解放の先に
リリアは荒い呼吸を整えながら、ぼんやりとした頭で状況を整理しようとしていた。
(な、何なの……今の……っ!?)
エドワードに口づけられ、何度も舌を絡め取られ、息もできないほどに深く味わわれた。
未だに唇がじんと熱を持っている。
(こんなの……反則……!)
しかし、リリアが必死に気持ちを落ち着かせようとしている間にも、エドワードは彼女の動揺などお構いなしに、ゆったりとした動作で手を伸ばした。
「さて……そろそろ外してあげるね」
「……え?」
カチャリ、と小さな音が響く。
(えっ、まさか……!)
その音が何を意味するのかを理解した瞬間、リリアは慌ててエドワードの顔を見た。
「今の……手錠の……?」
「うん。もういいかなって」
エドワードは当たり前のように頷きながら、リリアの左手に巻かれた手錠を外していく。
ついに——
(自由に……!)
両手が完全に解放されたことを実感し、リリアは思わず拳を握りしめた。
しかし——
「よかったね、リリア」
優しく微笑むエドワードを見た瞬間、その表情に何か違和感を覚えた。
(え……何、この感じ……?)
穏やかなのに、どこか寂しそうな——そんな表情。
まるで、次の瞬間にでもリリアが自分の元を去ってしまうと分かっているような、そんな目をしていた。
「……リリア」
「な、なんですか……?」
そっと彼がリリアの手を取る。
今までのように強引ではなく、優しく、でも逃がさないように。
「……もう、僕から逃げない?」
「っ……」
エドワードの真剣な声色に、リリアは思わず息を呑んだ。
彼が本気なのは分かっている。
(でも、私は……)
今すぐにでもここから出て行くべきなのに。
なのに——
(なんで、動けないの……?)
心臓が、また早鐘を打ち始める。
彼の瞳が、あまりにも真っ直ぐで。
それが、ひどく心を揺さぶる。
リリアはギュッと拳を握ったまま、唇を噛んだ。
このまま彼の手を振り払うべきか、それとも——
「……リリア?」
優しく名前を呼ばれる。
その声が、ひどく甘く耳に響いて——
そして気づいた時には、リリアはもう動けなくなっていた。
(私……どうしたらいいの……?)
自由になったはずなのに、リリアの心はそれとは逆に、ますますエドワードに囚われていくのだった——。




