アメリカ西岸連邦大統領来日
2003年度予算が成立した2003年3月20日。アメリカ西岸連邦初代大統領が来日した。初代大統領は主演映画が大日本帝国でも大ヒットしておりファンが多かった。その為に東京国際空港に降り立った時にはファンが大量に詰め掛けた。初代大統領は気さくにファンサービスを行い、感謝の言葉を述べた。その後迎賓館に移動し歓迎式典が行われ、大泉総理と初代大統領は終始和やかに歓談した。翌日に初代大統領は皇居に向かい天皇陛下と会談を行った。その後首相官邸に移動した初代大統領は大泉総理との首脳会談を行った。日米首脳会談で大泉総理は初代大統領が就任演説で語った通りに、アメリカ西岸連邦軍の創設に協力を惜しまないと断言した。初代大統領にとっては非常に有り難い言葉であった。アメリカ合衆国の誇る軍需企業は東部に本社があり、西海岸には工場があった。しかし新世紀日米戦争により西海岸の工場は本土空襲により徹底的に破壊され、アメリカ西岸連邦として分離独立すると軍需企業が国内に存在していなかった。東部にある軍需企業本社も本土空襲により徹底的に破壊されており、アメリカ合衆国も軍の再建には絶望感を抱いていた。その為に初代大統領は大日本帝国に協力を依頼したのだ。大泉総理としても軍需企業の物理的な破壊を命令した張本人である為に、協力は当然と考えていた。寧ろ早く軍を創設してもらい、国を安定させてもらいたかった。その後大泉総理と初代大統領は『日米安全保障条約』と呼ばれる軍創設に関する協力条約に調印した。更には『経済連携協定』にも調印。アメリカ西岸連邦の経済再建にも大日本帝国は協力する事になった。その目玉は大日本帝国国有鉄道が誇る新幹線のアメリカ西岸連邦への輸出であった。新幹線は既に亜細亜条約機構加盟国にも輸出されており、車両だけで無く運行方法や管理方法等全て輸出していた。初代大統領はその後帝国議会で『日米の永続的友好関係』と題した演説を行った。
アメリカ西岸連邦初代大統領が日程を終えて帰国すると、大日本帝国は正式に『第5次国防力整備計画』を始動させた。アメリカ合衆国への歴史的大勝利により4軍の志願率は過去最高を更新し、特に3個空母機動部隊を増設する必要がある海軍は凄まじい数の志願者が集まった。国家の根幹を成す国防を担う軍の拡大は、領土領海領空が拡大した大日本帝国にとっては急務であった。それは亜細亜条約機構加盟国全ても同様であり、冷戦崩壊以後にまさかの大軍拡が行われた。大日本帝国にとっては現状では大軍拡を行わなくても、もはや太平洋は聖域とも言える状況になっていた。日本海は既に聖域だがハワイ諸島を筆頭に合衆国領有小離島を割譲させ、太平洋島嶼国を併合しオセアニアまで亜細亜条約機構に加盟した。そしてアメリカ西岸連邦も亜細亜条約機構に加盟。太平洋沿岸で亜細亜条約機構に加盟していないのはメキシコ以南の中南米諸国だけとなった。歴史学者達はこの現状をもって『日本人による太平洋帝国の出現』と表現していた。太平洋だけで無く亜細亜条約機構全体がもはや大日本帝国の指導に従う為に、かつての植民地帝国である大英帝国以上の世界帝国が出現していた。その点は大日本帝国や亜細亜条約機構諸国は否定するだろうが、疑いようの無い事実であった。だが大日本帝国の覇道に従うと決めた亜細亜条約機構諸国にとっては、ある意味で国家安全保障上最良の選択肢とも言えるだろう。
第5次国防力整備計画で軍需企業は受注が増大したが、北海道釧路市の復興事業でも建設業を中心に受注が増大した。更には太平洋島嶼国やアメリカ合衆国の領土割譲により、その拡大した領土も公共事業や建設工事が行われ大日本帝国全土で再び公共事業投資による経済の好循環が生まれた。この大日本帝国の好調に対してヨーロッパ連合は危機感を強めていた。新世紀日米戦争はアメリカ合衆国の覇権を破壊する為に、大日本帝国を支援した。そして目論見通りアメリカ合衆国は事実上崩壊し大日本帝国に無条件降伏する事になった。アメリカ合衆国の崩壊はコンピューター市場を大日本帝国が独占する事になったが、それ以外の自動車・航空機市場はヨーロッパ連合にとっても市場拡大のチャンスであった。大日本帝国アメリカ合衆国本土空襲で物理的な破壊を行った為に、アメリカメーカーはこぞって消滅していた。ヨーロッパ連合にとってもチャンスだが、大日本帝国に出遅れたのは否めなかった。というよりもメーカーの人気では常に大日本帝国が優位であった。そこで危機感を強めたヨーロッパ連合は欧州理事会の緊急会合で、各国のメーカー統合と大日本帝国に優位に立つための宇宙開発を進める事を決定した。全ては再びヨーロッパが世界の中心になる為のものであった。その為に緊急会合の内容は公表される事無く進める事になった。当然であろう。現状で大日本帝国に面と向かって対立する事は出来なかった。だがヨーロッパ連合の努力も虚しく、その試みは早い段階で大日本帝国の知る事になったのである。