総本部襲撃
『神戸組総本部に自爆ドローン突入』この衝撃的ニュースは速報で大日本帝国全土に流れた。まさかの事態であった。自爆ドローンが小型であり、総本部が予想外に堅牢で重防御であった為に、犠牲者は出なかった。自爆ドローンの突入は警察と神戸組の面子を丸潰しにした。だがある意味で犯人は誰か分かりやすい犯行でもあった。今この状況で神戸組に攻撃を仕掛けるのは、対立組織かヨーロッパマフィアしかいなかった。警察もその可能性が極めて高いとして捜査を始めた。マレーシア首都クアラルンプールの亜細亜条約機構本部で緊急総会に参加していた叶総理にも、神戸組総本部襲撃の情報は届いた。襲撃を聞いた叶総理は犯人特定に全力を挙げるように命令を出した。
『神戸組総本部襲撃はまさに衝撃的ニュースであった。このような極端な犯行が行われるとは誰も想定していなかったのである。警戒を行っていた警察は何とか自爆ドローンを阻止しようとしたが、全てを阻止する事は出来なかった。とっさの事態とはいえ、警察の失態なのは明らかであろう。だが問題はこの襲撃の犯人であった。麻薬犯罪取り締まりを強化する事を決めて叶総理が亜細亜条約機構緊急総会で加盟国に一致団結した対応を取るように要請したのと、神戸組が緊急幹部会で警察に協力して麻薬犯罪取り締まりを強化する為の対策を話し合っている最中、それをピンポイントで狙ったのが今回の事件であった。警察は即座に犯人特定の為の捜査を開始したが、犯人はある程度は予想出来ていた。神戸組も報復の為に独自の調査を開始し、表と裏の組織が協力して犯人特定に全力を挙げる事になった。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争〜麻薬戦争〜』より一部抜粋
2048年2月7日。総本部襲撃から1週間が経過し、犯人が特定された。犯人はやはりというか予想通りというか、神戸組の対立組織であった。そしてその対立組織はヨーロッパマフィアの支援を受けているのが判明した。否、ヨーロッパマフィアの手足となって神戸組の対立組織が動いていたのである。そしてI3の諜報活動の第1報告が提出され、叶総理は緊急閣議を招集した。
緊急閣議ではI3長官による報告説明が行われた。ヨーロッパマフィアはヨーロッパ合衆国と同じく、ヨーロッパ各国のマフィアが統合して組織された世界最大規模の犯罪組織であった。神戸組が構成員30万人以上で収益が約30兆円以上であるのに対して、ヨーロッパマフィアは構成員200万人以上、収益も73兆円以上という前代未聞の組織になっていた。ヨーロッパ各国のマフィアが統合しただけの事はあり、ヨーロッパ全域の裏社会を牛耳る一大犯罪組織であった。ヨーロッパ以外への進出も進めており南米諸国の麻薬カルテルとの全面戦争状態になっていた。その組織規模と資金力の差から徐々にヨーロッパマフィアが麻薬カルテルを圧倒していたが、麻薬カルテルもヨーロッパマフィアとの戦争により各麻薬カルテルが大同団結して統一して対抗している為に、長期戦になると予想されていた。そしてそのヨーロッパマフィアが大日本帝国への進出を考えており、その尖兵として神戸組の対立組織を使用していた。現状では大日本帝国国内にいるヨーロッパマフィアは数百人以上多くても1000人程度であり、豊富な資金力により様々な支援を行って対立組織を強化している事も判明していた。だが麻薬カルテルとの全面戦争中にいきなり大日本帝国への進出を行うとは、突拍子もない行動である為に何かしら理由があると思われそれは継続調査中だとI3長官は語った。
I3長官の話を聞いた叶総理は麻薬の蔓延はヨーロッパマフィアが原因なのか尋ねた、間違いありませんとI3長官は断言した。ヨーロッパマフィアの主要な資金源は麻薬密売によるものであり、南米諸国への進出による麻薬カルテルとの全面戦争も麻薬が原因であった。そのヨーロッパマフィアが大日本帝国に進出してきたとなると、麻薬密売を行うのは必然でありそれが麻薬蔓延の最大の理由となっていた。亜細亜条約機構加盟国にも当然ながら進出していると予想され、I3としても亜細亜条約機構加盟国の諜報機関に情報を提供するとしていた。
叶総理はその話を聞くと暫く考えた。何故このタイミングでヨーロッパマフィアが大日本帝国と亜細亜条約機構に進出してくるのか。南米諸国の麻薬カルテルとの全面戦争中にそのような余裕は無い筈であった。いくら世界最大規模の犯罪組織で資金力が豊富であっても、麻薬カルテルも資金力では負けておらず、しかも政府に食い込んでいる為に、警察や軍隊もヨーロッパマフィアとの戦争を行っていた。そうなるともはやヨーロッパマフィアという犯罪組織の進出では無く、その黒幕がいると叶総理は判断した。そして断言するように言い切った。
ヨーロッパマフィアこそがヨーロッパ合衆国の尖兵になっている。
それが叶総理の結論であった。




