山積みな問題
俺は茜たちがいる「ヌーク 修理所」に向かう。
晶が火傷を負ったので、 その様子を見に行く。
接近戦が得意な晶は傷が絶えないのは仕方なかったし、 ヌークは人口皮膚を纏っているので、 皮膚の交換をすればいいだけだが、 修理所に行く足は重たく、 鉛を引きづっている感じだ。
修理所に着き、 デバイスに手をかざす。
「シママキ部隊長の入室を許可します」
自動で開けられた扉を抜けて、 中に入る。
中は人口の明かりが照らす部屋の奥で、 晶が処置されているのが見えた。
「お邪魔します」
「隊長!あっち向いててよ!」
上半身裸の晶が体を隠すように背中を向ける。
「あんた!ほんとに女心がわかんないやつね!」
「須藤さんだって男勝りじゃないですか」
「いいから!座って待ってなさい!」
カーテンを閉められ、 遮断される。
ヌークにも感情があるように、 羞恥心の気持ちもあるのだ。
俺は欲情する感情が薄いので、 ヌークを色眼鏡で見ていないが、 中には性処理として使う隊長もいるようで、 議題に上がるほどシグナルでは問題視されている。
「隊長は少し女心の勉強したらどうですか~?」
「未来は大丈夫だったか?」
「私は大丈夫ですけど~」
「私らは晶程、 傷を負っていないので大丈夫です」
未来はつまらなさそうに足をバタバタさせて、 座っている。
それに付け加えるように、 茜は本を読みながら答える。
二人の様子を見て、 晶の治療が長いのだと分かる。
「はい終わったよ~」
「やっと終わった!」
いつもの姿で出てきた晶は傷一つもなくなっていた。
「ヌークの傷は隊長の失態だと思えっていっつも言ってるでしょ!」
「接近戦が得意な晶に、 言ってくれ」
「私の大好きなヌークを雑に扱うなんて……」
須藤さんはヌークへの愛が偉大な方で、 ヌーク製作にも携わっており、 優秀な研究員だ。
隊長らには「鬼より怖い」と言われているのは、 本人はわかっているのか否か。
須藤さんはタブレットを操作して「修理完了」の通知を俺に送る。
「出動可能だな?」
「僕はおっけー」
「大丈夫です」
「まだお休みしたいですけど~いいですよ~」
タブレットで「出動可能」と項目を押して、 待機中と表示される。
シグナルは出来るだけ電子で解決されるように作られており、 会議などが未だにリモートにならないのが、 不思議だった。
「自室に戻るが、 お前らはどうする?」
「隊長の部屋一択でしょ!」
よくも飽きずに俺の自室に居られるなといつも思う。
俺たち四人は自室に戻り、 各々好きな事をするだけの時間が尊いものだと再認識したのは、 島根隊長の死からだ。
あれから二番隊は、 島根隊長の記憶を抹消され新しい隊長の元、 任務に向かっている。
俺は、 過去の報告書を読み漁る。
鬼が出現してから行方不明の数が増えた。
鬼に殺されて鬼となり、 俺らに討伐されて灰になってしまうため身元が分からずにいるためだ。
運よく所持品が落ちていたり、 するのは幸運と言う位珍しいが、 遺体がないので生きている期待を込めて、 行方不明届を出す身内が多い。
「また報告書読み漁ってんの?」
「お前は少し茜を見習って読書でもしてろ」
「僕、 漢字読むの嫌いだもん」
「なら、 絵本読め」
晶はそっぽを向いてゲームに戻る。
俺も読書がしたいが、 報告書を読むことが止めれなかった。
するとタブレットから出動命令の音がなる。
すぐに出動可能ボタンをクリックする。
報告書も大事だが現場でしか得れない情報がある。
「行くぞ」
「了解!」
出現場所は墨田区押上の住宅地で鬼が発生したとの報告を得る。
新宿からだと二十五分はかかる。
サイレンを鳴らしていくので、 十五分で着けば早い方だろう。
その間に規制線をどれだけ速やかに張れるかが勝負になる。
鬼を増やさないだけでも、 俺たちは任務に入りやすくなる。
あとは、 共食いをさせない、 それが任務成功率をあげるだろう。
「よし、 下りるぞ」
「意外と早かったね」
「サイレン鳴らして、 来ればこのくらいだろう」
車の前方にあるデバイスに手をかざす。
「シグナル本部シママキ隊長を受理 ヌーク 武器の所持を認めます」
機械的なアナウンスと一緒に収納されていた武器が出てくる。
茜たちは各自自分の武器を持ち、 セーフティを外す。
規制線の張っている見守り型ロボットにも手をかざす。
「シグナル本部所属、シママキ部隊長の入室を許可します」
「行くぞ!」
「了解!」
見たところ鬼は一体しかおらず、 通路の真ん中で棒たちに立っているだけだった。
早いとこ片付けて被害を減らそう。
「待って!」
見守り型ロボットからブザーが鳴り「速やかに避難してください」とアナウンスが流れている中、 俺の足に一人の四十代だろうかご婦人がしがみ付いてきた。
「あの鬼は私の子供なんです!殺さないでください!」
あぁなんて難しい問題が多いのだろう。




