安全保障理事会
2048年5月1日。数日前の国連総会に於ける事務総長提案を受けて、安全保障理事会が開催された。常任理事国は大日本帝国・ロシア連邦・ヨーロッパ合衆国・エジプト・ブラジル・サウジアラビアの6ヶ国であり、非常任理事国はアメリカ西岸連邦・中華連邦・インド・シリア・イエメン・オマーン・南アフリカ・リビア・ナイジェリア・アルゼンチン・ボリビア・コスタリカの12カ国であった。常任非常任合わせて18カ国であり、陣営的には中南米が大日本帝国寄りの為に9対9となっていた。特に非常任理事国の選出は地域グループに議席を割り当て、亜細亜条約機構・中東・アフリカ・中南米で各3カ国ずつを選出する事にしていた。大日本帝国とヨーロッパ合衆国の新世紀冷戦下では特に、地域グループへの議席割り当てが厳格に行われ陣営が同数で分かれるように配慮されていた。
安全保障理事会は議長国のアメリカ西岸連邦大使による開催宣言により始まった。安全保障理事会議長国は6カ国の常任理事国は1ヶ月、12カ国の非常任理事国は半月、それぞれの期間の持ち回りで議長を務める。当初は常任非常任で期間に差がある事に非常任理事国やその他の国連加盟国から非難されたが、この期間による分担が妥協の産物である為に結局の所は各国は受け容れるしか無かった。公転周期が約365日で1年が12ヶ月である為に、何処かの国が貧乏くじを引く必要があった。それが残念ながら非常任理事国であったのである。
アメリカ西岸連邦大使はまずは大日本帝国に対して再度、今回の事態に対する説明を求めた。国連総会で大々的な議論になった事であるが、物事は冷静になって振り返るのが大事だと語った。議長から促された事により、大日本帝国大使は説明を始めた。そして国連総会の時と同じく事態について説明を行った。一通り説明を終えると大日本帝国大使は議長に、証人と証拠品を提示しても良いかと尋ねた。アメリカ西岸連邦大使はそれは当然問題無いとして許可を出した。そして許可を出しておきながら、各国大使にも『良いですね』と有無を言わせぬ口調で確認した。
その言葉に各国大使はただただ頷くしかなかった。議長と各国大使の賛同を得た大日本帝国大使は、会議場のドアの前にいた補佐官に許可を出した。補佐官は会議場の外にいた証人と証拠品を入室させた。大日本帝国大使の言う証人はヨーロッパマフィアであり、証拠品は対戦車ミサイルランチャーであった。国連総会から安全保障理事会までの期間に、大日本帝国本土から極秘裏に国連本部ビルに移送していたのである。全てはヨーロッパ合衆国を追求する為に国連総会が終わった後に、叶総理直々の命令で実行された。
大日本帝国大使はまずは証人のヨーロッパマフィアに語らせる事にした。促されたヨーロッパマフィアはどのように麻薬を密輸して密売したのか語りだした。全ての手口を説明すると、次はヨーロッパ合衆国の関与についても語りだした。資金面のみならず物資面でも支援されていたと説明した。その為にただでさえヨーロッパマフィアの資金力は豊富であるが、潤沢な支援により大日本帝国を除く亜細亜条約機構各国では大規模に活動出来たと回想していた。大日本帝国の空港と港の入国審査は厳格に行われており、水際対策は完璧であったとも説明した。麻薬密輸に利用した漁港はさすがに密入国するには目立ち過ぎた為に、その手段は大失敗していた。最初は何名かその方法で密入国しようとしたがヨーロッパ人は目立ち過ぎた。漁業協同組合の人間は神戸組の対立組織ヤクザのシノギである為に、連絡する者はいなかったが出入り業者や近隣住民から即座に通報された。ヨーロッパマフィアは、『島国は入国が厳しいが大日本帝国は飛び抜けていた』と語った。
ヨーロッパマフィアの証言を終えて、大日本帝国大使は物的証拠を提示した。対戦車ミサイルランチャーは国防省によりヨーロッパ合衆国陸軍の正式装備だと確認がとれていた。そして証人のヨーロッパマフィアにも確認し、それがヨーロッパ合衆国直々の提供だと言うのも裏付けされていた。大日本帝国大使はここまで提示した証拠が、ヨーロッパ合衆国の関与を示す何よりの証明であると言い切った。ヨーロッパ合衆国は凄まじい対立に発展した新世紀冷戦に於いて、戦争に発展するのは得策で無いとしてヨーロッパマフィアを利用して内部からの騒乱を狙っていたと指摘した。その為に神戸組の対立組織のヤクザは組長以下全員が逮捕されたが、そのことごとくが大日本帝国司法史上初の『外患誘致罪』により起訴されたと語った。ヨーロッパ合衆国には数々の証拠からもはや言い逃れ出来ないとして、謝罪と賠償を要求すると大日本帝国大使は言い切り説明を終えた。
大日本帝国大使の説明によりヨーロッパ合衆国の関与が明るみになったが、ヨーロッパ合衆国大使は沈黙したままであった。議長のアメリカ西岸連邦大使は、休憩を挟んでヨーロッパ合衆国の反論を聞くと述べて休会を宣言した。




