表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

原因追及

 自室に戻り、 タブレットを開いて先ほど貰った資料を見る。

 鈴蘭に含まれる毒の成分と麻薬の混合の薬、 薬なのかもわからないが、 これだけの毒を簡単に接収できる方法は点滴か薬としか思えなかった。

 法から抜ける薬は世の中に沢山あるが、 法の抜け穴を通る薬が作られるいたちごっこの状態は鬼が出ても変わらない。


「どこ行ってたの?」

「研究室だ」

「鬼の灰ですか?」

「新種の薬物かも知れない、 お前ら外出る準備をしろ」

「こんな夜になんで出るの!?」

「足を動かさないと見えない物があるんだ」


 刑事時代を思い出す。

 上司と歩いて聞き取り調査をして何個も靴をダメにしたか。

 俺らはシグナルを出て夜空を見上げる。

 しんとしていて昼間の暑さが軽減されている。


「どこ行くんですか?」

「そうだよ!こんな丸腰で鬼が出たらどうするの?」

「鬼退治は休む」


 ぶつくさ文句の嵐を避けて、 ある場所まで歩く。

 新宿に凛として立っているシグナルの近くに用事がある。

 所謂『トー横』だ。

 若者が多く、 薬、 売春も多い地域で無法地帯となっているため情報のアップデートも速い。

 煌びやかな街だがゴミが溢れたゴミ箱を見て、 この地域の民度の悪さを表しているように感じた。


「トー横で事情聴取でもするんですか~?」

「そうだ」

「絶対怪しまれて終わるよ」

「だからお前らと来たんだ」

「まさか私たちに事情聴取させる気?」


 そのまさかだ。

 俺もするが、 同性の方が打ち解けやすいだろうと踏んだことだ。

 三人とも渋い顔をするが、 仕方ないと言って屯ろしている女の子に話しかける。


「ねぇ!聞いてもいいかな?」

「何をですか?」

「ここで流行っている薬ってある?」

「普通に風邪薬くらいじゃないですかね」

「そうか!ありがとう!」


 俺はその様子を見ていて気になったのが、 晶たちをずっと見る十代後半の女の子だ。

 茜にサインを出して、 その子に話しかけようとすると逃げ出した。


「追うぞ!」

「了解」


 人ごみを縫うように逃げる女性やっぱり地の利があるのか、 逃げる足に迷いがない。

 だが、 こちらも負けないヌークがいるから。

 茜が女の子を捕まえて、 その場を囲む。

 ぜーぜーと息を荒くして膝着いた女の子は流行りの地雷系と呼ばれる服装をしている。

 よくもまぁその厚底で逃げたな。


「何か知っている事があれば話して?」

「―っ」

「何か知っているから逃げたんでしょ?」


 茜たちの声色が優しく女の子の顔が和らいだ。


「私から聞いたなんて言わないで」

「わかった約束する」


 彼女は一呼吸して、 膝に付いた砂利を払う。

 風貌も最近の子と言うイメージそのものだった。


「最近ここら辺で、 新しい薬が出回っているの」

「新しい薬ってどんな?」

「噂でしかないの、 でも確か、 りりぃって名前」

「隊長、 鈴蘭の英語の最初は、 リリィです」

「どんな人売っているかとかは分かるか?」

「わからない!だって噂だもん!」


 トー横ですらまだ噂程度しか、 浮いてこないのか。

 女の子に名刺を渡す。


「何かあったら連絡してくれ」

「わかった……」


 少女は俯きながら何かを思ってるのは確かに感じる。

 だが、 ここで言葉にしようとするならすぐに回るからだろう。

 警戒心が高く頭のいい子なのだろう。


「新しい薬が蔓延し始めてるのは確かですね」

「でも手当たり次第って訳でもなさそうね」

「何か陰謀ぽくってわくわくしますね~」


 まだ他の灰の検査が出来ていないので、 因果関係があるのか無いのか分からないが、 泥の中で手探りで探していた何かが手に触れたように感じる。

 あの後も事情聴取をしたが、 何も得れずにシグナルに戻った。

 俺はタブレットを開き今回の鬼の灰から出た成分の事で報告書を上層部に送る。

 少しでも情報を交換して鬼になる原因が分かれば鬼になってしまうことも防げるかもしれない。

 あいつの死因も分かるかもしれない。

 だが、 報告書が反映されずに、 エラーが出る。

 すると会議室に来るようにとメッセージが来る。

 報告書の事だろうと思い、 自室をでる。


「失礼します」

「急に悪いな」


 誠局長はタブレットを見つめながら流れ的に出てきた言葉を言う。

 いつもより険しい顔つきで、 こちらを見る。


「薬の報告書を見たが……」

「その報告書がエラーで見れないんです」

「こちらで閲覧制限をかけた」

「何故ですか?」

「確実ではない情報を、 公表するには早すぎると判断したからだ」

「ですが、 可能性はあると思い、 報告書を書いたんですが……」

「可能性ではだめだ、 確実でない情報は、 混乱を招くだけだ」


 タブレットから目を離して、 いつもは優しい、 ()()()()瞳が鋭く俺を切っていた。

 これ以上何も言わせない重圧がここにはあった。

 俺は尻込みをして会議室を去った。

 あんな誠局長は、 初めて会う。

 自室に戻り煙草に火を点ける。

 重たい煙が肺いっぱいに膨らみ肺を汚して出ていく。

 その行為になんら意味はない。

 研究室に行こうと思い立ち、 煙草を灰皿にたばこの頭部分を念入りに潰して、 火種を失くした煙草は一本の煙を伝い部屋に充満させる。 
























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