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すずのお絵描き日記  作者: 鈴川愛夏
2025年6月
2/5

2025/06/19

私の朝ははやい。4時起きである。起床した瞬間、クレヨン切れの危機なので布団に潜った状態のまま、クレヨンをアマゾンでポチった。

25538円なり。クレヨンだけだよ?出費は痛い。でも、

これで人物画のもうひとつの方のエスキースが始められる。やっほーーーう。

だってどの教授も口に出して言うのだ。「いくらお金がなくても画材だけにはお金かけなさい。お金がないなんて言い訳です。画材代をケチる人は上達しません。」

はい、教授。仰せのままに・・・入学前からやっております。すずは馬鹿者なのです。

でも教授、この場をかりて言わせて下さい。

「生徒が破産したところ見たことありますか?」


痛いと言えば、起きた瞬間から身体が石のようである。生理が4日予定日から遅れているのにまだ来ない。メンタルも相当やられている。例えるならばもう田舎道にあるお地蔵様を全身に乗せて、心の中では竜巻が起こっている感じだ。いい加減にして欲しい。


私は朝起きるとまず寝る前から逆算してスケジュールを考える癖がある。人生に於いて睡眠を一番に大切に考えているからだ。昨日から今日にかけて体調が悪くてほぼ眠れなかった。それとは別に、夜のことを考えると憂鬱だ。私はこの世で一番嫌いなことはおそらく髪の毛を洗うことである。今日は髪の毛を洗う日と思うと絶望しか感じられないのだ。今日はバッド・デイかもしれない。


さてさて、将来は何になりたいのか考えながら歯を磨いたり顔を洗ったり作業着(お絵描きする時に着る服)に着替えたり、ピアスをつけたりしていた。

自分は何のためにお絵描きばかりしているのだろうと。

自分に問うても問うても全く答えなんて見えてくるものではない。案外人間って近い将来のことは見えないものである。自分が死ぬ未来とかなら見えるのに。孤独死かなあ・・・それとも・・・


くだらないこと考えていないでお絵描きを始めなければ。考える前に行動するのが己の強味でも弱味でもあるじゃないか、何してるのだ、自分。


アトリエ部屋に移動して昨日の絵を眺める。

早速床に乾かしている絵を手に取った。すると、手に取った絵を足の上に落とした。声にならない痛みが聞こえてくる。

しかも、運悪く、落としたのは人物画、水彩画のほうだ。水彩画は、木の板に水彩紙を水張りといった方法で貼り付ける作業を施したものであるし、サイズもB2といって相当でかい。デカいともちろん重いのだ。足の甲に角が落ちると本気で言葉にならない。誰のことも責めることはできぬ。ぐぬぬ、辛い、痛い。

涙を流した。やはり今日はバッド・デイかもしれない。


歯を食いしばり、さあ、お絵描きの時間だ。

昨日の夜座学の復習をしたノートや教科書たちをどかせて、作業台にお絵描きのセッティングをする。セッティングしながら聞いているBGMはYouTuberヨビノリたくみの量子力学。もはやミュージックから逸脱しているが、量子力学たっのしーーーい。SONYのヘッドホンの無駄遣いだ。アクリル風景画、水彩人物画どちらからはじめようかな。よし、水彩人物に決めた。一晩置くと粗が見えてくる。眉毛をもう少し太くしなければっ。

水彩6号筆の出番だ。眉毛は完璧だ。髭の部分をもう少しぼかしたいなあ。昨日激しく髭描き過ぎてしまった。よし、日本画用の隈取筆中サイズの出番だ。水彩画をぼかすのにはこの日本画の隈取筆が役立つのである。久しぶりに使った隈取筆は、青春の匂いがした。要約すると、楽しかったのだ。楽しすぎて、お肌の部分も調子に乗ってぼかしていく。白目もすこーし色を作り汚す。さあ、人物画のエスキースの完成だ。メガネの白は画用紙の白を残したままに。より人工物と自然物感が出てきた。

エスキースとは、本画に入る前の下描きのことである。

もう一枚人物画のエスキースをスタートする前に、アクリル風景画をやろう。

あああああああああああ人物の右腕半袖なのに左腕長袖・・・

もう引き返せない。こうなったら開き直る。この人物は、右腕だけハサミで袖をちょん切る癖があると堂々と原稿用紙に説明書きしてやるのだ。

ふ。ふふふ。


水彩筆とパレットを洗いに行く。アクリル風景画からは気分を変えて、ミュージックスタート。今日のアクリル風景のお供は藤田麻衣子だ。このアーティストも本当、どん暗い曲ばかりで大好きなのだ。根暗な私よ、出てこい。根暗の方が気持ち悪い絵に向いているのだ。藤田麻衣子皆、知らないだろうぐへへ。昨日かけていたジャングルスマイルほど好きではないけれど。

アクリル風景画をどこまで感じ悪く描き込むか悩みながら、感じ悪くない部分も残すことにした。今日完成させてやる。見てろよ、教授。ぐっへっへ。ピュアレッド絵の具さん、お願いします、私が描き終わるまで切れないで下さい。藤田麻衣子の代表曲「ねぇ」の歌詞にめっちゃ共感。切ないぜ。でも、藤田麻衣子さん、音楽と恋愛の他にちょっと趣味増やしましょうよ。お絵描き楽しいよ?

ピュアレッドで風景画のトンネルを塗り塗り。セルリアンブルー、ピュアレッド、セルリアンブルー、ピュアレッドかっ完成だ!

よしよし、教授が嫌がる顔を見るのが楽しみだ〜やっほーーーう!


ここで嘘八百並べた作品説明を書かなければ。

原稿用紙に嘘八百の説明文を書く。

説明文は得意だ。任せるのだ。


2つも今日は完成させてしまった。でもうかうか気は抜いていられない。スケッチブックまる一冊提出する課題にアクリルで余った絵の具を置いて適当に落書きしていく。このくらいで許してやろう(単なる絵の具切れ)


さて、次はケント紙に描く人物画のエスキースをやるかな。

楽しい楽しいクレヨン画の時間にしよう。


その前に筆洗いとお片付けだ。

アマゾンで昨日ポチった新しい筆の置き配が届いたとの通知がきた。玄関を開けるとそこには宝物がある。嬉しい。

開けて密かにテンション上がる。新しい画材は良い。本で例えるなら新品の本を買ったような気分だ。今すぐ使いたいところだが、明日学校でデビューさせよう。


お腹が空いた。次の作業に取り掛かる前に豆乳プロテイン&チョコレートのご飯を食べよう。食べたらやるぞーーー。うん、美味しくない。


クロッキーブックを見返す。この中からエスキースにうつるのだ。よし、この絵に決めた。

B3サイズのクロッキーブックより大きい木版祇大サイズのケント紙を広げる。

まずは鉛筆で形取りだ。ミュージックは熊木杏里だ。熊木杏里よ、しばらくお付き合い下さい。あなたの暗さが私には必要なのです。

いでよ、8色あれば何でも描けるアートクレヨン。柴崎春道先生のこと信じてるから柴崎先生の言うことは絶対である。8色あれば何でも描けるはずなのだ。学校の教授ではないけど、私のメンターである。だから今朝死ぬほどのクレヨンの出費をしたのだ。今後もあなたの教えを守ります。


肌にピンク→赤→青→茶色→緑と順々に彩色を施していく。

背景にも色を塗るというより練り込んで行く。黄色、赤と明るめの色を置いていく。


あーーー、そろそろタイムリミットだ。

座学の世界へ行こう。

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