最後通牒
『対ヨーロッパ合衆国大同盟結成』このニュースは世界中を駆け巡った。かつてグレートブリテン王国を中心とするヨーロッパ諸国が、フランス第一共和政およびフランス第一帝政の打倒を目的として結成した対仏大同盟のように、1つの脅威に対して大同団結した同盟であった。だがかつての対仏大同盟とはその規模が大きく違っていた。
ヨーロッパ合衆国以外の世界が一致団結して、対ヨーロッパ合衆国大同盟に参加したのである。これは人類史上初めての功績でもあった。対ヨーロッパ合衆国大同盟に参加していないのは、バチカン市国だけという有様であった。
だがそれ以外の世界は1国たりとも漏れずに、対ヨーロッパ合衆国大同盟に参加したのだ。この為にヨーロッパ合衆国は世界的に孤立する事になり、全世界を敵に回す結果となった。だがそんな状況であってもヨーロッパ合衆国は平然としていた。地球統一政府設立という明白なる使命を果たす必要があったからである。シャーロット大統領は対ヨーロッパ合衆国大同盟結成を受けて、ドイツ州ミュンヘンの大統領官邸で対策会議を招集した。
世界が敵になったヨーロッパ合衆国はどう行動するべきか。これが対策会議の最大の議題であった。シャーロット大統領は今回の対ヨーロッパ合衆国大同盟結成を受けて、地球統一政府設立の目標は完遂されなければならない明確な目標になったと断言した。既に中東は占領し、アフリカ大陸への増援部隊派遣は順調に行われていた。
更には人造人間師団の編成も滞りなく行われており、人造人間の大量生産体制も完璧に整っていた。全ては人類史上初の地球統一政府設立という目標の為であった。だがその代償は大きかった。あまりにも大きかった。その為の対策会議なのであった。
外務大臣は、対ヨーロッパ合衆国大同盟結成による世界的包囲網形成について説明を行っていた。ある意味でヨーロッパ合衆国対全世界という単純化されたが、歴史上類を見ない状況であるのは確かであった。
エネルギー産業大臣は、中東アフリカ諸国侵攻に備えて資源は5年分の備蓄をしておりあらゆる産業に影響は無い、と言い切った。5年分も備蓄があれば何も問題は無かった。既に中東は占領しアフリカ大陸侵攻に全力を挙げている為に、アフリカ大陸の占領も時間の問題であった。
国防大臣は現状の軍の配備について説明を始めた。中東地域を占領した事により、アフリカ大陸への増援を派遣している事。中東地域は人造人間師団100個と侵攻当初の50個師団、そして空軍を派遣して亜細亜条約機構に備える事。現状では対ヨーロッパ合衆国大同盟は結成されただけであり、未だに軍事行動を行っておらずそこに付け入るスキがある事。対ヨーロッパ合衆国大同盟が体制を整える前にアフリカ大陸を全土制圧し、戦線を1つでも減らすのが最重要課題だと国防大臣は断言した。
確かにそれは大事な問題であった。全世界が敵になった現状では戦線を減らすのは無理難題であったが、アフリカ大陸を制圧してしまえば大西洋とインド洋が広がっているのである。ヨーロッパ合衆国も大西洋・ノルウェー海・北極海と海洋に面しており、アフリカ大陸を制圧すれば当座の戦線は、亜細亜条約機構加盟国のみの戦線になるからであった。国境線でいえばイランとロシア連邦だけになる。
ベラルーシとウクライナ・アゼルバイジャンはヨーロッパ合衆国成立による圧力の増大から、旧ソ連時代と同じくロシア連邦構成国になっていた。
中南米諸国・カナダ・アメリカ合衆国に渡洋作戦を行う軍事力が無い現状では、アフリカ大陸の制圧はヨーロッパ合衆国の戦略上最優先になるのは当然でもあった。
国防大臣はアフリカ大陸の侵攻兵力は当初の80個師団に中東に派遣した100個師団を増援として振り替え、人造人間師団も100個派遣すると語った。この兵力を海軍と空軍が万全の体制で支援し、3週間でアフリカ大陸は制圧すると言い切ったのである。
それを聞いたシャーロット大統領は2週間でやるように、国防大臣に命令した。対ヨーロッパ合衆国大同盟にあまり時間を与えずに、アフリカ大陸全土制圧の目処が付くと、ロシア連邦とイランに対して全面攻撃を仕掛けるように付け加えた。
国防大臣は一瞬驚いたが、ロシア連邦とイラン侵攻は計画されていた為に、それを実行する事と答えた。その返事を聞いたシャーロット大統領は全世界に最後通牒を通告すると宣言し、対策会議を終了したのであった。
シャーロット大統領は全世界に向けた演説を開始した。
『全世界の皆さん、ヨーロッパ合衆国大統領として最後通牒を通告致します。対ヨーロッパ合衆国大同盟という無法極まる集団に参加し、我が国と敵対する事を明言したからにはそれ相応の覚悟があると受け取れます。ヨーロッパ合衆国は全世界と戦う覚悟があります。それは地球統一政府設立という最終目標を達成する為に必要だからであります。その目標の為には、手加減する事は無いでしょう。あらゆる手段を用いて地球統一政府設立を目指すと断言します。
対ヨーロッパ合衆国大同盟に参加した国々には等しく攻撃し、それは差を付けないと宣言します。また対ヨーロッパ合衆国大同盟は未だに体制が整っていないと見受けられ、軍事力行使をするには時間がかかると判断します。そこで対ヨーロッパ合衆国大同盟から離脱する国が現れると、我が国はその国に対して攻撃しないと約束します。全世界の賢明な判断を期待しております。』




