能力を有効に使え!文化祭②
「安斎、結界お願い」
「ええ」
凜が体育館の舞台全体に結界を張る。今日は体育館を使った演劇のリハーサル。実際の舞台の動きの他にスキルを使った演出の出力も確認する。
「じゃあ友恵、回復魔法使って」
「『ヒール』」
一条の回復魔法の光が舞台上を照らす。
「次、露原」
「『フレイムスラッシュ』」
隼人がドラゴンの模型に向けて火を纏った剣で切りつけ爆炎が広がる。
「次、浜田」
「『雷虎』」
明の背後から雷で作られた虎が現れ轟音を響かせドラゴンの模型に襲い掛かる。
「すげえ、これって絶対他のクラスはまねできないだろ」
「ああ、爆発も音も迫力があってまるで映画みたいだ」
「MVPも狙えるわよ」
「安斎の結界もすごいな。あの攻撃を防いでるんだから」
クラスメイトは盛り上がっている。MVPは文化祭閉会式に発表されるイベントで3日目午前中までの段階で来場者に向けたアンケートを集計して発表される最優秀賞のこと。MVPになったクラスには賞金が贈られる。
「これ、だめだよな」
「ええ」
「そうね」
俺たち3人は微妙な顔。クラスメイトの中にも数人同じような顔をしている。話を聞くと同じ事を考えている。
「福良、少しいいか?」
「どうしたの?」
クラス委員の福良に相談する。俺たちの話をきいた福良はさっきの演出を思い出し考え始める。
「3人とも説明お願いできる?」
「いいよ」
パンパン
福良が手を叩くとみんなが注目する。
「盛り上がってるところすまんがだめだな」
「え、どういうことだ?」
「さっきの隼人の爆炎までの動き見えた人?」
凜の質問に手を挙げたクラスメイトはいない。
「そういえばきづいたら爆炎が広がっていた」
「確かに」
「一条も浜田の時も明るすぎてよくわからなかった」
「あれじゃ何が起こったかわからない」
「それにもう一つ。明、もう一回さっきの使える?」
明は困惑しながらもさっきの雷虎を生み出しドラゴンの模型にぶつける。すると
「キャアアアアアアア」
部屋中に耳をつんざく音が響き、みんな耳をふさぐ。
「今のが本来の今の魔法の音ね。さっきのは舞台の結界に防音効果を付与していたの。一応体育館全体にもさっきと同じ結界を施しといたけどこの音はだめでしょ?」
「ということ。さすがに今のままだと劇には使えないわね。3人とも音や範囲を調整できる?できないなら演出を考えないといけないわ」
福良の指示で3人は調整しようとするが苦戦している。冒険と演劇じゃ必要なスキルの使い方が変わってくるから。基本3人は効率的にダメージを出すようにスキルを調整してるけど、演劇じゃダメージはあんまり関係なく音や視覚効果も気にしながらスキルを使わないといけないから。




