執拗な唇
エドワードの腕に囚われたまま、リリアは身じろぎもできずにいた。
肌に感じる彼の熱が、やけに生々しい。まるで、焼き印を押されるかのように、じわりと染み込んでくる。
「……エドワード、様……」
ぎゅっと拳を握りしめながら、小さく彼の名を呼ぶ。彼は優雅に微笑むと、唇を寄せた。
「なぁに?」
囁きながら、彼の唇がそっと額に触れる。次いでこめかみ、頬、そして——耳のすぐ後ろに、熱く柔らかな感触が落とされた。
「んっ……」
背筋がぞくりと震える。
まるで一つずつ確かめるように、執拗に、ねっとりとした口づけを落とされ、リリアは息を詰めた。
(だ、だめ……これ以上は……!)
抵抗しようとするが、エドワードの腕はそれを許さない。いや、むしろ、どこまでも絡め取るように、ぴたりと密着してくる。
「……ん、ふ……っ」
彼の舌がそっと肌をなぞった瞬間、リリアは思わず肩を震わせた。
「リリア、どうしたの?」
彼はわざとらしく無垢な顔をして尋ねる。けれど、わかっているはずだ。自分のしていることが、どんな効果をもたらしているのかを。
「ねえ、リリア」
名を呼ばれるたびに、心臓が跳ねる。
「君は、いつ外されるのか気になっているんだろう?」
「……え?」
「手錠のことだよ」
その瞬間、リリアは自分の手首を見た。そこには、まだしっかりと銀色の鎖が絡みついている。
「も、もう外しても……!」
「うーん……」
エドワードは、わざと考えるように視線を泳がせた。
「まだ、駄目かな」
「えぇっ!? だ、だって……!」
「だって、リリアはまだ逃げる気でしょ?」
「そ、それは……!」
痛いところを突かれた。実際、彼の目を盗んで逃げる隙を狙っていたのは事実だ。
「だからね、僕が安心できるまで……もう少し、こうしておこうかな」
「や、やめっ……!」
リリアが言い終える前に、エドワードは唇を塞いだ。
今までの甘やかすようなキスではない。今度は、噛み付くような強引な口づけだった。
「んんっ……!?」
リリアは息が詰まるほどの衝撃を受けた。唇を押し開かれ、侵入してくる舌が遠慮なく絡みつく。
逃げようとするが、彼はさらに深く追い詰めてくる。甘く、熱く、全てを奪い尽くすようなキス。
「っ……ふ、ぁ……」
絡め取られ、支配される。何も考えられなくなるほどの熱が、頭を痺れさせた。
ようやく解放された頃には、リリアはすっかり息が上がっていた。
「……これで少しは、おとなしくしてくれる?」
エドワードは満足げに微笑むと、そっとリリアの手首を撫でた。
「……外してくれるのは……いつ……?」
彼女がか細い声で尋ねると、エドワードは少し考えた後、にっこりと微笑んだ。
「そうだね……君が、本当に僕のものになったら、かな」
「……っ!?」
リリアの顔が、かつてないほど真っ赤に染まった——。