レンドリース決定
ヨーロッパ合衆国陸軍の侵攻は大日本帝国本土にも当然ながら伝わっていた。2049年8月2日午前8時28分に開始されたヨーロッパ合衆国陸軍の侵攻開始直後から、叶総理は首相官邸地下の危機管理センターで対策会議を開催した。だがその後すぐに撮影した偵察衛星からの映像は、ヨーロッパ合衆国陸軍の侵攻の激しさが克明に映し出されていた。大日本帝国陸軍は何とか侵攻を食い止めていたが、亜細亜条約機構軍各国が人造人間の猛攻に耐えられず後退する為に、包囲殲滅を避ける為に大日本帝国陸軍も後退するしか無かった。あまりの事態に困惑する危機管理センターであったが、現場で指揮を執る大日本帝国陸軍総軍総司令官がホログラムによるリモート参加で行った報告で、ヨーロッパ合衆国陸軍の人造人間が新型である事が報告された。
大日本帝国陸軍は48式二足歩行戦車鋼龍を前面に押し出し、効果的に人造人間を撃破出来ていたが亜細亜条約機構軍各国は当然ながら48式二足歩行戦車鋼龍を保有していなかった。そこで国防大臣は叶総理にすかさず亜細亜条約機構各国への、48式二足歩行戦車鋼龍のレンドリースを提案した。その提案に総司令官は賛同した。総司令官は亜細亜条約機構軍各国の司令官からの報告で、人造人間の装甲が向上し歩兵部隊の銃火器ではほぼ破壊不可能だと語った。さすがに対戦車ミサイルランチャーでなら破壊出来たが、自動小銃や軽機関銃では一切歯が立たなかったのである。これは戦闘に於いては死活問題であった。
機甲部隊の戦車や自走超電磁砲は人造人間が接近するまでは迎撃を行えたが、接近され歩兵部隊との接近戦になると巻き添えや誤射を恐れて攻撃出来なかった。ヨーロッパ合衆国陸軍もそれが分かっている為に、人造人間を全速力で走らせて敵歩兵部隊に近接させる戦法を採ったのである。だが48式二足歩行戦車鋼龍なら後方からの遠隔操縦でしかもレーザー砲やレーザーガトリングガンの発射は対象をロックオンしてから行える為に、巻き添えや誤射は限りなく低かった。その為に大日本帝国陸軍歩兵部隊も自動小銃や軽機関銃が有効打にならないながらも、48式二足歩行戦車鋼龍の攻撃と対戦車ミサイルランチャーによりヨーロッパ合衆国陸軍の侵攻を食い止めていたのだ。
叶総理は戦場での効果的な戦力が48式二足歩行戦車鋼龍であり、亜細亜条約機構軍各国が保有していない為にレンドリースを行う事を即座に決定した。幸い保有数自体は半年間の不思議な状態である事実上の停戦の間に、量産され続けていた為に即物的な支援が可能であった。レンドリース決定に加え、総司令官は新型の『レーザー銃』の開発状況について尋ねた。ヨーロッパ合衆国陸軍の人造人間に対して自動小銃や軽機関銃は効果は無かったが、48式二足歩行戦車鋼龍のレーザー砲やレーザーガトリングガンは効果があったのである。その為に総司令官は歩兵部隊の戦力向上として、レーザー銃の開発状況について質問したのだ。