卒業式での返事はまだ保留
「卒業式2日前にベランダからルームメイトを思う」の後日談です。
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今日は卒業式。多くの女子が袴を着て参加した中、私達も例外なく袴を着ていた。それも、色はピンクと水色と違うとは言え、同じ花柄の袴だ。
「前に写真を見せてもらったけど、やっぱり結とお揃いで嬉しいな」
「私も咲とお揃いで嬉しいよ」
あぁ、咲は本当に純真に喜んでいるな。私はここ数日、咲と離れると思ってずっと悲しんでいたのに……。でも、それが咲らしい。
「2人ともお疲れ。袴綺麗だな」
「あ、お疲れ。涼もスーツ素敵だよ」
ここで咲の王子様が登場か。お邪魔虫はさっさといなくならないと。
「喉渇いたから飲み物買ってくる。2人ともお茶で良い?」
「結、ありがとう」
「泉、すまないな」
じゃあ自販機に行くか……って。
「泉、俺もついて行くよ」
「林くん……別に良いのに」
「いや俺が行きたいだけだから」
――ペタペタ
――コツンコツン
今響いているのはただ2人の歩く音。私はこの2人の状況が気まずかった。何故なら……。
「泉、けじめついた?」
「…………ごめん…………実はまだなの……」
「そっか……分かったよ。ちゃんとけじめが付いた時にまた新たな返事が欲しい」
あぁ、何で貴方はそんなに優しいの。私はまだ咲への気持ちが残っている――愛しているというのに。そんな私を待ってくれていることが不甲斐なくて、苦しくて……でもまだ駄目なの。
最初はただ咲が好きな原くんの親友という認識でしかなかった。だから最初は咲と原くんとの距離を縮めるために仲良くなるにしか過ぎなかった。
彼らと関わっているうちに、原くんにはそんな抱かなかったけど、彼とは普通に一緒にいて楽しいと思うようになって、友達だと認識するようになっていった。勿論、咲のために2人と関わっていたし、咲が1番大切だけど、彼と関わるのも心地良くて。
ようやく咲と原くんが2人が付き合うようになって3ヶ月経った頃、私は彼から衝撃的な告白をされた。
「泉のことが好きなんだ。だから俺と付き合ってくれない?」
何故私なのかという疑問が止まない中、答えた返事はごめん。だって、咲を愛しているのに、他の人なんて愛してはいけないもの。いっそのこと突き放そうと思って正直に咲のことも伝えたいけど、それでも良いって言ってくれた。だから、卒業式まで待ってと答えた。その時にはこの気持ちが収まっていると思ったから。
だけど……どうやらまだみたい。今も咲を愛しているの。
だから、この気持ちが納まるまではまだ返事を出せない。
本当にごめんね。