デュヴァルは二十人目で諦めてしまった。


目を合わせるどころか、小さく息を呑む始末だ。


 今日は無駄骨かと思っている時、向こうの角から一人の少年がやってきた。


黒髪で、教材を持っているところを見ると、まっとうな生徒のようだが、遠くからでも威圧的な気配を感じることができた。


すれ違う生徒も、目を合わせないようにしている。


 少年の目の前で立ち止まり、じっと見下ろすと、射殺されそうなほど鋭い眼が返ってきた。


ほとんど条件反射のような素早さだった。


「――邪魔や」


 デュヴァルは興味を覚え、大人しく道を譲った。


十六歳ぐらいだろうが、かなり背が高い。


デュヴァルも高いほうだが、三十代のデュヴァルと並んでも、二、三センチしか変わらないのではないかと思う。


 デュヴァルは去っていく背中を品定めするように観察した。


服の上からではわかりにくいが、かなり鍛えているようだ。


魔力も申し分ない。


それに、あの覇気。


精神の強さと魔力は密接につながっている。


 デュヴァルは少年の顔を頭に焼き付け、再び歩き出した。




「お待ちしておりました、デュヴァル様」


 校長室の扉を叩くと、数秒もしないうちに校長が現れた。


「どうぞ、お座りください。

今日は暑いですね」


 返事の代わりにちらりと視線を送るが、それをどう勘違いしたのか、校長の顔色が悪くなった。


デュヴァルは舌打ちしたいのを抑えて、ソファに腰を下ろした。


「ここの生徒の名簿を見せてくれ」


「誰か、気になるのがいましたかな?」


 校長が、今度はそわそわしながら言った。


「勧めたい生徒がいるのか」


「ええ、この生徒なんですが――リカルドといって、学年一の秀才です」


 デュヴァルは写真を一目見ただけで、校長に書類を突き返した。


「どうでしょうか」


「駄目だな。覇気が足りん」


 デュヴァルは他に選ぶ気はなかった。


さっきすれ違ったあの少年、あれは見所がある。


「――こいつを借りていこう」


 ようやく見つけた書類を校長に見せると、今度こそ真っ青になった。


「いけませんよ、これは。

大学一の問題児です。

不良グループのトップで、喧嘩は必ず買うと豪語しているほどです」


「売らないのか」


「売りはしませんが」


「ふん、愚かなことはしないか」


「それと、自分が不良だとは思っていません。

授業にも必ず出席していますが、よくわかりませんよ」


「面白いな」


 デュヴァルは純粋にそう言った。


「こいつをここに呼んでくれ」


 校長は反論しかけたが、デュヴァルの顔に浮かんだ猛禽類のような笑みを見て、慌てて部屋を飛び出した。





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