決心
<決心 1>
外食を終えて家に戻ったスンウとシアは、それぞれの部屋に入った。スンウは窓から差し込む陽光を浴びながら机に腰を下ろした。先ほどの外食の席での出来事が、心を重く圧迫していた。シアが自分の質問に驚いて身を縮こまらせた表情、そしてその後黙ってうつむいた姿が、頭から離れなかった。罪悪感が幻のように目の前を漂った。
窓の外では陽が傾き始めていた。昼のまぶしい光は柔らかな黄色に変わり、机の上を横切った。空気はまだ温かかったが、スンウの複雑な心境を溶かすには足りなかった。
トントン。
静かなノックの音に、スンウは少し驚いてドアを開けた。ドアの前に立つシアを見ると、彼は一瞬ぼんやりと彼女を見つめた。
「スンウ?」シアが慎重に呼びかけた。
スンウは我に返り、彼女をまっすぐに見つめた。「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。何か用?」
シアの肩は少し縮こまり、両手は指を絡めてそわそわしていた。彼女の視線はスンウのシャツのボタン一つに固定されていた。何の変哲もない落ち着いたボタンは、彼女の揺れる瞳を静かに映していた。
シアは一瞬ためらった後、決意したようにしっかりと口を開いた。「スンウ、ねえ…これからも、今日みたいに外に出たときに、地球のこと教えてくれる?今日、君と一緒に出かけたの、すごく楽しかった。ずっとこうだったらいいなって思うくらい。」
予想外の言葉にスンウは戸惑った。彼はシアが自分を責めたり、妹のことを尋ねるのではないかと勝手に決めつけていた。だが、彼女の口から出たのは、一緒に過ごした時間が楽しかったという純粋な気持ちだった。もしシアが同い年だったら、デートの誘いと勘違いしたかもしれないと、つい馬鹿げた考えが浮かんだ。彼は自分の愚かさを内心で嘆いた。
スンウは早まった判断を心の中で叱りながら、微笑んだ。「うん、これからもそうしよう。」
その言葉に、シアの顔は桜の花のようにぱっと輝いた。短くも鮮烈な笑顔は、一瞬でスンウの心をピンク色に染めた。いつの間にか、シアは彼の胸に飛び込んでいた。この家に来た当初からよく抱きついていた彼女は、今やスンウの胸が彼女の特等席のように自然に収まっていた。
窓の外はいつしか暗闇に沈み、月光がカーテンの隙間から漏れていた。スンウはシアの頭を撫でながら窓の外を見た。妹に似た仕草をするシアを見ながら、彼はこれからの日々を静かに思い描いた。
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「スンウ、早く!早く!わあ、エラリオンじゃ見たことない花だよ!めっちゃ面白い!」
春風の中、桜見物に来たシアは、舞い散る花びらに歓声を上げた。好奇心いっぱいの子供のような彼女の姿に、スンウは微笑んだ。「あいつ、面白いもの多すぎだな。まあ、そうなるか。」
さっきバスに乗ってきたときも、シアはバスを魔物と勘違いしたのか、残り少ない神聖力で威嚇しようとした。「ちょっと!それ魔物じゃないから!落ち着いて!」どうにかして止めなかったら、バスが転覆して大惨事になっていたかもしれない。彼の内心を知る由もないシアは、明るく笑いながら桜を眺めていた。そんな彼女を見て、スンウは諦めたように笑い声を上げた。
「ヒヒ、ついに笑った!」シアは膝を曲げて座るスンウを見て、いたずらっぽく言った。
スンウは唇をぎゅっと閉じて笑いを隠そうとしたが、シアは惜しむように両腕を伸ばし、彼の顔をつかもうとした。スンウは彼女の腕をつかんで抵抗するように力を入れた。
