激しい怒り
大日本帝国以下亜細亜条約機構と中南米諸国の全面的軍事支援の発表は、ヨーロッパ合衆国のシャーロット大統領を激怒させた。
ある程度の国が行動を起こすとは思っていたが、ここまでの規模になるとは思っていなかった。誰が予想出来ただろうか。ヨーロッパ合衆国と中東アフリカ諸国、中立国カナダ以外の世界全てがトルコの支持と軍事支援を発表したのである。しかも大日本帝国は1兆円規模の軍事支援になり、ロシア連邦・中華連邦・インド・アメリカ西岸連邦も同規模の軍事支援を発表した。それ以外の国々は経済規模に見合った軍事支援であったが、全ての国々を合わせた軍事支援は膨大なものになっていた。
相次ぐ軍事支援の発表はヨーロッパ合衆国にも続々と知らされた。というより各国は大々的に軍事支援を世界中に発表している為に、否応なしに情報が入って来る事になっていた。事態を重く見たシャーロット大統領は大統領官邸にて対策会議を開催した。まずはシャーロット大統領は国防大臣にトルコへの侵攻状況について質問した。尋ねられた国防大臣は戦況について説明を始めた。
トルコに侵攻したヨーロッパ合衆国陸軍は20個師団になり、空軍と海軍の支援により順調に進んでいた。国境線は瞬時に突破出来る事が想定されていたが、それも作戦通りになっていた。トルコは国境線に配備していた部隊は比較的手薄である為に、侵攻自体が成功するのは当然でもあった。ヨーロッパ合衆国としてもそれが分かっていた為に、ルーマニア州のロシア連邦国境線に配備していた20個師団をまずは侵攻させたのである。そして容易に国境線を突破し現在はトルコ陸軍の第2防衛線での攻防が続いていた。
ある意味でトルコは第2防衛線に誘い込んだと、国防大臣は説明した。国境線の防衛線は突破される前提にあり、この第2防衛線こそが重要だったのではないかと語った。国防大臣は空軍と海軍の支援を手厚くして、トルコ軍を圧倒する事で第2防衛線を突破する事。ロシア連邦国境線以外からの各州に配備している陸軍を配置転換して、トルコ侵攻の増援として派遣する準備を行っている事。以上を更に説明した。
それを聞いたシャーロット大統領はトルコ軍の状況についても国防大臣に尋ねた。再び口を開いた国防大臣はトルコ軍も大規模な動員を開始していると答えた。世界でも珍しく徴兵制がある為にトルコ軍は300万人にも達しており、地理的に陸軍が重要視され陸軍は225万人を誇る規模であった。今回の侵攻に国家存亡の危機的状況に陥ったトルコ政府は、陸軍の総動員を行い大規模な反撃を準備していると説明した。空軍は74万人にもなり侮れない規模であるが、海軍は沿岸警備程度の能力しかなく人員も1万人しかいない為に考慮する必要が無いと断言した。
それは間違い無くトルコ海軍のミサイルフリゲートは、ヨーロッパ合衆国海軍の原子力汎用フリゲート001級より圧倒的に小型であった。しかもミサイルフリゲートは4隻しか保有しておらず後はミサイル艇50隻と小型潜水艦2隻だけであったのだ。この規模では沿岸警備海軍としての能力しか無く、外洋海軍であるヨーロッパ合衆国海軍には全くもって太刀打ち出来なかった。事実エーゲ海に展開し陸軍を支援していたヨーロッパ合衆国海軍機動部隊は、原子力汎用フリゲート001級のみを分派してトルコ海軍を全滅させていた。
だがトルコは陸軍と海軍を重視している為に、海軍の全滅は想定の範囲内であった。そもそもが地理的にヨーロッパ合衆国に隣接する事から海軍の整備は半ば諦めていたのである。その為に陸軍と空軍が重視されその成果が、今回のヨーロッパ合衆国からの侵攻に表れていた。国防大臣はこれ以上時間を与えるとトルコの動員完了と、軍事支援により長期化するとの結論を述べたのである。
シャーロット大統領にとっては腹立たしい事この上ない事態であった。トルコなど大したことないと思っていたが、戦況はようやく第2防衛線での攻防戦になったばかりであった。その挙げ句に世界の半分がトルコを軍事支援すると発表し、その物資輸送は既に始まっていた。しかも互いに部隊の増派を行うのは既定路線であり、このままでいけば国防大臣の指摘通り長期化するのは避けられそうになかった。それはシャーロット大統領としてはなんとして避けたかった。そうなると残された手段は唯一つであった。
シャーロット大統領は国防大臣に改めて命令した。ヨーロッパ合衆国軍の総力を挙げてトルコ侵攻を完遂するように言い切ったのである。そして更に付け加えた。最悪の事態にはあらゆる手段を用いてトルコを破壊するのを許可すると断言した。その言葉に国防大臣や他の閣僚達は驚いた。閣僚達はただただそこまでの事態にならないように、切に願うしか無かった。




