月読命降下
ヨーロッパ合衆国月面基地近くに降下した月読命は、当初の予想に反して全く攻撃を受けなかった。この事は月読命の操縦士や搭乗する海兵両用作戦部隊の兵士のみならず、もう1隻の月読命による生中継を見ていた地球の首相官邸地下の危機管理センターと、月面タワーの危機管理センターの叶総理達を一様に安心させていた。これで作戦は順調に進むのである。月面に着陸した月読命から続々と部下の兵士達が降りるのを確認した、月面タワーにいる海兵両用作戦部隊司令官は戦闘可能な365人の部下に宇宙港への集合を命令した。作戦の第2段階として月読命による輸送を経て、自分達もヨーロッパ合衆国月面基地を占領する為であった。海兵両用作戦部隊の司令官は陸軍憲兵隊月面基地派遣部隊司令官と握手すると、宇宙港へと向かったのである。
ヨーロッパ合衆国月面基地の前面に降下し展開した海兵両用作戦部隊の兵士達は攻撃態勢に入り、降下した中で最高位である中尉が司令官の代理として降伏勧告を行った。大日本帝国としては民間人に危害を加えるつもりは無い為に、降伏勧告は当然ともいえた。暫く待っているとヨーロッパ合衆国月面基地の正面入り口が開き、白い旗を掲げた人物が2人歩いて来た。警戒しながらも降伏の使者だと判断した中尉は、自ら対応する事にした。相対した3人であったが中尉はヨーロッパ合衆国側の使者に驚く事になった。なんと使者はヨーロッパ合衆国月面基地総司令とその副官であったのである。
責任者直々に降伏の使者として出向いて来たのだ。中尉のみならず他の兵士達も一様に驚きを隠せなかった。だがある意味で責任者自ら出向く事により、齟齬や認識の違いを防ぐ事になるという利点もあった。中尉は驚いたがヨーロッパ合衆国月面基地総司令は、直々に全面降伏する事を伝えた。それは願ってもない申し出であり、中尉としてはその決断に感謝の言葉を述べた。
しかしヨーロッパ合衆国月面基地総司令はシャーロット大統領に見捨てられたと語り、ヨーロッパ合衆国政府への怒りを爆発させていたのである。困惑する中尉であったがそこに大日本帝国月面基地で海兵両用作戦部隊司令官と兵士達を乗せた月読命が、ピストン輸送で戻って来た。もう1隻の月読命共々降下を行い、海兵両用作戦部隊は司令官の指揮下に再び戻った。中尉は司令官である大佐に降伏使者がヨーロッパ合衆国月面基地総司令だと説明し、降伏の手続きが即座に行えると伝えたのであった。
それを聞いた大佐はヨーロッパ合衆国月面基地総司令に丁重に挨拶すると、降伏の手続きを行うべくヨーロッパ合衆国月面基地の正面入り口をくぐったのである。