「これ離さないの!?」シアがじたばたしながら叫んだ。
「シア、ちょっと…君の力…」スンウは驚いた。普段から運動を欠かさず、体力にも自信があった彼だったが、シアは全く引かなかった。「神獣ってみんなこうなの?」彼は心の中でつぶやき、結局力を緩めた。
「ヒヒ、よし!」シアが勝ち誇ったように笑った。彼女のいたずらっ子な態度のおかげで、スンウもついに笑い声を上げた。
「ハハ、おめでとう。」
そのとき、風に舞う桜の花びらがシアの頭にそっと落ちた。勝利に酔いしれる彼女は全く気づいていなかった。スンウが花びらを取ってあげようと近づいた瞬間、シアが急に振り返った。
チュッ。
シアの唇がスンウの頬に触れた。急に振り返ったせいで、ちょっと痛い「頬キス」だった。「よし。」スンウは平然と彼女の頭から花びらを取った。花びらは彼女の銀色の髪に絡まり、しっかり留まっていた。
「え…えっ…」
動揺したシアがうろたえた声を上げた。彼女の黄金色の瞳は太陽のように燃え、瞳孔が揺れていた。正午の陽光が桜の木の間から彼女を照らし、まるでスポットライトのように彼女を引き立てた。
「何?顔そんなに赤くして。まさか熱でも?」スンウが鈍感に尋ねた。
「う、ううん、なんでもないよ!」シアは慌てて手足がもつれ、しどろもどろになった。「早く、早くシート広げておにぎり食べながら花見しよう!」
スンウはくすっと笑って頷いた。「うん、そうしよう。」
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春、夏、秋を過ぎ、冬がやってきた。夏にはプールで水遊びをし、秋には落ち葉を踏みながら笑った。冬の冷たい風の中でも、彼らはいつものように日常を共にした。スンウには慣れた日常だったが、地球が初めてのシアにとって、すべての瞬間は新鮮で驚きに満ちていた。彼女がこんなに幸せな理由は、新しい世界のせいなのか、それともそばにいるスンウのせいなのか。シアは深く考えずとも、その答えを心のどこかで知っていた。
「スンウ、今日ボードゲームやろうよ!」シアが目をキラキラさせて言った。
「また?連敗して気分悪くならない?」スンウが口の端を上げてからかった。
「むっ、からかってるでしょ!?覚悟して!今度こそ勝つから!」シアがむきになって叫んだ。
「ハハ、よし、勝ってみなよ。」
二人は些細なことでも一緒に笑いながら時間を過ごした。もうお互いがいないと物足りないほどだった。冬が深まるにつれ、シアの元気はどんどん回復した。動きは軽やかになり、顔には生気が宿った。
コンビニから帰ってきたシアが彼を呼んだ。「スンウ!今日もやりたいことあるよ!」
シアがいつもの調子で叫んだ。
「へえ、何やりたい?」スンウは彼女の声のトーンだけで予想しながら笑った。
「雪合戦!さっき外で子供たちが雪を丸めて戦ってるの見たの。一緒にやろう!」
「じゃ、まず服出そう。」
スンウは妹の冬服と手袋を取り出し、シアに着せた。冷たい冬の風の中でも、シアは楽しそうに飛び跳ねた。彼女の笑い声が空気を切り裂き、響き合った。
その瞬間、スンウはふと昔の自分を思い出した。最後の家族だったスンアを失った後、毎日は果てしなく長く、空虚な時間にしか感じられなかった。だが、シアと過ごすうちに、その時間は光のように速く流れ、温かな意味で満たされていった。シアは彼の人生に新たな季節と光をもたらした。ふと、生きることへの欲が顔を覗かせたが、彼は静かにその気持ちを畳んだ。
パクッ!
