追い討ち
イギリス州での離脱運動弾圧、『トラファルガー事件』は大日本帝国にも伝わっていた。それを受けて叶総理は対策会議を招集した。恐るべき惨劇であった。報道管制が行われていた為にヨーロッパ合衆国のマスコミは、淡々とデモの取り締まりが行われたと報じるばかりだったがSNS上では凄惨な映像が投稿され続けていた。ヨーロッパ合衆国が隠蔽したい不都合な真実が、克明に記録されていたのである。大日本帝国のマスコミは全社がヨーロッパ合衆国イギリス州で起きた弾圧『トラファルガー事件』を報道した。戦争中に勃発した相手国の恐るべき惨状を、SNSに投稿した映像を使用しながら報道し続けた。
しかも戦時中である相手国に直接乗り込む事が出来ないので、SNSを利用して直接やり取りを行いビデオ通話によるリモート出演でイギリス州の離脱運動参加者にインタビューを行う報道機関も表れた。これは実際に現場に居合わせた当事者の生の声であり、その反響は大きかった。大日本帝国政府も叶総理が直々に報道機関各社には、更に大々的に『トラファルガー事件』について報道するように通達された。
ある意味でI3の離脱運動支援が結果を出した事に、叶総理以下閣僚達は満足していた。まさかここまで大胆な弾圧を行うとは予想していなかったが、これでヨーロッパ合衆国はイギリス州に爆弾を抱え込む事になったのである。『トラファルガー事件』はイギリス州の住民に更なる悪感情を抱かせるだけになり、ヨーロッパ合衆国はイギリス州での治安維持に頭を悩ます事が確定した。I3長官は叶総理に今後行う手段は2つあり、どちらを選ぶべきか尋ねた。
1つは今回の『トラファルガー事件』に対する悪感情を利用して、ヨーロッパ合衆国の他の旧王国州に対して離脱運動を拡大させる事。2つ目は何を差し置いてもイギリス州での悪感情は高まっている為に、イギリス州全体で更に離脱運動支援を行い組織を拡大させる事。この2点であった。それを聞いた叶しては迷わずに2つ目の意見を採用した。確かに今回の『トラファルガー事件』の勢いを利用して、他の旧王国州に離脱運動を拡大させるのも良い考えではあったが、ここはやはり組織を確固たるものにする為にイギリス州での離脱運動支援が優先された。
そしてそれこそがヨーロッパ合衆国にとっては、弾圧を強硬したが為に離脱運動が拡大するという追い討ちをかける事になると叶総理は言ったのである。その意見に他の閣僚達も賛成した為に、I3の次なる方針はイギリス州での離脱運動支援による更なる拡大、となった。