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日本画家長谷川等伯への公開ラブレター

Dear等伯


ねえ、等伯、行ってきたよ、あなたに会いに。

美術館であなたの「松林図屏風」を前にした瞬間、またあの感覚がぶわっと襲ってきたんだ。


全身の毛穴がキュッと締まるような、あのゾクッとする寒気。


まるで、冬の早朝、あなたと二人、毛布もかけずに布団から抜け出した時の、あのヒヤッとした空気に似ている。


ただの風景画じゃないんだよね、あれは。あなたの松林は、まるで私を誘惑する魔性の森。


一本一本の松が、霧の中にぼんやりと浮かび上がるたびに、私の心をギュッと掴んで離さない。


もう、他の絵なんて目に入らない。


だって、あなたの絵は、寒々しいのに、どうしようもないくらい愛おしいんだもん。



でもさ、最近気づいたんだけど、私、あなたの「枯木猿猴図」にもぞっこんみたい。


あの寂しげな枯れ木にちょこんと座っているお猿さん、どこか物悲しそうで、でもなんだか愛おしい。


あの猿の目が「等伯、いつ帰ってくるの?」って私に問いかけているみたいでさ。


あなたの絵の登場人物たちは、いつも私に話しかけてくるよね。


本当に罪な男だよ、等伯は。

きっとあの松の木の一本一本に、あなたがどれだけ私を愛しているかっていう気持ちが込められているんでしょう?


「寒いけど、俺がいるから大丈夫だよ」って、そう語りかけてくるみたいでさ。もう、ゾクゾクするほど愛おしい!


ねえ、等伯。今夜は早く帰ってきて、このゾクゾクする気持ち、あたためてくれない?

愛を込めて、あなたの恋人より

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