地球の反応
『大日本帝国、ヨーロッパ合衆国月面基地を占領。』この報は瞬く間に全世界を駆け巡った。2049年1月24日午後10時28分に行われた降伏文書調印式の内容は、その僅か7分後の午後10時35分には大日本帝国の主要報道機関が報じ、SNS上でも『月占領』がトレンドになった。午後10時45分には国防省報道官による降伏文書調印式の詳細説明を行う記者会見が行われ、大日本帝国がヨーロッパ合衆国月面基地を暫定統治する事になったとも発表され月が丸々大日本帝国領土になったと印象付ける記者会見であった。それはほぼ正解であり大日本帝国がヨーロッパ合衆国に対して、宇宙と月に於いて勝利を収めた瞬間でもあったのである。
このヨーロッパ合衆国月面基地占領という事態に、当事者であるヨーロッパ合衆国は一切の反応を示していなかった。それは驚く程に不気味な沈黙だった。大日本帝国は午後11時30分に行った2回目の国防省報道官による記者会見で、ヨーロッパ合衆国月面基地とのデータリンクによる生中継を行い新世紀冷戦にて秘密のベールに包まれていたヨーロッパ合衆国月面基地を全世界に晒した。現地月面基地にいる海兵両用作戦部隊の兵士がカメラを操作し、海兵両用作戦部隊司令官をヨーロッパ合衆国月面基地総司令が案内するという形をとり、それを生中継で公開したのである。
その手法には非難の声もあったが、全ては勝者の権利であり大多数の報道陣は公開されたヨーロッパ合衆国月面基地内部を食い入るように見ていた。それは大日本帝国国民のみならず亜細亜条約機構加盟国国民や全世界の国民も同じであった。その全てが公開され案内を終えたヨーロッパ合衆国月面基地総司令は、カメラの前に立つとヨーロッパ合衆国政府に見捨てられ援軍派遣が無くなった為に、月面基地にいる人命を優先し大日本帝国に降伏し月面基地を委ねる事を決断したと全世界に向けて語ったのである。
これは大きな衝撃を世界に与えた。ヨーロッパ合衆国は月面基地を見捨てた、と月面基地総司令自らが語ったのである。この衝撃発言は世界を驚かせ、大日本帝国の優位性とヨーロッパ合衆国の劣勢を世界に印象付けた。ここに至りヨーロッパ合衆国も言い訳、弁明の必要性を感じたのか日付が変わった2049年1月25日午前0時に大統領官邸報道官が記者会見を行った。その内容は地球上での戦いをこれ以上月で続けるのは人類の尊厳に反するとして、シャーロット大統領の英断により月を一時的に大日本帝国に委ねる事にした事。最終的には奪還するのは確定であり、それまでの一時的措置に過ぎない事。以上が発表された。
だがそもそもがヨーロッパ合衆国の方から大日本帝国月面基地に侵攻し、自分達が地球上での戦いを月に飛び火させておきながらのこの言い草に世界は呆れると同時に非難を行った。