激化
シャーロット大統領の激しい怒りにより、ヨーロッパ合衆国軍はトルコ侵攻を激化させた。
『大日本帝国等による軍事支援発表以後のヨーロッパ合衆国の攻撃は、陸海空三軍の連動した壮絶なものになった。ヨーロッパ合衆国陸軍の誇る主力戦車ニーズヘッグは激しい攻撃を加えていた。55口径125ミリ超電磁砲が咆哮する度にトルコ陸軍の被害は拡大した。第5世代主力戦車が世界で初めて実戦投入された戦いになったが、その威力は正確には判断出来なかった。トルコ陸軍の主力戦車は第4.5世代戦車と呼ぶべき代物であり、自前の太陽発電衛星を保有していないトルコは第5世代戦車を保有したくても出来なかったのである。
その点がトルコが亜細亜条約機構に加盟していない事の最大の弊害でもあった。亜細亜条約機構加盟国には大日本帝国がIAXAによる宇宙開発の結果、大量の太陽発電衛星を打ち上げていた。それにより宇宙空間からの送電は亜細亜条約機構加盟国にも行われ、軍民問わず膨大な電力需要を満たしていたのである。亜細亜条約機構で自前の太陽発電衛星を保有していたのは、ロシア連邦・中華連邦・インド・アメリカ西岸連邦だけであった。
その結果トルコ陸軍が保有する第4.5世代戦車は55口径125ミリ滑腔砲を装備していた。主砲は大日本帝国陸軍と同じく亜細亜条約機構規格の為に、砲弾自体は互換性があった。だがトルコ陸軍の第4.5世代戦車の搭載する滑腔砲と、ヨーロッパ合衆国陸軍の第5世代戦車ニーズヘッグの搭載する超電磁砲では威力が違い過ぎた。超電磁砲はマッハ30で発射出来るが、滑腔砲は良くてマッハ5であった。もちろん早ければ良いという訳では無いが、超電磁砲の威力の前にはその差は如実に表れていた。
トルコ陸軍の第4.5世代戦車の被害が大きいのはヨーロッパ合衆国陸軍の第5世代戦車ニーズヘッグと違い、電磁装甲を装備していないのも大きかった。そもそも第5世代戦車の必須条件は4つあった。太陽発電衛星からの送電により充電可能な大規模電池、そしてその電力によって搭載可能になった超電磁砲・レーザーガトリングガン・電磁装甲である。これらを装備出来てこそ第5世代戦車を名乗れるのだ。だがトルコは前述したように太陽発電衛星を保有しておらず、亜細亜条約機構に加盟していない為に大日本帝国からの送電を受けられなかった。
その為に電磁装甲を装備出来なかったのである。電磁装甲は主装甲の外部に付け加えられる付加装甲の一種で、敵砲弾の車体命中時に電気や磁気の力でその威力を減衰、あるいは無効化するものである。45式戦車の電磁装甲は通電方式であり、大電流を蓄えたキャパシタからの大電流によって、敵弾を流体化・気化させようというものである。主装甲の外部に2枚の金属板を間をあけて取り付け、これらの間にキャパシタからの数千ボルトの電圧をかけておく。コイル方式と放電衝撃方式とは違い、センサを必要とせず、導電性の敵弾が貫通した瞬間に2枚の金属板の間をショートさせることで回路が閉じられ、数千アンペアの大電流によって敵の弾芯や貫徹体をジュール熱によって溶かし、気化させる、又は突然流れる大電流によって生まれる電磁場によって横方向の力を与え弾芯や貫徹体を分断するというものである。通電方式では、被弾部の金属板に穴が開くが蓄電力が回復できれば付加装甲としての機能の喪失範囲が比較的小さく済み、周辺への被害も最小限で済む為に採用された。
まさに超電磁砲を受け止める為に必須装備と言えるのが電磁装甲であった。トルコ陸軍の第4.5世代戦車は電磁装甲を搭載出来ない為に劣化ウランとチタニウムを混合した複合装甲を装備していたが、ヨーロッパ合衆国陸軍の第5世代戦車ニーズヘッグの超電磁砲を受け止める事は叶わなかったのである。技術格差は如何ともし難いが、トルコ陸軍は地の利を活かし第2防衛線で決死の迎撃戦を行っていた。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争』より一部抜粋
トルコ侵攻のヨーロッパ合衆国陸軍20個師団は大日本帝国以下の軍事支援発表による危機感とシャーロット大統領の怒りにより、トルコ陸軍の第2防衛線への攻撃をこれまで以上に激化させた。ヨーロッパ合衆国陸軍の主力戦車ニーズヘッグは、自走185ミリ超電磁砲アウズンブラ・185ミリ機動砲グリンカムビ・自走多連装ロケット砲ガルムの支援を受けながら前進を続けた。主力戦車ニーズヘッグと共に前進していた歩兵戦闘車グルトップは、第2防衛線に近付くと歩兵部隊を降車させた。
そこからは双方の銃弾砲弾ミサイルが飛び交う壮絶な撃ち合いとなった。ヨーロッパ合衆国陸軍は超電磁砲というトルコ陸軍が装備し得ない兵器を有していたが、第2防衛線で迎撃を行うトルコ陸軍は軍事支援を受けられる事によりトルコ陸軍史上過去に例を見ない規模で迎撃していた。ヨーロッパ合衆国陸軍の超電磁砲により破壊されたり死亡したりするトルコ陸軍であったが、それにも増して反撃を強めた。強固な迎撃にあったヨーロッパ合衆国陸軍は主力戦車ニーズヘッグが電磁装甲を装備しているとはいえ、雨霰と撃ち込まれては撃破される戦車が続出したのである。歩兵部隊にも被害は拡大した為に、侵攻陸軍20個師団の総司令官は一時的な退却を全部隊に命令したのであった。




