対ヨーロッパ合衆国大同盟
2048年9月1日、亜細亜条約機構本部にて緊急総会が開催された。だがその緊急総会に中東諸国は参加する事は出来なかった。
『中東諸国はヨーロッパ合衆国の凄まじい規模の兵力に文字通り、押し潰されたのである。叶総理の対抗演説に中東アフリカ諸国が賛同した事に怒ったシャーロット大統領は、国防大臣に侵攻を加速するように命令した。
命令を受けて国防大臣は広大なアフリカ大陸より中東諸国を優先する事にし、中東戦線に100個師団を増援として派遣すると共に秘密兵器の投入を行ったのである。秘密兵器とはヨーロッパ合衆国が開発した[遠隔操縦型人造人間]であり、ヨーロッパ合衆国が亜細亜条約機構に劣る人的資源を補完する為に実用化されたものであった。AIを搭載せずに後方基地から遠隔操縦する為に、1体の製造単価は安く済んだ。その為にヨーロッパ合衆国は遠隔操縦型人造人間を50個師団分も投入したのである。1人の人間で1個師団分の人造人間を操作する為に、費用対効果が凄まじい事になっていた。
侵攻は人造人間師団を前面にしてのものとなり、中東諸国はその恐るべき陣容に面食らった。SF映画の光景が広がっていたのである。無骨な人型のロボットが走って来ている、とは初めて人造人間に対峙した中東諸国の陸軍から発せられた通信である。その通信を受けた上級司令部は最初は内容を疑った。だがその後直ぐに映像が届くと、その光景は戦慄するものであった。
ロボットが銃を撃ちながら走って来ているのである。それを見た者達は暫し唖然とした。これが夢か現実か判断出来なかったのである。
しかも耐久性は中々のものであり、頭部や心臓部に銃撃を受けても当然ながら止まることは無かった。流石に超電磁砲やミサイル・爆弾には破壊されていたが、それを上回る人海戦術であった。その砲撃や爆撃を掻い潜り陣地に乱入して来た人造人間に対しては、銃撃戦となったがやはり人造人間の耐久性は高かった。1人が自動小銃の弾倉を撃ち尽くしても、人造人間は破壊出来なかったのである。
3人がかりで自動小銃の弾倉を撃ち尽くして、ようやく破壊出来る有様であった。分隊支援火器の軽機関銃や車載用重機関銃ならある程度の射撃で破壊出来たが、効率は凄まじく悪かった。
その為に人造人間の破壊よりも兵士の死亡者数は桁違いに多くなり、陣地はあっという間に制圧されてしまったのである。その光景は中東諸国全域で繰り広げられ、ヨーロッパ合衆国陸軍150個師団と人造人間の50個師団は空軍の支援を受けながら驚異的な速さで侵攻を続けた。
精強を誇るイスラエル軍は人造人間師団の前に敗れ、イスラエルのみならずヨルダンも僅か1日で占領された。その後ヨーロッパ合衆国はシリア・イラク・クウェート・サウジアラビア・イエメン・バーレーン・カタール・オマーン・アラブ首長国連邦に次々と侵攻し、亜細亜条約機構緊急総会が開催される2048年9月1日までに占領してしまった。圧倒的な侵攻速度に世界は大いに慌てた。
特に大日本帝国はイスラエルとヨルダンが1日で陥落した事から、偵察衛星を総動員して事態の把握に努めた。そして偵察衛星が人造人間を捉えると衝撃を受けたのである。まさかの事態であった。国防省は早速解析を進めたが、それを上回るヨーロッパ合衆国の侵攻速度であった。
ある程度人造人間の性能を推測値ながら把握した頃には、ヨーロッパ合衆国の侵攻はオマーンにまで達していたのである。説明を受けた叶総理は恐るべき性能に表情を曇らせた。
だがその性能は現に見せ付けられているのである。叶総理は国防省に何ならかの対抗策を考案するように命令を下し、亜細亜条約機構本部へ向かった。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争』より一部抜粋
開催された亜細亜条約機構緊急総会で叶総理はまず、ヨーロッパ合衆国が投入した人造人間について情報を提示した。国防省が推測値ながら性能分析を行った結果も提示し、この事態は危機的状況であると断言した。
人的資源を考慮しない恐るべき人海戦術が可能になり、ヨーロッパ合衆国は加速度的に侵攻のペースを早める事が想定されたからだ。そこで叶総理は亜細亜条約機構と中南米諸国・カナダ・アメリカ合衆国・アフリカ諸国が一致団結して、『対ヨーロッパ合衆国大同盟』を今すぐにでも締結するべきだと訴えた。
もはやヨーロッパ合衆国は世界の敵であり、このまま座して死を待つ訳にはいかない。ヨーロッパ合衆国以外の世界が協力して立ち向かうべきだと、叶総理は声高に宣言した。
その叶総理の『対ヨーロッパ合衆国大同盟』に各国はもはやそれしか無いと判断した。既に自国の議会は『対ヨーロッパ合衆国大同盟』を承認しており、人造人間という手段をヨーロッパ合衆国が手にした現状では一致団結して対処するしか無かった。
そして2048年9月1日。亜細亜条約機構・中南米諸国・カナダ・アメリカ合衆国・アフリカ諸国の国々は『対ヨーロッパ合衆国大同盟』を締結。ヨーロッパ合衆国以外の世界が一致団結した瞬間であった。




