レベルアップと真白家の護衛術
「あ、レベルアップした」
学校からの帰り道、焼き鳥の串をスキルで消すとレベルアップの通知が脳内に聞こえる。今日凛はクラスの女子とカラオケに行っている。さすがにいつも一緒だとお互いプレイベートがないし、一定時間なら凛がくれた勾玉があるからこの勾玉は凛がスキルで生み出した道具で、凛が力を注ぐことで〖展開〗のキーワードを呟くと一定時間結界が展開される。ただし生成できる数には限りがあり、凛が力を注がない限り使用できないので配られる人は選んでいる。
レベルアップしたら日葵姉に連絡入れてほしいと言っていたのでLINEを送る。すると
「良ちゃん、今どこ?」
「近くの商店街」
「じゃあ迎えに行くから商店街の出口で待ってて」
すぐに人が来て、研究所に送られる。
「急にごめんね。まだ選んでないよね?」
「ああ。候補はLINEで送った通りだよ」
「なら『液体:水』を選んでくれる?」
「OK」
⦅リサイクラー⦆の対象素材に『液体:水』が追加された。
「じゃあ少し検証に付き合って」
研究員により水やジュース・コーヒー・洗剤など様々な液体が用意される。スキルで処理すると洗剤・油以外は変換できた。
「化学薬品・油はダメみたいね。ちょっとまとめるから待ってて」
その後日葵姉ちゃんに家まで送ってもらった。
翌日の土曜日、また日葵姉ちゃんに抱き着かれていたので抜け出し道着に着替えて家の裏手の道場に行って体を動かす。俺の母親の家系は護身用の武術を収めており、定期的におばあちゃんが裏手の道場で教えている。
ある程度準備運動を済ませると
「早いね、良ちゃん」
「良太、おはよう」
同じく道着を着たおばあちゃん・日葵姉ちゃん・凛が道場に入ってくる。実は凛も最近護身術を学び始めて・・・・
「おはようございます、流歌さん」
「おはよう、凛ちゃん」
朝の身支度を済ませリビングに降りると良太のお母さんである流歌さんが台所で作業している。
私の家は親が政治家・秘書ってこともあって、家でゆっくりできる日は少なく基本一人で生活していた。幼少のころは不満に思っていたけど、今は親の仕事の大変さも知っているしきちんと愛情を注いでいることも知っているからその不満も解消されている。それに私自身特殊なスキルが中学生の時発現したから、いろいろ普通の学生とは違う生活を送っていた。
高校についても要人の護衛の任務があるからあまり通えないだろうなと思ってたんだけど、同じ年齢で同じSランクのスキルの護衛を頼まれた。その子のスキルの成長具合によってはその先のランクもありえ、総理大臣(父)の最優先任務なったのでよほどのことがない限り他の任務は無くなった。
さらに良太は普通に学生生活を送るってことで私も一緒に学校に通うことに。後から聞いたことだけど、他の議員から今まで通り私に護衛を頼みたいという要人も多かったが、その下心や見栄などを見透かしている父の権力で却下された。どうやら父・母は普通の学生生活を送ってほしいと考えていたみたい。
新しく始まった居候生活だけど、良太の家族は心優しい人ばかりで私にも本当の家族のようによくしてくれてる。そのおかげかリラックスして心休まる場所となった。
「そういえば良太はどこにいるんですか?部屋にはいませんでしたが」
「ああ、今日は道場で母さんと朝稽古よ」
道場に入ってみると
バシッ バシッ バシッ
お互い中央で手を弾き合う良太と梢さんの姿がある。しばしの攻防の中、梢さんが良太の腕を取るとその流れで投げ飛ばされる良太。しかし良太は空中で一回転するときれいに着地して構えを取る。
「おはよう、凛」
「おはようございます、凛ちゃん」
二人は構えを解くと話しかけてくる。
「おはようございます。今のが護衛術ですか?」
「ええ。凛ちゃんもやってみますか?」
「いいんですか?」
「ええ、じゃあ道着に着替えてください」
梢さんから道着をもらった私は隣の被覆室で着替えを済ませ再度道場へ。
「凛ちゃんは何か格闘術は学んでいますか?」
「柔道を3段まで修めてます」
「なら武術の基礎は収めてるわね。なら私の道着の襟足を掴んでみて」
梢さんの言う通り道着の右襟首にてを伸ばすと
「え?」
私が伸ばした手に梢さんの手が添えら、彼女の右わきを通り過ぎ道場の地面にあおむけで倒れる。あまりにも自然すぎて対応できなかった。
「今のが基礎ですよ。私たちが教えてる護衛術は力の流れを操ります。今のは凛ちゃんが私の右襟首をつかもうとする力を逸らしてそのままこけるように誘導しました。抵抗できずに倒れ込んだでしょう?」
「はい」
「力の流れをそのまま変えているので慣れてない人はそのまま倒れ込んでしまうのです。この技は合気道の一種で力のない子供や高齢の方も扱えます。まずは感覚をつかみましょう。右手でゆっくり殴りかかってください」
こうして暇なとき護衛術を教えてもらうことになった。
「じゃあ、最初は日葵と良ちゃんで組み手をしてみましょうか。凛ちゃんも次日葵としてもらうからよく見てくださいね」
「はい」
「じゃあ、行くわよ良ちゃん」
「OK」
私の前で二人が向かい合う。最近どうにか力の流れというものが分かり、ある程度のスピードなら力を逸らすことができるようになった。これからは組み手を交えつつ技を身に着けていく。
日葵さんと良太の組手が始まる。日葵さんの上段蹴りが良太を襲う。良太は合気で受け流すが日葵さんは体勢を崩されず足を戻し再び蹴る。
「凛ちゃんは今まで突きの力の流し方を学んできました。しかし襲い掛かってくるのは月だけではなく蹴りや体当たり・投げ・掴み・頭突きなど様々。しかし全ての攻撃には力の流れがあります。これからはそれを見抜きましょう」
「はい」
日葵さんと良太の組手は連続蹴りで体勢が崩れてきた良太へ日葵さんが渾身の回し蹴りを放ちましたが、良太がうまく合気で軌道を逸らし日葵さんが倒れてしまい良太の勝利。次は私。
「最初は遅くやるからね」
「はい、よろしくお願いします」