アフリカ大陸陥落
2048年9月20日。アフリカ大陸最後の国南アフリカがヨーロッパ合衆国に占領された。これによりアフリカ大陸全土が陥落した事になった。人類史上大陸全土が1国により占領されるのは初めての事態であった。だがアフリカ諸国は亜細亜条約機構と南北アメリカ大陸諸国に、貴重な時間稼ぎをしてくれたのである。
大日本帝国は叶総理が閣議を招集していた。アフリカ大陸が全土陥落した以上は、ヨーロッパ合衆国の次なる侵攻は亜細亜条約機構か南北アメリカ大陸になる。地理的にいきなりの大西洋を越えて南北アメリカ大陸に侵攻するとは考えられないので、順当にいけば亜細亜条約機構加盟国のロシア連邦侵攻と想定された。
それは国防大臣も状況説明に於いて明言しており、ロシア連邦侵攻はある種既定路線と言えた。そんな中で叶総理は、改めて国防大臣に尋ねた。『勝てるのか?』他の閣僚も気にはなっていたが、今更面と向かって国防大臣に聞くタイミングを失っていたので、叶総理の直球過ぎる質問に興味を示していた。
尋ねられた国防大臣は、『新世紀日米戦争より時間はかかりますが、勝てます。』そう自信満々に答えたのである。その答えは閣僚達を安堵させるのに十分な返事であった。
国防大臣は更にその根拠となる各軍の兵備について、軍のトップ直々に説明した方が良いとしてまずは軍令部総長に話を振った。
突然叶総理を筆頭に閣僚達全員の視線を受ける事になった軍令部総長だが、そこは海軍大将として狼狽える事は無く冷静に説明を始めた。
『大日本帝国軍とはどのような規模を誇っていたのか。新世紀日米戦争に勝利した事により、名実共に世界最強という称号を手に入れた大日本帝国軍は、その後も驕り高ぶる事は無く地道に戦力増強に励んでいた。
まずは海軍である。新世紀日米戦争で当時不敗を誇ったアメリカ合衆国海軍空母戦闘群を、完膚無きまでに叩き潰した。その勝利により制海権は大日本帝国の確固たるものになったのである。新世紀日米戦争後のヨーロッパ連合、ヨーロッパ合衆国との新世紀冷戦で大日本帝国海軍連合艦隊は凄まじい規模にまで拡大した。
イージス原子力戦艦大和級とイージス原子力空母赤城級を主力とし、強力な艦艇を多数建造していた。その艦艇により機動打撃群を構成し、15個も保有していたのである。ヨーロッパ合衆国海軍は機動部隊を20個保有していたが、個艦性能の差から大日本帝国海軍連合艦隊機動打撃群の方が強力であるというのが、世界各国の軍事関係者の分析であった。その結果は新世紀最終戦争で見せ付けられた。
空軍は大日本帝国の技術力を結集して実用化された、45式ステルス戦闘攻撃機閃光・47式ステルス戦略爆撃機飛鳥・47式ステルス掃射機飛鳥改を主力としていた。
45式ステルス戦闘攻撃機閃光は機動性・ステルス性、そして格闘性が極めて高く、世界最強といわれる程の性能であった。その性能の高さから調達費は高額になったが、大量取得による量産効果で単価は低下していた。それはヨーロッパ合衆国空軍が迷走し戦闘攻撃機を2機種保有する事になったのとは、大きな違いとなっていた。
特に大日本帝国空軍で目を引くのは47式ステルス掃射機飛鳥改であった。掃射機とはかつて大東亜戦争で開発した富嶽に着想を得ていた。富嶽はアメリカ合衆国本土空襲を目指して計画され、爆撃機の他に輸送機や掃射機型が計画されていた。その富嶽掃射機型が新世紀冷戦に於いて、47式ステルス掃射機飛鳥改として実用化されたのである。
機体のウェポンベイに20ミリレーザーガトリングガンを88門も格納しており、驚異的な連射速度と破壊力を有する機体になっていた。しかもウェポンベイに格納している事により、レーザーガトリングガンと大規模電池を取り外せば容易に47式ステルス戦略爆撃機飛鳥として運用出来た。この汎用性の高さが47式ステルス戦略爆撃機飛鳥と47式ステルス掃射機飛鳥改の最大の利点でもあった。
陸軍はまさに外征陸軍として整備されており、ヨーロッパ合衆国侵攻による亜細亜条約機構加盟国への出撃が、常に想定されていた。それはヨーロッパ合衆国との地理的距離から太平洋が聖域となっており、海軍連合艦隊と空軍により大日本帝国本土にヨーロッパ合衆国軍侵攻してくるとは、事実上不可能といえたからである。
当然ながら最悪の事態に備えるのは軍の使命でもあるので、本土防衛師団は変わらず配備されたが陸軍の8割は外征が前提であった。その為に軍需物資は常に大量に備蓄されており、国防省外局の軍需庁指導により軍需企業も大量生産ラインを常に整備していた。
それは当然ながら海軍・空軍・海兵隊にも共通しており、軍需企業の生産ライン維持の為に半年に1回は大規模な軍事演習が行われていた。亜細亜条約機構合同軍事演習も年に1回は行われる為に、生産ラインは大規模なものが維持されていたのである。
海兵隊は言わずと知れた殴り込み部隊であり、大日本帝国海兵隊は世界最大の規模を誇る海兵隊であった。ヨーロッパ合衆国は敢えて海兵隊を保有せずに陸軍が上陸作戦も行う為に、大日本帝国海兵隊が世界最大となっていた。
海軍連合艦隊が保有する強襲揚陸艦とドック型揚陸艦はレーザー核融合炉を搭載する原子力艦である為に、驚異的な速さで海外展開が可能であった。』
広瀬直美著
『大日本帝国軍総解剖』より一部抜粋
海軍軍令部総長・陸軍参謀総長・空軍統合総長・海兵隊総長の説明が終わると、閣僚達は一様に安心していた。叶総理は軍の働きがあってこそ国が存立出来るとして、感謝の言葉を述べていた。
そして遂にヨーロッパ合衆国は亜細亜条約機構に矛先を向けて来たのである。
次回いよいよ開戦です。長かったですね……




