後方撹乱
叶総理はI3長官の報告内容に興味を示し、発言を許可した。
I3長官はヨーロッパ合衆国が制圧した、中東アフリカ諸国のレジスタンス組織と接触出来た事を明かした。その報告は叶総理としても朗報であった。というよりも、それはI3に対して叶総理が直々に命令した事でもあった。
トルコが制圧された時に叶総理はI3に対して、トルコ地域におけるレジスタンス組織の捜索を命令した。ヨーロッパ合衆国による侵攻を受け核攻撃まで受けて、無理やり併合されたのである。レジスタンス組織が誕生していてもおかしくない、として叶総理はI3を動かした。
だがトルコ地域にレジスタンス組織は出来ていなかったのである。核攻撃により国土と国民の8割を失い、ある意味で無気力感に包まれていたのだ。その為にヨーロッパ合衆国に対抗する気概が無く、併合されてもレジスタンス組織が出来なかった。
そしてヨーロッパ合衆国は中東アフリカ諸国へと侵攻した。叶総理は当初はトルコでの結果もあり、I3は投入していなかった。だが途中で対ヨーロッパ合衆国大同盟が成立する等の情勢の変化もあり、中東アフリカ諸国でのレジスタンス組織の誕生が予想された。それを受けて叶総理は当初の方針を変更し、2048年9月15日にI3に対して捜査活動の命令した。
その5日後にアフリカ大陸全土が陥落した為に、I3は更に捜査活動を活発にさせた。そしてその努力は実を結びI3は中東アフリカ地域に於いて、レジスタンス組織を発見したのである。
活動していたのは中東地域では2つ、アフリカ地域では5つ、合計で5つのレジスタンス組織が成立していた。その5つのレジスタンス組織全てに接触し連絡員を常駐出来たと、I3長官は報告したのである。
その報告を聞いた叶総理は、現状では最大限に利用価値があると判断した。ロシア連邦の第1次反攻作戦はヨーロッパ合衆国の『弾道ミサイル飽和攻撃』により失敗してしまった。
ヨーロッパ合衆国のロシア連邦への侵攻を逸らすには、新たな戦線の構築が最優先であった。だがいきなりアフリカ大陸やヨーロッパ合衆国の大西洋からの上陸作戦が実行出来る筈も無かった。
それならばレジスタンス組織に対して支援を行い、ヨーロッパ合衆国への後方撹乱を実行出来るのは現状打破には最適であった。
叶総理はレジスタンス組織への支援計画は整っているのか尋ねた。I3長官は不正規戦を支援する為にI3内で会議を行っていると語った。それを聞いた叶総理は計画が決定次第、即座に実行するように命令した。
その作戦範囲は無条件とし今ここで実行命令を出す事から、後は全て事後報告で問題無いと断言したのである。
I3長官は叶総理の命令を受けて即座に行動を開始した。そこへ関係部署や軍需庁に指示を出していた国防大臣が、叶総理に2つの提案を行った。
まずはレジスタンス組織への支援として、軍の特殊部隊を不正規戦指導の為に派遣を提案したのである。
I3の諜報員も不正規戦指導が出来る為に派遣されるが、その規模は大きい方が効果的である。もちろん規模が大きくなればヨーロッパ合衆国に察知されるリスクは高くなるが、重要なのは不正規戦指導に掛かる時間であった。
それを短縮し大規模にする為に、軍の特殊部隊も派遣するのが効果的であり。指導が終わればそのまま特殊部隊にも中東アフリカ地域で、直接不正規戦の実行をさせる事も出来る。そのように国防大臣は説明したのであった。
その説明を受けて叶総理も一理あるとして、軍の特殊部隊派遣も許可した。そして国防大臣にもう1つの提案について尋ねた。
国防大臣は『島嶼防衛弾道ミサイル』による中東アフリカ地域への後方撹乱を兼ねた攻撃を提案した。その提案は叶総理のみならず、閣僚達も想定外の提案であった。
島嶼防衛弾道ミサイルは大日本帝国が新世紀日米戦争で勝利し、アメリカ合衆国からの島嶼割譲と太平洋島嶼国併合により、太平洋一帯が大日本帝国の物になった事により開発された。仮に太平洋地域へ仮想敵国が侵攻してくると、大日本帝国海軍連合艦隊と空軍が迎撃を行うがその出撃にはある程度の時間が必要であった。侵攻は無くても普段からの警戒活動に於いても空白地域が生じる事もあった。
それらを根本的に解決する為に2014年からの第6次国防力整備計画で、極超音速ミサイルの地上発射型が島嶼防衛弾道ミサイルとなっていた。第6次国防力整備計画で実用化されたのは、射程1000キロ未満の短距離弾道ミサイル程度の射程であったが、第9次国防力整備計画で実用化された現在配備されているのは射程10000キロを誇る大陸間弾道ミサイルに匹敵する『46式島嶼防衛弾道ミサイル』と、射程5000キロを誇る中距離弾道ミサイルに匹敵する『44式島嶼防衛弾道ミサイル』の2種類であった。
46式島嶼防衛弾道ミサイルは大日本帝国本土に配備され本土から島嶼部を防衛する為に、44式島嶼防衛弾道ミサイルはハワイ府や大宮府・南洋府に配備され防衛を行う事になった。その島嶼防衛弾道ミサイルを利用して中東アフリカ地域に攻撃を行うのが、国防大臣の提案であった。
その提案は叶総理のみならず閣僚達にも驚くべき内容であった。島嶼防衛弾道ミサイルを攻撃に転用するという、先入観にとらわれない柔軟な発想であった。叶総理は島嶼防衛弾道ミサイルの使用も許可し、直ぐに作業に移るように命令したのであった。




