体制立て直し
ロシア連邦軍の防衛線はヨーロッパ合衆国の燃料気化爆弾攻撃により、開戦から僅か1日で崩壊した。人員の損失もロシア連邦陸軍は膨大な数に上り、50個師団が完全に失われた。
それに対してヨーロッパ合衆国陸軍は人造人間師団50個と、機甲師団10個で済んでいた。しかも人造人間の大量生産は行われており、ヨーロッパ合衆国では大規模な人造人間師団編成が着々と行われていた。
全てに於いてロシア連邦の被った被害は甚大であった。民間人の死傷者数も大きく、侵攻序盤の勝者は紛れも無くヨーロッパ合衆国であった。
大日本帝国では叶総理が国防省地下の国家軍事指揮センターで、軍の動向について説明を受けていた。
叶総理は国家軍事指揮センターに来る前に、亜細亜条約機構加盟国の各首脳と『ホログラム会談』を行っていた。それによりまずは陸軍と空軍の派遣先について合意が成された。
合意を受けて軍の規模が大きい大日本帝国・中華連邦・インド・アメリカ西岸連邦が、ヨーロッパ合衆国による侵攻を受けるロシア連邦に派遣される事になった。とにかくヨーロッパ合衆国は人造人間師団という大量生産による兵力を投入出来る以上は、大規模な援軍をロシア連邦に派遣するしか無かった。
そしてそれ以外の亜細亜条約機構加盟国の陸軍と空軍は、イランのもう一つのヨーロッパ合衆国国境線に派遣される事になった。
大日本帝国・中華連邦・インド・アメリカ西岸連邦に比べると他の加盟国は軍の規模は小さい為に、合同しての派遣となったのである。亜細亜条約機構の現時点での最優先事項は、ヨーロッパ合衆国の侵攻を食い止める事にあった。とにかくロシア連邦への侵攻を食い止め、反撃を行う事が重要であった。
海軍の派遣も早期に行う事が決定され、各国海軍は出撃準備が早められた。太平洋は事実上聖域となっており、ヨーロッパ合衆国海軍に対抗する為に、亜細亜条約機構加盟国の海軍は全て、地中海と大西洋を目指す。ロシア連邦海軍が北方艦隊を用いてベーリング海峡を封鎖しており、南北アメリカ大陸諸国の海軍が合同でドレーク海峡を封鎖しており、亜細亜条約機構加盟国海軍は太平洋をガラ空きにして出撃する事になったのである。
叶総理はそのような合意を経て国家軍事指揮センターに来ていた。そして軍の動員体制を確認し、改めて出撃を命令したのである。
出撃する大日本帝国軍に於いて、目玉と言える秘密兵器が大日本帝国陸軍に配備された『二足歩行機動兵器』であった。国防省国防技術研究本部が主導し、国内軍需企業が共同で開発した秘密兵器であった。
叶総理は改めて『二足歩行機動兵器』についての性能を尋ねた。その質問に陸軍参謀総長が直々に説明を始めた。
『二足歩行機動兵器、陸軍に於いては[48式二足歩行戦車鋼龍]の正式名称で呼ばれるのが、第三次世界大戦にて大日本帝国陸軍が投入した秘密兵器であった。同時期にヨーロッパ合衆国は陸軍に於いて人造人間を投入しており、対立する二大超大国は秘密兵器を互いに開発していたのであった。
だが大日本帝国陸軍は戦車等の機甲車輌に変わる秘密兵器として開発しており、ヨーロッパ合衆国陸軍の人員補填の為の人造人間とは趣旨が違っていた。その違いはヨーロッパ合衆国が1国で大日本帝国等の亜細亜条約機構と対峙しないといけないのに対して、大日本帝国は亜細亜条約機構という同盟諸国がいたからである。しかもその国々に世界一・二の人口を誇る、中華連邦とインドがいる為に大日本帝国陸軍は人員補填をその二国に任せられた。
それにより数が多いなら強力な兵器で捻り潰せば良い、という脳筋的なドクトリンを大日本帝国陸軍に芽生えさせたのであった。その結果実用化されたのが、[48式二足歩行戦車鋼龍]となった。
全長7.34メートル、全幅6.12メートル、全高10.49メートルの大きさを誇る。武装は20ミリレーザーガトリングガン4門と185ミリレーザー砲発射機2基を装備していた。構造的に二足歩行をする為に当然ながら全高の半分は脚が占めており、超電磁砲を装備すれば砲弾の搭載数が数発だけとなってしまった。
そうなれば20ミリレーザーガトリングガンだけしか持続して攻撃出来ない為に、大規模電池の搭載数を増やして185ミリレーザー砲発射機を装備したのである。これにより航続距離のみならず継戦能力も理論上無限を達成したのである。
遠隔操縦型の無人兵器であり45式戦車よりも電磁装甲は強力な物が装備され、機甲師団に於いて機動力のある盾の役割も担われていたのであった。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争』より一部抜粋
陸軍参謀総長の説明に、叶総理は満足そうに頷いた。そして国防大臣以下、軍首脳陣を見渡すと口を開いた。
『ヨーロッパ合衆国との第三次世界大戦は長く厳しい戦いになる筈ですが、必ずや勝利するように全力を出して下さい。』
叶総理の力強い言葉に、全員が気合いを入れた。




