表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/15

本当の意味での『お預け』

 ——カシャリ。


 冷たい金属音が、静寂の中に響いた。

 リリアは荒い息を整えながら、自分の手首を見下ろす。そこにはまだ、ベッドの柱へと繋がれた手錠が、しっかりと嵌まったままだった。


(……早く外してほしい……)


 ほんの僅かでも期待してしまった自分が悔しくなる。エドワードは「お利口さんにしていたら外してあげる」と言った。でも、その”お利口さん”の基準がどこにあるのか、まるで分からない。


(もしかして……ずっと、このままなの?)


 絶望的な考えが頭をよぎる。しかし、その思考を遮るように——


「そんなに残念そうな顔をしないで、リリア」


 ふっと耳元に囁かれる。その声に驚き、彼の方を見た瞬間——


 そっと頬を撫でる指先。


「……っ!」


 ひやりとした感触が、火照った肌に心地よく触れる。その一瞬の隙を突くように、エドワードはリリアの顎を掴み、再び唇を塞いだ。


 「ん……っ!? ふ、ぅ……」


 重なる唇。

 吸い付くように深く、じっくりと味わうようなキス。

 舌先がそっと歯列をなぞり、リリアの口内へと入り込んでくる。ゆっくりと絡め取るように動くそれに、抗おうとする意思は簡単に溶かされていく。


(だ、め……拒めない……っ!)


 心の中でそう叫んでも、彼の動きは緩むことなく、むしろ焦らすようにじっくりと深くなっていく。


「ふ……っ、ん……ぁ……」


 息が苦しくなっても、彼はなかなか離してくれない。むしろ、リリアが軽く肩を震わせたのを見計らって、舌をより絡めてくる。


(や、やめて……こんな……!)


 涙目になりながら、必死で唇を押し返そうとするけれど、彼の腕の中から逃れることはできなかった。


 ——カシャリ。


 また、手錠の鎖が鳴る。

 それが、自分の自由を奪っているのだと、嫌でも思い知らされた。

 ようやく唇が解放された頃には、リリアはぐったりと力を失っていた。

 エドワードはそんな彼女を満足げに見つめながら、指で濡れた唇をなぞる。


「リリア」

「……な、なんですか……」


 未だに息が整わないまま、彼を睨みつける。


「……そんなに焦らなくても、ちゃんと外してあげるよ」

「ほ、本当ですか!?」

「うん。——ただし、その前に」


 エドワードは優雅に微笑みながら、そっと彼女の手首を持ち上げた。

 冷たい金属が肌に食い込む感覚。その手首に、彼はそっと唇を寄せる。


「……っ!」


 リリアはびくりと肩を震わせた。まるでそこにキスを落とすことで、“拘束されていること”を意識させるかのように——。


「僕に”ちゃんと”誓えるならね」

「……誓う、って……?」

「もう二度と、僕から逃げないって」


 耳元で囁かれる言葉に、背筋が震える。


「……っ!」


 それがどういう意味を持つのか、リリアは痛いほど理解していた。


 ——彼のものになることを、完全に受け入れろと。


「……それは、無理です……」


 ようやくの思いで、そう呟いた瞬間——


 再び、深く、深く、吸い付くような口づけが落とされた。


「んっ……!!」


 まるで、“お仕置き”のようなキスだった。

 甘く、そして、支配するように。


 エドワードに翻弄されるリリアは、抗う術を失っていく──

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