対応協議
ヨーロッパ合衆国による突然の中東アフリカ諸国侵攻は、世界に衝撃を与えた。まさかの事態であった。ヨーロッパ合衆国は味方である中東アフリカ諸国に侵攻を開始したのだ。侵攻を受けたアルジェリア・リビア・エジプト・キプロス・レバノンの軍は壊滅状態になり、早くも上陸作戦と空挺降下が行われていた。内ゲバ状態になった戦争に、世界各国は対応に追われた。
大日本帝国の叶総理はヨーロッパ合衆国による中東アフリカ諸国侵攻の一報を聞くと、首相官邸地下の危機管理センターに急いで駆け付けた。そこで軍担当者から説明を受けたが、事態は深刻であった。ヨーロッパ合衆国による全面的侵攻であり、矢面に立たされたアルジェリア・リビア・エジプト・キプロス・レバノンの軍は壊滅状態だと説明されたのだ。憂慮すべき事態だった。トルコはヨーロッパ合衆国の脅威により防衛線構築という国防体制を整えていたが、中東アフリカ諸国はヨーロッパ合衆国という頼もしい味方がいる為に地中海沿岸には一切の防衛線を構築していなかった。
当然といえば当然の措置であろう。防衛線はアフリカ諸国は大西洋とインド洋沿岸に構築され、中東諸国はアラビア海沿岸とロシア連邦・イラン国境線に構築されていたのである。
中東アフリカ諸国にとっては全くの、完全に予想外であろう。味方に侵攻されるとは思っていなかった筈である。だが現にヨーロッパ合衆国は侵攻しているのだ。事態の深刻さに、叶総理は緊急閣議を招集する事にした。
招集された緊急閣議に於いて叶総理は、今回のヨーロッパ合衆国による侵攻にどう対処するべきか話し合うと断言した。閣僚達はヨーロッパ合衆国の侵攻にかなりの衝撃を受けていた。仲間同士で戦争を始めたのだ。これは驚くべき事態だった。
国防大臣は改めてヨーロッパ合衆国による侵攻の被害について説明を始めた。圧倒的ともいえるヨーロッパ合衆国軍の攻撃により、アルジェリア・リビア・エジプト・キプロス・レバノンの軍は壊滅状態である事。軍事施設のみならずインフラも全滅し、上陸作戦と空挺降下が開始された事。そう言って国防大臣は偵察衛星が捉えた映像を映し出した。
瓦礫の山と化した沿岸部と都市部が映されており、上陸作戦が行われているのが強襲揚陸艦等から確認出来た。しかも圧倒的な数のパラシュートが展開しているのが映されており、空挺降下も大規模に行われているのが確認出来た。
国防大臣はヨーロッパ合衆国と中東アフリカ諸国の軍事力の差から判断するに、核攻撃を行うまでも無く比較的短期間で占領出来ると語った。そう言われた閣僚達はざわめいた。だが財務大臣はヨーロッパ合衆国の目的は何なのかと呟いた。無闇矢鱈と占領地を拡大しトルコのように占領しても、反乱活動や抵抗運動が巻き起こればそれへの対処に難儀するのでは無いか、そう語ったのである。
ちなみにトルコは核攻撃により大多数の国民が死亡し、ヨーロッパ合衆国が占領していたトルコのヨーロッパ側の地域は、核攻撃という圧倒的な殺戮の前に戦意を喪失し反乱活動や抵抗運動は皆無の状況であった。それはI3の諜報員を潜伏させる事で、確認済みであった。だが併合したトルコは核攻撃によら壊滅的被害を被った為に、その再建に膨大な復興費が必要となった。それもヨーロッパ合衆国が中東アフリカ諸国には核攻撃を行わない理由だと思われていた。
財務大臣の疑問は的確な指摘であった。ここまでヨーロッパ合衆国が早急に侵攻する理由を測りかねていたのである。古来より占領した地域を安定的に統治出来た方が、稀なのである。常に反乱活動や抵抗運動は巻き起こり、それに対処して厳しく取り締まりを行えば、更なる反乱活動や抵抗運動を生み出す負の連鎖が発生する事になった。
そこで外務大臣はトルコに行ったように、中東アフリカ諸国に軍事支援を行えないか提案した。敵の敵は味方の理論で上手く行けば中東アフリカ諸国への侵攻を
、かつてのベトナムやアフガニスタンのように泥沼化させてヨーロッパ合衆国を疲弊させる事が出来るかもしれない、そう外務大臣は言ったのである。
確かにそれは実現すれば、最大限活用出来るかもしれない提案であった。だが外務大臣の提案には重大な落とし穴があった。
陸軍兵器の互換性がありません。国防大臣の言葉に閣僚達は黙り込んでしまった。そうなのである。大日本帝国とヨーロッパ合衆国では新世紀冷戦に於いて兵器の差別化が行われ、かつてはNATO規格で互換性があったが現在は互換性が無かったのである。大日本帝国陸軍は主力戦車は125ミリ、自走砲・機動砲は185ミリ、自走多連装ロケット砲は288ミリとなっており、ヨーロッパ合衆国陸軍は主力戦車は120ミリ、自走砲・機動砲は170ミリ、自走多連装ロケット砲は270ミリであった。
中東アフリカ諸国は当然ながらヨーロッパ合衆国の規格である為に、軍事支援を行ってもトルコのように弾薬ミサイル等の供与だけに留まらず、兵器の直接供与が必要になるのである。そうなると必然的にトルコへ行った軍事支援より、更に大規模にならざるを得なかった。
叶総理は国防大臣に対して、兵器の直接支援を行う事が可能か、兵站支援も可能か国防省で協議するように命令した。更には財務大臣に対して、臨時予算を国防省と協力して支援内容に応じて編成するように命令した。




