炎治たちの本当のざまあ回
炎治視点
「このバカ息子が!」
「ぐっ」
親父に顔を殴られる。親父は地元の大手企業の社長で今年の市議会選挙に立候補して政治家になろうとしている。すでに有力者に金などで買収済みで当選確実。俺も親父の権力を使っていくつか厄介ごとをもみ消しにしてもらった。
「おまえはどこまで俺の足を引っ張るんだ。これ以上何もせずに家でいろ。これは命令だ」
おれは部屋へ戻る。くそ親父が、いつか焼き殺してやる。それより真白だ。本当ならあいつが罰を受けるはずだった。それがあのくそスキルのせいでばれた。このまま終わらせてたまるか、目に物見せてやる。
週明けの月曜日、担任の先生から炎治・安藤・江口が2学期まで停学処分となったことを伝えた。警察に被害届を出されないだけましだろう。2度目は無いけどね。
放課後、凛と帰宅途中
プルルルル
携帯が鳴る。出てみると研究所の人であることを伝えられる。はぁ、最後のチャンスをあげたのに。
人気の少ない路地に入ると前方から武装状態の江口と安藤が立ちはだかる。引き返そうとすると後ろの通路には炎治が待ち受ける。
「馬鹿が。わざわざ路地に入り込むなんてな。誘い込む必要がなくなったぜ」
「謹慎中じゃないの?」
「うるせぇ。お前に復讐しないと虫が修まらねえんだよ。お前は手足を焼き尽くして、無様に地面に倒れこんでる目の前で凛を犯してから焼却処分してやるよ」
3人の目は殺意と欲望に満ちてもうどうしようもない。炎治は手に火球を生み出すと俺に放ってくる。
バーン
巨大な火柱が俺を襲う。
「あ、火加減間違えた。まあいいか、最後は焼き殺すつもりだったし。凛、真白みたいになりたくなかったらおとなしくしろ」
炎治が凛に手を伸ばすが
カン
透明な壁に弾かれる。
「なんだ、これ?触れねえ」
「それは⦅結界⦆っていう凛のスキルだよ」
園児の疑問に答えるのは火柱の後から無傷で現れる俺。すでに凛によって結界を張ってもらっていた。その姿を見た炎治はうろたえ
「俺のスキルは最強なんだ。防がれるわけがねえ」
がむしゃらに炎を投げてくる。しかしそんなものは凛の⦅結界⦆の前では意味をなさずすべて防がれる。炎の攻撃の雨が止んだ瞬間背後から安藤・江口が武器で殴りかかってくるが⦅結界⦆の前で無意味。
ガン
「グエ」
動きを止めた3人に向け、凛が⦅結界⦆を伸ばし片足を折る。3人はその場で痛みでじたばたしながら悲鳴を上げるが、四肢を結界で地面と固定することで動きを止め拘束する。
凛が3人の動きを止めた後、黒服の人間が多数現れ3人を拘束して連れていく。
「離せよ」
炎治だけは最後までわめきながら連れていかれる。一人だけ残った黒服の人に
「彼らはこちらで処理しますので、ご安心ください」
と伝えられ彼らは去っていく。あの人たちは政府関係の人で色々後処理を頼んでいる。今回も炎治たちの事を日葵姉に伝えたことで、彼らの監視対象になっておりその動きは随時見張られていた。さっきの電話も炎治達が尾行していることを伝える物だった。これで少しは安全になったな。
炎治視点
俺達は黒服たちに連れ去られ能力庁に連れていかれる。手首にはスキルを封じる特殊な腕輪を着けられる。これじゃ犯罪者じゃねえか。江口・安藤とは別々の部屋に案内され椅子に座らされる。部屋にはすでに男が座っている。
「田中炎治君だね。父親は地元の有力者で今年の市議会議員に立候補予定と。スキルはランクBの⦅火炎魔法⦆。現在自宅謹慎中と」
「何が悪いんだ?俺は偉いんだ。スキルにも選ばれて、権力もある。大抵のことは親父がもみ消してくれる。お前らも早く解放した方がいいぞ」
これまでもむかついた奴は殴ったり脅したりしたが、全部親父や知り合いの警察の所長がもみ消してくれた。今回だってすぐに親父が来る。そうしたら今度こそ真白を殺してやる。
「相当甘やかされて育ったんだね。かわいそうに」
「あ?なんだよ、その目は」
「一つずつ現実を教えてあげるよ。まずは君の大好きな父親の話からだね」
部屋の中に備え付けのディスプレイに親父が座っている。親父の顔は真っ青だ。
「田中蓮司さん、調べてみると脱税・脅迫・暴行・書類偽装と色々あくどいことしてますね。仲のいい島袋さん(地元の警察署所長)や簪さん(国会議員)さんも逮捕されているので逃げることはできませんよ」
「嘘だ。嘘だ。嘘だ」
「会社にも国税庁から調査が入ってるので証拠も出そうですね」
嘘だろ。親父捕まったのか。会社にも調査が入るってことはどうなるんだ、俺。
「さて、冷静になれたところで君のこれからを話そうか。君が良太君・凛君にしたことは殺人未遂・暴行。暴行に関しては重罪な能力の使用条例違反になるね。更に他の人への脅迫や犯罪教唆などいろいろ余罪があるね。どんなに有能な弁護士を呼んでも重罪能力者専門の少年院は回避できないね。あとスキルのランクに自信があるようだけどいいこと教えてあげる。君が襲った二人だけどSランクだから」
「はああああ」