シアの雪玉はスンウの投げたものよりずっと速く、避ける暇もなかった。彼の思考は当たって砕けた雪玉のようにはじけ散った。
「君、強すぎない?」スンウが息を切らしながら笑った。
「ヒヒ、さっきのボードゲームの仕返しだよ!」シアがいたずらっぽい笑顔で叫んだ。
そうして、シアの一方的な攻撃から逃げるのに忙しい彼だった。
雪合戦を終えて家に戻った二人は体を温めた。いつものように、シアはスンウが作ったホットチョコを手にソファに座り、スンウはその隣でテレビをつけた。シアは画面を見ながらも、ちらちらとスンウを盗み見た。その視線に気づいたスンウが振り返った。
「何か用?」
「ひゃっ!」シアが驚いて身を縮めた。彼女の可愛らしい反応に、スンウは微笑んだ。
「その…ねえ、スンウ。」
「うん。」
「もし私がエラリオンに帰ったら…君、その後何するの?」
スンウは一瞬凍りついた。シアがこんな話を切り出すとは全く予想していなかった。喉が詰まり、言葉が出てこなかった。シアは慎重に言葉を続けた。
「もし、君がよかったら…私と一緒にエラリオンに来てくれる?」
シアの声は切実で、黄金色の瞳は強い願いで輝いていた。スンウはぼんやりと彼女を見つめた。その提案を聞いた瞬間、ためらわずに受け入れたい衝動に駆られた。だが、すぐに心に疑問が忍び込んだ。「いつからシアがこんなに大切になったんだ?」スンアに似ているから?彼女がスンアの空いた場所を埋めてくれたから?それとも、もっと深い何かがあるから?今すぐ答えは出せなかったが、彼女の輝く瞳は彼の心を揺さぶった。
彼は確信した。この少女の願いを断れば、彼女はきっと落ち込むだろう。もしかしたら、帰るまで口を聞いてくれないかもしれない。その考えに、彼は心の中で笑った。彼女が悲しんだら、今の自分も悲しくなるから。
「シア。」スンウが静かに呼びかけた。
「も、もし…無理なお願いだった?今すぐ答えなくてもいいよ!急に言い出したから…。」
シアは慌ててまくし立て、声を小さくした。不安そうにホットチョコのマグをぎゅっと握り、哲学番組が流れるテレビを見ながらぎこちなく笑った。
「どうせ帰る場所も、やりたいこともなかった人生だ。死ねば家族にまた会えるなんて不確かな希望にしがみつくのはもうやめよう。未練は捨てる時だ。」
スンウはシアの銀色の髪がマグに触れないよう撫でながら言った。
「うん、一緒に行こう。」彼は淡々と答えた。
シアの目が大きく見開かれた。彼女の顔はまるでホットチョコのように温かく甘く輝いた。マグを置き、彼女はスンウに飛びついて抱きついた。
「本当に…本当にありがとう、スンウ!」
シアは喜びに溢れ、スンウの胸に顔を埋めた。彼女の小さな温もりが全身に伝わった。その時、彼は彼女がどれほど気を遣って話したかを悟った。シアは彼の胸で顔を擦りつけ、離さないようにぎゅっと抱きしめた。
スンウは腰が少し痛んだが、雰囲気を壊さぬよう我慢し、彼女の頭を優しく撫でた。シアは顔を上げ、スンウを見上げた。
「スンウ!」
「まだ何か?」
「うん!私がしっかり守ってあげるから!」
突拍子もない言葉に、スンウはくすっと笑った。テレビではいつの間にか恋愛番組が騒がしく流れていたが、その音はもうどうでもよかった。スンウの心臓はこれまでになく強く鼓動していた。新しい人生、新しい始まりが、今、開かれようとしていた。
その夜、スンウは久しぶりに夢を見た。夢には妹が出てきた。たくさんの会話を交わした気がしたが、内容は覚えていなかった。ただ、妹の表情と最後の言葉だけははっきりと覚えていた。彼女は明るく笑い、「よくやったね、お兄ちゃん!」と言ってくれた。あたかも彼の未来を応援するかのように。その夜、スンウは深い眠りに落ちた。




