燃え上がる炎
もう1つ、帝國連合艦隊の方も最近毎日投稿しています。
良ければ、そっちもご覧ください。
2049年8月2日。半年に及ぶ両陣営の睨み合いによる膠着状態は、遂にやぶられようとしていた。
『第三次世界大戦に於けるある意味での停戦状態であった。大日本帝国以下亜細亜条約機構、対ヨーロッパ合衆国大同盟の国々は徴兵制を復活させ訓練を行うのに時間が必要となり、ヨーロッパ合衆国は人造人間の生産を行う事に時間が必要であった。お互いに予備兵力確保の為に時間が必要で、その為にまさかの停戦状態のような事態になったのである。両者の利害が一致した為に第三次世界大戦は不思議な状態になり、ロシア戦線とイラン戦線では一切軍事行動が行われなくなったのである。
もちろんその間も大日本帝国I3により、中東アフリカ地域でのレジスタンス運動とイギリス州での離脱運動は続けられていた。だがそれは大日本帝国の新たな方針により活動は地下に潜る事にした。確かに大日本帝国としてはヨーロッパ合衆国の人造人間生産を妨害する為に行ったのが、レジスタンス運動と離脱運動であった。イギリス州での離脱運動はトラファルガー事件の後に更なる支援を行い拡大する事が決定されたが、その拡大も含めて地下活動にさせる事にしたのであった。大々的に活動するよりも地下活動にさせる事でヨーロッパ合衆国に、組織の実態を掴みくくし対応を困難にさせるのが目的になった。
その方針は見事に的中しヨーロッパ合衆国がこの半年間に生産する事が出来た人造人間は、2380万体であった。戦後に開示された各種統計資料を調べると、大日本帝国がこの方針を行っていなかった場合は各種資源や資金が人造人間生産に流れ、人造人間生産は3000万体を超えていた可能性が高かった。約700万体分の各種リソースがレジスタンス運動と離脱運動の地下活動により浪費されたのであった。これだけでも大日本帝国がI3を利用した成果は出ていたのである。だがヨーロッパ合衆国は人造人間生産だけで無く、大日本帝国等と同じく選抜徴兵制を復活させて250個師団を新たに編成していたのである。
翻って大日本帝国の選抜徴兵制による予備兵力確保の成果をみていく。大日本帝国は今回の選抜徴兵制では18歳〜26歳の男女全員を対象とする事にし予備兵力確保を開始。18歳〜26歳の大日本帝国の人口統計は約2800万人となり、大日本帝国の総人口である約2億人の内で約14%であった。その中で国防省は試算で最低でも400万人、欲を言えば800万人が必要であるとして、大日本帝国人口の4%の徴兵が必要と考えていた。選択徴兵制である為に18歳〜26歳の男女全員を対象とし健康状態や家庭状況、年齢、職業などによって等級に分類するのである。そしてその順序に従って上位の等級から必要な人員を確保し1年間の軍事訓練後、4年間の予備役に服務する制度とする事にした。訓練期間は半年間が過ぎある程度の戦力化の目処がついたとして、大日本帝国はこの期間に1000万人の予備兵力を確保する事に成功した。27歳〜35歳の国民からの志願者が500万人にも達し、18歳〜26歳の国民の選抜徴兵は500万人とされた。この結果として国防省の試算で最低数400万人は言うに及ばず、希望としていた800万人さえも更に上回る1000万人を確保する事が出来た。
亜細亜条約機構各国も選抜徴兵制を実施し、予備兵力を確保。ロシア戦線とイラン戦線は半年振りに激戦になろうとしていた。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争』より一部抜粋